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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十三章 お騒がせハイエルフ
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帰宅は転移魔法で



「いや~美味かったな」


「ああ、こんなにも蟹という魔物が美味いとは思わなかった。今度は聖騎士たちと陸蟹のいる場所へ遠征訓練をさせるのもいいかもしれない。ふぅ……それに教会内の方が落ち着く……」


 聖騎士長であるサライと副長のレーベスが天界から戻りカニ料理の感想を口にする。ドズールと近衛兵たちは食べ過ぎたのか苦しそうな表情を浮かべているが料理と酒には満足だったらしく教会内の椅子に座りシスターが用意したお茶を口にしながら食休みをしており、その横には大量のウイスキーが並べられている。


「もう帰っちゃいましたね……」


「流行り病のお薬を届けに来る予定だとお伺いしております。二週間後にはお会いできると思います」


 アリル王女も食べ過ぎからか馬車に乗り帰宅するのを断り、専属メイドと一緒にドズール王近くの椅子に座り教会内を眺めている。天井を高く取られた教会内には女神の像や宗教画にステンドグラスなどが飾られ、それらを見て胃が落ち着くのを待っている。


「アイリーンさまにお願いした方が宜しかったのでは?」


「大丈夫です。ドズール王さま方も苦しそうですし、私だけ帰っては申し訳が立たないのです」


 まだ幼いアリル王女の言葉が耳に入ったドズールは苦笑いを浮かべながらエクスヒールによる胃の中の強制消化を願うのだったと後悔し、近衛兵たちも同じように後悔しながらパンパンになった腹を優しく摩るのであった。






 クロたちがエルフェリーンの転移魔法で家に戻ると厩舎から真っ先に飛んで現れたキュアーゼがシャロンに飛び付くが素早くかわされ、後ろにいたアイリーンを抱き締める。


「これはこれでアリかもしれません………………」


「げっ!? 蜘蛛女! いつの間に入れ替わったのっ!」


 大きな胸に包まれていたアイリーンがいろいろと目覚めそうになるが慌てて引きはがしたキュアーゼはシャロンをキョロキョロと探し、クロの後に隠れている姿を発見すると目を輝かせる。


「お帰りシャロン!」


 両手を上げて抱き着く気満々で歩み寄りクロは軽く会釈をすると屋敷に向かう。その手には師であるエルフェリーンを抱えており「食べ過ぎて歩けないよ~」と甘えられ仕方なしにお姫様抱っこをしているのだ。

 同じように食べ過ぎたシュミーズもゼギンにお姫様抱っこされ屋敷に向かい、遅れてやって来たメリリはその光景に頬を染めながらも羨ましそうな視線を送る。


「メリリさん、只今戻りました~」


 呆けていたアイリーンだったがメリリを視界に入れると片手を上げて声を掛け、七味たちも同じようにポーズで帰還を喜び小雪はダッシュでメリリのまわりを走りへっへしている。


「皆さま、おかえりなさいませ。採取は上手くいったようですね」


 優しい笑みを浮かべるメリリ。一同から「ただいま」の言葉を受け屋敷へと向かう。最後にシャロンにくっ付きながら入ってきたキュアーゼは幸せそうな笑みを浮かべていた。


「ふぅ……シャロンに抱きつくとやっぱり元気になるわ……」


「………………それよりも、フィロフィロはどうですか? 本当に産卵するのですか?」


 やっと離れたキュアーゼにシャロンが気になっていた事を口にする。シャロンがクロと一緒に王都へ向かう前日にフィロフィロの様子がおかしい事に気が付いたキュアーゼは本来なら一緒に行動する予定だったがキャンセルしメリリと共に家に残ったのである。


「思った通りだったわ。産まれたわよ」


 優しい笑みを浮かべながら話すキュアーゼ。シャロンは玄関に入ったが踵を返し外へ駆け出す。


「もう、シャロンったら……ふふふ、卵の主になったら、もっと喜ぶかも~」


 走り出したシャロンを追い掛けるキュアーゼなのだった。









「師匠も太っ腹よね~」


「器が大きいとは思っていたけど、四台とも渡してスペアパーツまで渡すとは思わなかったな……」


 日当たりのよい中庭でヒカリゴケをゴリゴリと潰しながら話すビスチェとクロ。その横には布で包まれた卵を首から下げて抱き締めるシャロンの姿と紅茶を入れるメリリの姿があった。


