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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十四章 シャロンの子育て日記
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王都では



 王妃二人は普段着ているドレスや装飾品を外し、商家や男爵家の娘が着ている服へとランクを落とし着替え、ハミルとアリルも同じようなワンピース姿になり笑顔を浮かべる。


「うむ、これなら王家の者と思う者はおらんな。二人とも質素な服でも十分に美しいぞ!」


 自身の嫁を褒める国王であるルーデシス。普段と違う服を着てクルクルとまわり鼻歌を歌うハミルと鼻歌に合わせてマヨマヨリズムを取るアリル。そのまわりを光の粒子が漂い音の精霊が楽し気に踊っているのだろう。


「あははは、やっぱり二人といると楽しいね~音の精霊が一緒になってまわっているよ~」


 精霊が見えるエルフェリーンはマヨマヨ歌う二人に声を掛けそれを聞いたアリルはキャッキャと喜び、両手を上げて歌うハミルの手のまわりはLEDライトほどの光が無数に飛びメイドや近衛騎士たちからは驚きの声が漏れる。


「音の精霊とも自然契約したのは驚きだけど本当にマヨの歌が好きなのね。自ら光ってアピールするぐらいだもの」


「ハミルさまとアリルさまが時間を見つけては中庭で歌い光に包まれておりましたが、これほどまでに強い光が発現したのは初めて見ます……」


 アリル王女の専属メイドであるアルベルタは目を丸めながらビスチェに話し掛ける。


「私も精霊と契約しているけど本当に喜んでいるわ。私には良い歌に聞こえないけど……」


「あははは、僕は楽しいぜ~マ~ヨマヨマヨ~」


 エルフェリーンもハミルと一緒に歌い出し笑顔を浮かべ、着替え終わった王妃二人は国王に別れを告げ終わったが出発するタイミングを逃しやや困惑気味である。


「精霊に好かれるのも才能なのじゃ。精霊の機嫌を取り仲良くしておくことも大事じゃし、何よりも二人の王女が楽しそうで良いじゃろう?」


 ロザリアの言葉に王妃二人も娘たちが楽しそうに歌う姿に微笑みを浮かべる。そんな中メイドの一人が騎士からの報告を受け馬車の準備ができた事を伝えるが少し遅くなる可能性もあると御者に伝えるよう言葉を返し騎士が部屋を後にし、王妃に報告へ向かう。


「うむ、ハミルとアリルは歌が上手だな。エルフェリーンさまの歌声まで聞けて今日は良き日です」


 ルーデシスが素直に感想を述べると王女二人は喜びエルフェリーンは頬を軽く赤く染めながら後頭部を掻き「そろそろ教会へ行こうか」と口に出して恥ずかしさから逃げるように足を進め、王妃たちも揃って部屋を出て馬車へと向かう。


 用意されていた馬車には装飾などはなく御者も御者らしい変装をしているが近衛兵でもエリート中のエリートが任務を任され教会までの送迎をし、街中には多くの兵士が警戒をしながら潜伏し普段とは違う様子に気が付く者もいるだろうがそれは極少数だろう。


「こうして出掛けるのはいつ振りでしょうか」


「娘たちと出掛けることができる日が来るのは嬉しいですわ」


 王妃二人の話を耳にし王族とは大変だなと思うビスチェ。


「ミミルもお出かけできたら良かったです……」


 王妃二人の会話に残念そうな表情を浮かべるアリル。


「赤ちゃんのミミルがもう少し大きくなったら一緒にお出かけしましょうね」


 生みの親であるカミュール王妃の言葉に顔を上げ微笑むアリル。そんな会話をしているうちに教会へと辿り着いた馬車は停止し、エルフェリーンが馬車から降りるとそれに気が付いた子供たちが目を輝かせ口を開く。


