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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十四章 シャロンの子育て日記
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フルーツサンド



 昼食は軽めにサンドイッチを作りそれを両手に持ち口に運ぶキャロット。白亜も尻尾を振りながら口に運び気に入ったのか「キュウキュウ~」と喜びの鳴き声を上げる。


「たっぷりと葉野菜を入れたサンドイッチは美味しいですね」


「シャキシャキとした歯応えが心地よいのじゃ」


「うふふ、こちらの果実を入れたサンドイッチも、もぐもぐ……おいひぃですぅ」


 シャロンとロザリアにメリリも自然とその味に笑みを浮かべる。ただ不満な者もおりクロへジト目を向けるメルフェルン。


「………………角煮」


 小さく呟いたメルフェルンの言葉にクロはビクリと体を揺らす。


「角煮は柔らかくするのに時間が掛かるから夕食にはお出ししますので……ああ、それにしても師匠とビスチェはまだ錬金室に籠って、アイリーンやルビーにキュアーゼさんも来ないな……届けるか……」


 メルフェルンからの圧力に話題を変えようとリビングにやって来ない面々を口にする。普段ならアイリーンだけは昼食に現れちゃんと食卓を囲むのだがその姿もなく、食べかけのサンドイッチを口に押し込み立ち上がりエルフェリーンたち用に分けた皿を持ち移動を開始する。


 それを見届けたメルフェルンはフルーツサンドを口に入れだらしない顔を浮かべ、満足気に紅茶でその甘みを流すのであった。






 クロが渡り廊下を進むとコンコンと何かを叩く音が聞こえ鍛冶場にルビーがいるのだろうと足を向け扉の前でノックをする。すると鍛冶場から出てきたのはアイリーンでありにこやかな笑みを浮かべる。


「おっ! 今日のお昼はサンドイッチですね~わぁ~フルーツサンドもある!!」


 クロが手にしているサンドイッチの乗った皿を覗き込むように見たアイリーンは素早く奪い取ると中へと消え、クロはあっという間の盗まれた両手の皿に、片方は師匠たちに持って行くサンドイッチだったのにと思いながら返還を希望し、ドアを開けようとするが鍵が掛かっている事に気が付く。


「おお~い、片方は師匠たちのなんだが」


「確かに量が多いと思いました~今開けるので少し離れて下さいね~」


 鍛冶場のドアは引き戸であり部屋側に開くのだが離れろと言われ違和感を覚えるクロ。


「ああ、下がったぞ」


 それでも何かしら理由があると思い数歩下がるとアイリーンの手だけがニュっとドアから現れサンドイッチが乗る皿を手にするとドアが閉まり鍵を掛ける音が耳に入る。


「お茶とかもあるから部屋の外に置いてくな~」


 一瞬見えた鍛冶場の中にはルビーとキュアーゼの姿があり何かを隠すように両手を広げていた事に、女性ならではの何かがあるかもしれないとペットボトル入りのお茶を置き立ち去るクロ。その足音を糸で確認していたアイリーンは素早くドアを開けお茶を回収する。