「来た時も慌ただしかったけど帰りもそうだったわね~」


「そうだな……急に私のモノにならないかといわれた時は驚いたけど……はぁ……」


「あの時は鼻の下が伸びていたわ」


「そりゃないだろう……行く心算もなかったけど、あんな言い方をされると驚くだろ」


 エルカジールはエルフェリーンからレーシングカート四台を受け取り帰り際にクロを誘ったのだがすぐに断られ、それを目の前で見たエルフェリーンは転移魔法を発動して押し込むように転移させられたのである。


「うふふ、それだけクロさまに魅力があると言うことですね。お熱いのでお気を付けください」


クロが魔力創造した白いテーブルに入れたての緑茶を置くメリリ。クロはお礼をいいながら魔力創造で個包装されたクッキーを創造すると開封し、アイテムボックスからおしぼりを取り出し配る。


「ふぅ……流石に少し疲れたわね」


 すりこ木棒を置きおしぼりで手を拭くビスチェとクロ。メリリは既にクッキーを口に入れ表情を溶かし、シャロンはいつの間にか舟を漕いでいる。


「クッキーなのだ!」


「キュウキュウ~」


 空から舞い降りてきたキャロットと白亜におしぼりを進めようとアイテムボックスを開くが、キャロットはクッキーを口にしており白亜もモグモグとクッキーを口にして尻尾を振る。その姿にクロはアイテムボックスからおしぼりを取り出し前に置き、甲高い鳴き声が耳に入り空を見上げる。

 頭上には三匹のグリフォンとそれに乗るキュアーゼの姿があり、ゆっくりと舞い降りこちらへとやってくると寝ているシャロンを見つめて微笑みを浮かべるキュアーゼ。


「シャロンの寝顔を見ると癒されるわ~」


 グリフォンから降りたキュアーゼは両頬に手を当て身悶えるような素振りをし、それを見たクロは引きながらもクッキーを進め、メリリは口にクッキーを咥えながらお茶の用意をする。


「あの、良かったらお茶とお茶菓子もどうぞ」


「ちょっと待って! もう少し堪能させて!」


 クロへ手を広げて待って欲しいというキュアーゼは放置でいいかと視線を戻すと背中を摩られ振り向き、ドアップでグリフォンの顔を見たクロは椅子から転げ落ち、ビスチェがお茶を噴き、キャロットが笑い声を上げ、お茶を被ったシャロンが起き、観察していたキュアーゼが怒りの視線をクロへ向ける。


「キュロロロロロ」


 心配するように鳴くグリフォンがクロに頭を下げ、クロはその頭に優しく触れて撫でながら立ち上がると他のグリフォンたちからも撫でろと言わんばかりに頭を下げながらクロに擦り付ける。


「もう、クロが急に転ぶからお茶を噴き出したじゃない!」


「あの、僕、何か濡れてて……」


「シャロンはこれを使うといいわ。それよりもクロが椅子から落ちるからビスチェがお茶を噴き出してシャロンが穢れたわ! どうしてくれるのよ!」


「うふふ、クロさまはグリフォンにも好かれていますね~」


「キュウキュウ!!」


 やや混沌としてきた所に白亜が撫でられている三頭のグリフォンに嫉妬したのか翼を広げ飛び上がりクロの胸にダイブする。


「あはははは、楽しそうな事になっているね~」


「師匠! 新しいボディーは軽量化させスピード重視で行きましょう!」


 屋敷からエルフェリーンやルビーにロザリアやアイリーンに七味たちが現れ、更に騒がしくなりいつもの錬金工房『草原の若葉』へと……


「こらこら、甘えるにしても爪を立てるな! 口のまわりがクッキー塗れだろうが!」


「キュウキュウ~」


 甘えた声を上げる白亜なのであった。








 これにて十三章は終了となります。次章はまだ何も考えてないので少し期間が空きますが、金曜日か土曜日までには再開したいと思います。



 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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