「クロだ!」


「クロが来たよ!」


「クロ~飴ちょうだい!!」


 ビスチェが降りやってきた子供たちに「今日はクロはいないわよ」と口にすると「えええええ~」とあからさまに残念がる子供たち。


「クロは色々あってお留守番しているからね~でも、飴はクロから預かって来たからみんなで分けて食べてくれよ~仲良く食べないとクロに報告して飴を持って来なくなるぜ~」


 エルフェリーンがアイテムボックスから飴の袋を取り出すと歓声が上がりリーダーだろう年長者の子供に渡すと深く頭を下げお礼を口にする。


「エルフェリーンさま、お越し下さり感謝いたします」


「毎年のことだし気にしなくてもいいよ~ああ、これはクロからの寄付と子供たちへのお菓子だぜ~ここに置くけど大丈夫かな?」


 アイテムボックスから金貨を入れた袋をシスターに手渡し、段ボール箱を数個積み上げるエルフェリーン。中には小分けされたチョコ菓子やダンジョン産の調味料が入っており使い方を書いたメモも入れてある。


「まぁ、寄付に加えてこんなにもありがとうございます」


「全部クロからだからね~お礼はクロにいってくれよ~」


「そうよ。クロが持って行けって渡したのよ。子供たちもクロが今度来た時にお礼を言いなさい」


 エルフェリーンは笑顔で対応し、ビスチェは腰に手を当てドヤ顔を決め、その後ろでロザリアは呆れながらも視線を教会の二階へ向ける。二階の窓際には聖女と教皇がこちらに向け手を振っており、手を振り返すか迷っているとハミルとアリルの二人は大きく手を振りロザリアも手を振りエルフェリーンの後を追い教会の中へと向かう。


 王妃たちも後に続き階段を上りいつもの様に貴族用の祭壇のある部屋へと踏み入れ聖女と教皇が深く頭を下げ浮かび上がる魔法陣。挨拶を交わし躊躇なく足を踏み入れ姿が消えたことに驚く王妃たち。その背を押すハミルとアリルに王妃たちの姿も消え、メイド数名と聖女と教皇も中へと入り、残された近衛兵は事前に聞かされていたのか驚くことはなかったがその場に残り警備を続ける。


「なんでクロを連れてこないのかしら……」


 転移したエルフェリーンたちが耳にした第一声に顔を青くする王妃たち。エルフェリーンはケロっとした顔で「クロはフェンフェンの面倒を手伝ったりして忙しいからね~」と口にすると更に顔色を青くする王妃たち。相手が女神ベステルだと本能で気が付いたのだろう。それに加え、転移した先は大きなホールで他の神たちが扇状に並び黄金の椅子に座る女神ベステル。後光も確りとやる気を出している。


「やはりこれはやり過ぎではないか?」


「そうですぅ~これでは神々が小姑いびりしているみたいですぅ~」


「私はアイリーンに白薔薇の庭園の経過報告さえ聞ければよいのですが……」


「それもそうね。クロの料理がなくても宴会は開けるわね!」


 神々からの言葉に女神ベステルは両手を払う仕草をすると大きなテーブルが現れ、以前クロが用意した料理や酒に菓子類が現れ走り出すハミルとアリル。王妃たちはあまりのことに口をあんぐりと開け固まり、エルフェリーンとビスチェにロザリアはウイスキーと白ワインにブランデーを手に取ると近くにあるグラスに注ぎ入れ、神々もお目当ての酒を取ると女神ベステルへ視線を向ける。


「クロがいなくても私なら再現可能なのよね~感謝して飲み食いして明日からの仕事に頑張りなさい!」


 会社の飲み会のような事を口にして缶ビールを開け口に運ぶ女神ベステル。他の神々は頭を下げてからグラスを口に付け、エルフェリーンたちも同じように口にし、呆ける王妃二人やメイドたち。正気を保っているアリルの専属メイドのアルベルタは王妃たちが好んでいる酒を用意し手に持たせるのであった。







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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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