「ふぅ~クロ先輩はもう立ち去ったようですね~」


 汗を拭う仕草をしながら回収したお茶を配るアイリーンに、キュアーゼとルビーはお礼を言いながらそれを受け取る。


「ありがと、今のアイリーンの態度を不自然だと思わないのかしら?」


「ありがとうございます。私とキュアーゼさんも隠すような態度を取ってしまいましたが……」


 キュアーゼは頭を傾け、ルビーは隠し事をして小さな罪悪感が浮かび、そんな二人を余所にラップを取りフルーツサンドを口に入れるアイリーン。


〈イチゴたっぷりクリームたっぷりで最高ですね~〉


「ちょっ!? なに先に食べているのよ!」


「私にも下さい!!」


 アイリーン蕩けた表情にキュアーゼとルビーもフルーツサンドを口に入れ酸味と甘みのハーモニーを体感して表情を緩める。


「美味しいですね~そうそう、クロ先輩は何やら察して問い詰めに来なかったんですよ~あむあむ、うまうま、ルビーさんが気にするような事はないと思いますよ~」


「そうかしら? 私みたいな妖艶な美人が隠し事をしていたら気になるはずよ?」


「自分で妖艶な美人といえるのは凄いですし、事実妖艶な美人なのが凄いです……」


 キュアーゼの胸を羨ましそうに見つめるルビー。アイリーンはうんうんと共感しながら頷き葉野菜たっぷりのサンドイッチを食べ終えて口を開く。


「妖艶な美人は置いておくとしてもクロ先輩は気遣いの人ですからね~隠しているのなら問い詰めるような事はしないですよ~定期的に開催している乙女の会も気が付いていても口にしませんから」


「なるほど、確かに探られた事はないです!」


「乙女の会?」


 ペットボトルのお茶を開けながら疑問を口にするキュアーゼ。ルビーは参加したことあるのか口を開く。


「乙女の会はここのいる皆さんで夜中に集まってお菓子を食べたりお酒を飲んだりして静かに騒ぐ会です! 簡単か恋バナや私生活で気が付いた事などを放したりもしますね。キュアーゼさんが来てからは開催していませんが、今夜にもやりますか?」


 目を輝かせて話すルビーに、キュアーゼは静かに騒ぐという単語が引っ掛かっていたがそれとは別に首を横に振る。


「それはダメよ! 今夜から明日にかけてフィロフィロが卵から孵るかもしれないわ」


「フィロフィロ? ああ、グリフォンの卵ですね!」


「さっきトイレに行った時にシャロンから聞いたのよ。可愛い名前を付けたわね。それと今夜から明日の夜にかけて卵から孵ると女神さまからご神託があったとも言っていたわ。シャロンは女神さまからも愛されているのよ!」


 立ち上がり拳を振り上げ自信満々に叫ぶキュアーゼ。その姿にアイリーンは、クロ先輩は神さまにたかられているなぁ~と心の中で漏らし、ルビーもそれなら流行り病の特効薬を王都へ届けた後に開催すべきですね。と頭の中で乙女の会の開催日を決める。


「その為にはこのベッドを早く仕上げないとね!」


 まだ部品を切り出し数ヵ所組み合わせただけのフィロフィロ用のベッドを指差すキュアーゼ。二人は深く頷きサンドイッチを口に運びアイリーンは糸を使い木材から切り出し、ルビーは丁寧にヤスリを掛け組み合わせ、キュアーゼは装飾を紙に書き込む。三名が力を合わせシャロンにベッドを送るべく内緒で作業に取り掛かるのであった。






「クロ~美味しいよ~ケーキみたいで美味しいよ~」


「フルーツサンドは最高だわ! レタスを多く入れたサンドイッチもチーズの風味にベーコンを入れて美味しいけどフルーツサンドは無敵ね!」


 錬金室にやって来たクロはエルフェリーンとビスチェにサンドイッチを振舞い大きな口で齧り付く二人のリアクションに笑みを浮かべる。


「甘いだけじゃなく酸味があるイチゴが美味しいぜ~」


「この緑の果実ツブツブも美味しいわ。黒いのは種かしら?」


「キウイだな。黒い部分は種で独特の食感があるよな。キウイは酸味が強い物を使うとクリームの甘さとよく合って美味しいよな」


 フルーツサンドの中身の種類は豊富でイチゴやキウイといった定番のものから、ミカンを丸々使ったものや断面を鮮やかに見せる為に果物で花の形を作りバエるものが多い。本日クロが作ったものはイチゴを丸々入れ断面を意識し赤と白が美しい物と、キウイの断面が美しく出たものを用意し、レタスとベーコンにチーズを挟んだシンプルなサンドイッチもあり甘さに飽きたら塩味が強い物を食べ飽きずに食べられるだろう。

 実はタマゴサンドも用意していたがシャロンがグリフォンの卵を温めている事もあり、作ってからそれに気が付きアイテムボックスに眠っている。


「やっぱり甘い物の方が食いつきがいいな……」


 そんな呟きを長い耳で聞き取ったビスチェは「タマゴサンドも好きよ」と口にしながらウインクし、出すか迷うクロなのであった。





 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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