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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十四章 シャロンの子育て日記
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王女の作ったピザとアイリーンの余計な手助け



 焼き上がったピザを前に歓声を上げるメイドたち。王妃二人もアリル王女とハミル王女が生地を捏ね具材を乗せたピザを前に若干潤んだ瞳を開けメルフェルンが切り分けるのを待ち、王女二人は焼き上がったマヨコーンピザを前にマヨの歌をハモリ、エルフェリーンとランダルは将棋で負けたことなど忘れたかのようにキラキラした瞳を熱々のピザに向ける。


「お熱いのでお気を付け下さい」


 年長者を重んじるサキュバニア帝国式でメルフェルンがエルフェリーンに配り、ビスチェとロザリアに配ると王妃二人の前に置く。その横ではメリリが王女二人とキャロットと白亜やロンダルなどの子供に配り、涎をながすチーランダ。


「熱っ!? でも美味しいよ! クロにお願いして良かったよ~」


「生地がサクサクでむにむにで美味しいわ」


「うむ、マヨコーンはコーンお甘みとマヨの酸味とコクが癖になるのじゃ」


 見た目が若くても年上の三名が表情を溶かし、王妃二人も娘が作ったピザを口に運びあまりの熱さで悶絶するも嬉しさの方が上回っているのか、苦悶の表情から笑みへと変わり二人の王女に向け微笑む二人。


「こちらに冷たい水をご用意しております」


 メイドの一人が素早く動きお冷を勧めヒリヒリする口内を冷やす王妃二人。王女二人はふぅふぅと息を掛け口にして自分たちが作ったピザが美味しくできた事を喜び、キャロットやロンダルたちもハフハフとしながら口に入れ将棋の負けを忘れさせてくれる味を楽しむ。


「唐揚げも多めに揚げているから食べて下さいね」


 カラアゲの山の皿をテーブルに置いたクロが給仕をするメイドたちに声を掛け専属メイドたちが歓声を上げ、メリリとメルフェルンも切り分けたピザを配り終わると席に付きピザを口に入れる。他にもポテトサラダなどの料理が並び、酒類の瓶も専属メイドが開け王妃たちのグラスに注ぎ入れる。


「ピザが気になって乾杯言い忘れたけど、カンパ~イ」


 エルフェリーンがウイスキーを掲げ乾杯の音頭を取ると皆でグラスを掲げ、ピザを口にしていた王妃たちは慌てながら白ワインのグラスを掲げ、メイドたちも同じようにピザを口に入れモゴモゴしながらグラスを掲げる。


「マヨコーンは最強です!」


「ええ、そうね。アリルとハミルが作ったピザは美味しいわ」


「前にお城で頂いたピザも美味しかったけど、今日のは特別ね」


 王妃二人に褒められアリル王女は得意げな表情を浮かべ、ハミル王女はクロが用意したシュワシュワを飲みピザとのマリアージュを楽しみ、メイドたちも白ワインを飲み王女二人の作ったピザを改めて口にして感動しているのか薄っすらと涙を流すメイド長。


「手料理まで口にできる日が来るとは……」


「あんなに小さかったのに……ぐす……健康になられ、大きく育ち……」


「今日という日を忘れません……」


 涙しながら食べるメイドたちに若干引きながらも料理を運ぶクロ。大皿には大量の焼き鳥が並べられ一斉に手を出す乙女たち。

 シャロンは歓声で起きたフィロフィロを撫でながらキッチンカウンターにひとり腰掛けており、宴会でフィロフィロが粗相をしないか心配しながら帰って来たクロに声を掛ける。


「シャロンはフィロフィロがいるから混ざらないのか?」


「はい、皆さんの前でフィロフィロが粗相をしてしまうかもと思うと……」


「師匠やロザリアさんは笑って許してくれそうだが王妃さま方がいるからな……」


「不敬罪とは言わないでしょうが折角の楽しい雰囲気を壊したくないですから」


 そう口にしながら優しく撫で目を細めるフィロフィロ。


「それならこっちで料理を出すから食べろよな」


「はい、ありがとうございます」


「ピィ~」


 シャロンがお礼を口にすると共にフィロフィロも鳴き声を上げ、クロは急いでアイテムボックスに入れたフィロフィロ用の軟らかく煮た猪の肉を取り出し小皿に入れ、火を入れて保管していた焼き鳥やピザにポテトサラダを小分けしワンプレーとにすると、シャロンの元に戻りキッチンカウンターに料理を置くとフィロフィロが目を光らせる。


