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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十四章 シャロンの子育て日記
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ハイエルフを叱れる男とルール



「そろそろ地上へ戻ろうか」


 エルフェリーンの言葉に王妃二人はコクコクと頭を縦に振り神々との食事会の終わりにほっと胸を撫で下ろす。

 ビスチェとロザリアも少量料理を口にしただけでいつもの様な居心地の良さを感じていないようで飲み過ぎることはなく立ち上がり、ハミルとアリルは愛の女神フウリンに抱きつかれていたが、その手が緩みロザリアに向け走り出し抱き着くと愛の女神フウリンは去った温もりに手を伸ばしそうになるが、ぐっと堪えて手を握り締め口を開く。


「今度はぁフィロフィロちゃんもぉ一緒に連れて来て下さいねぇ」


「うむ、シャロンに伝えるのじゃ」


「絶対ですよぉ。グリフォンの赤ちゃんも撫でてみたいですぅ」


 散々撫でられていたハミル王女とアリル王女はフィロフィロという名に首を傾げるがグリフォンの赤ちゃんと耳にするとシャロンがグリフォンに乗る話を思い出し子供が生まれたのだと理解し、これからフィロフィロが見られる事にキャッキャと喜びの声を上げる。


「あら、今日はすぐに帰るのね。やっぱりクロの料理がじゃないと食が進まないのかしら?」


「あははは、それもあるかもしれないけどクロと約束しているからね~夕食前には帰らないとね~それにお酒を飲み過ぎて転移するとクロは怒るんだ。酔って別の場所に転移したら危険だって何度も言われたよ。僕はこれでも凄腕だってクロも知っているのに怒るんだぜ」


 そう口にしながらも笑みを浮かべるエルフェリーン。世界屈指の実力者も心配され怒られる事には慣れておらず、罪悪感が沸き起こりながらも怒られている所を思い出しながら笑みを浮かべてしまう。


「エルフェリーンさまを叱ることができる存在は世界広しといえど神々とクロさまだけですわね」


 第一王妃リゼザベールの言葉にビスチェとロザリアが頷き、女神ベステルは笑い声を上げる。


「あはははは、それは言えているかもね。クロはハイエルフだろうが魔王だろうが悪いことをしたらネチネチと叱りそうだもの。私にだって平気で不敬な態度を取るわ。だから面白いのかもしれないわね」


「それは母さんがクロにいっぱい貢がせているからじゃ……」


 エルフェリーンの言葉に思い当たる事があるのか顎に手を当て「それはあるかも……」と呟き、クロの魔力創造した寿司欲しさに神託を使った神たちも多少なり反省しているのか居心地の悪さを感じ話題が分かる事を願いながら成り行きを見守る。


「この前は私も梅酒をお願いしたから言い訳はできないな……」


「クロのスキルは便利ですからねぇ」


「私もクロさまに料理を教わりレパートリーが増えました。感謝しかありません」


 叡智の女神ウィキールと愛の女神フウリンに料理の女神ソルティーラが口を開き感謝する言葉にクロという男は女神たちにも影響力があるのかと驚愕する王妃二名。ハミル王女も驚きながらもマヨの力は偉大だなと勘違いし、アリル王女はクロ=美味しいなので笑みを浮かべながらグリフォンの赤ちゃんにも美味しい料理を作っているのだろうと想像して笑みを浮かべる。


「帰る前に薬師ギルドに薬を届けないとダメよ。それと錬金ギルドにもまだ伝染病の薬を届けてないでしょ」


「そういえばそうだね。王宮へ先に行ったから忘れてたよ~」


 笑って誤魔化すエルフェリーンに顔を青くする王妃二人。王都の門の入り口でエルフェリーンたちを王城へ招待した事もありそれが原因で伝染病が広まれば王家の責任になるのは間違いなく、革命でも起きれば自身たちの命はおろか娘たちの命にも関わる事である。


「我が娘ながら忘れっぽいのは誰に似たのかしら」


 そう言いながら手を払う仕草をする女神ベステル。


「僕は母さんに似てると思うけどなぁ~」


「ふふ、それはどういう意味かしら~まあいいわ。それよりも私が届けたから早く帰ってクロを安心させなさい」


「母さんが届けたの?」


 そう口にしてアイテムボックスを確認するエルフェリーン。女神ベステルがいうように入れた特効薬やポーション各種が消えており神の力を使い転移させたのだろうと結論付け笑みを浮かべる。