「ピィピィピィ」


 お腹が空いているのか何度も鳴き声を上げシャロンはクロが用意したピンセットを使い柔らかく煮て繊維状になったイノシシ肉の赤身を嘴へと運び与える。


「良い食べっぷりだな。将来はフェンフェンよりも大きく育ちそうだ」


「そうですね。このまま健康に育ってほしいです」


 優しい微笑みを浮かべるシャロンの表情は聖母のようで、クロは良い父親になるだろうと思いながらアイテムボックスからシャロン用のペットボトルに入れた烏龍茶とフィロフィロ用の水を木製の小皿に注ぎ次の料理に取り掛かる。


「モヤシを煮て、先日作ったチャーシューを細長く切って、軽く塩コショウして、ゴマを振りかけ……よし、簡単なおつまみの完成。って、近いなアイリーン」


 クロがキッチンで料理を仕上げていると横から顔を出してニヤニヤと口角を上げるアイリーン。


「暇しているのなら持って行ってくれ」


「任せて下さい! 腐腐腐……二人だけで料理しながら子供の世話とか夫婦で経営している小料理屋さんですね~」


 言いたい事だけ言ったアイリーンはモヤシとチャーシューのナムルを手に取るとリビングへと去る。それを耳にしたクロは「何を言っているんだか」と相手にしなかったが、キッチンカウンターでそれを耳に入れたシャロンは頬を染めピンセットが止まり「ピィピィ」と鳴き声を上げて口を大きく開くフィロフィロ。


「ほらほら、シャロンも確りしろよ。フィロフィロが次を欲しがっているからな」


「えっ、あっ、はい、フィロフィロあ~ん」


 クロの言葉にフリーズしていた頭が回転し始めピンセットを使いフィロフィロに食事を与え、クロも料理を再開し簡単につまめるおつまみを用意する。

 その様子を席に付きニマニマしながら見つめるアイリーン。メルフェルンは背にしている事もあり気が付いていないが、アイリーンの表情に違和感を覚え振り向きフィロフィロに食事を与える姿を目にし微笑みを浮かべながらも、主人がフィロフィロの相手をしているのに酒を飲み食事をしている事に罪悪感を覚え、食べかけのピザを口に押し込み立ち上がる。


「あら、メルフェルンが動くことはないわよ。私が行くわ」


 立ち上がったメルフェルンに待ったの声を掛けたのはキュアーゼ。声を掛けながら立ち上がるとシャロンの元へと向かい、アイリーンは眉間に深い皺を作る。


 私が良い感じの空気を作ったのに、この二人に余計な事はさせませんよ~


 アイリーンが立ち上がると二人へ糸を飛ばし、突然背中を引っ張られる力を感じた二人は振り向きリビングのテーブルを飛び越えて目の前に現れたアイリーンに驚く。


「えっ!? アイリーンさま!!」


「糸で引いて何がしたいのかしら?」


「ふふふ、これは私のプライドにかけて二人の邪魔はさせません!」


 そう言い放つ横をすり抜けクロが料理を運び一瞬呆気に取られる三名。更にフィロフィロがブルブルと震えたことでシャロンは急ぎ立ち上がりリビングを離れ外へと向かう。


「えっと……嘘です。冗談です。気のせいです」


 アイリーンの言葉に二人はお酒の飲み過ぎだろうとクロに水を頼むメルフェルン。キュアーゼは優しくアイリーンに近寄り肩に手をまわしてソファーへと連行し座らせると、クロが持って来た水を受け取りアイリーンに渡すのであった。







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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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