「ありがと! さっさと帰ってクロの美味しい料理を食べるとするよ~」


「そうするといいわ。それに今日のお礼として私の分だけでも奉納するように伝えなさい。熱々のピザは私もビール片手に食べたいわ!」


 そんな親子のやり取りに笑みを浮かべる他の神々。堕天使騒動の後からあまり元気がなかった事に気が付いていてもそれに触れることができる神は少なく、愛の女神フウリンと叡智の女神ウィキールは特に気にしており少しでも心が晴れればと常々思っていたのである。


「うむ、良き親子関係なのじゃ」


「………………うん」


 父親との関係が上手くいってないビスチェも小さく声に出して頷き、ランクスから送られた精霊花を脳内に浮かべるのであった。






 雨の降る中やってきたチーロンシャンがマシマシのラーメンを食べ終え満足感を感じていると、リビングの隅でアイリーンとメリリが一喜一憂している姿が目に入りチーランダが声を掛ける。


「ねえねえ、何をしているの?」


「これは将棋という対戦ゲームですね。この王という駒を取った方が勝ちです。駒の動かし方が決まっていて戦略のあるゲームですよ。これは初心者向けなので、駒に赤い点が入っているので動き方が分かりやすくて楽し、あっ!?」


「うふふ、王手です」


 チーランダに説明しているとメリリからの王手を受け腕組みをして回避策を練るアイリーン。チーランダはアイリーンの説明を聞き駒の動かし方を見ながら王手という意味を理解する。


「この駒が王で、こっちの駒が隣接しているから何とかしないと負けちゃうのね!」


「うふふ、そうですね~今張ったのは銀と呼ばれる駒で隣と真後ろには進めませんが、銀の後ろには飛車と呼ばれる縦横どこまでも進める駒があるので王で取る事はできません」


「そっか、後ろでサポートする駒があるから銀を置いて王手したのね。これってロンダルが後ろから弓でサポートして私が魔物に特攻するのに似ている! この銀の攻撃に後ろがひとマス空いているけど王が下がっても」


「追撃して詰みとなり、私の勝利ですねぇ」


「だから銀を取るしか手はない……神の一手さえ使えれば……」


「神の一手?」


「最初の一手で相手に負けましたと言わせる奥義です。どんなに先読みをされても勝利を得る事ができる最強の一手ですね~ふぅ……参りました」


 自身の勝ち筋が見えず降参するアイリーン。メリリは満足そうに笑みを浮かべ両者で頭を下げて対戦を終わらせる。すると、ロンダルとリンシャンもいつの間にかチーランダの後ろで観戦しており目を輝かせる。


「私やりたい!」


「僕も!」


「なら、私とチーちゃんで、メリリさんとロンダルくんで組んでルールを教えながらやりましょうか」


「やった!」


「宜しくお願いします」


 喜ぶ二人にリンシャンも笑みを浮かべ窓際近くに椅子を用意すると対局が始まり、壁際には七味たちが集まりその対局を凝視する。


「うふふ、歩は一歩前進できるだけですが、上まで辿り着くと裏返ってと金へと変わって強くなるので要注意です」


「歩はなぜが同じ列に二つ配置すると負けになるので、そこも注意ですよ。恐らくですが嫉妬深いのだと思いますね~」


「うふふ、飛車も裏返ると斜めに移動ができますよ」


「角も縦横に動けるようになりますね~斜め上を行く行動に注意が必要です。もっと注意が必要なのはこの桂馬と呼ばれる駒で進み方に癖があります。相手の駒を飛び越える能力もあるので戦場で上手く使えば恐ろしい駒になりますね~」


 駒を動かすたびに説明する二人の話を聞きながらリンシャンは将棋という遊びは軍事目的の育成ではないかと推測する。自身が王となり騎士たちに命令を出しながら相手の王の首を取るゲーム性にひとり驚愕していると、玄関が開き大きな声で「帰ったぜ~」と叫ぶエルフェリーンが現れ、急ぎ立ち上がり深く頭を下げるのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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