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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十三章 お騒がせハイエルフ
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シフォンケーキと七味たちの成長に食べ過ぎ乙女



「それじゃあ、僕たちはキャロットとゼギンが乗れるようなカートを作ってくるぜ~」


「レースをするなら性能差とかも考えないとですね! いっそキャタピラ仕様にしましょうか!」


 食後のデザートも食べ終えたエルフェリーンとルビーは元気に話しながらリビングから工房へ抜ける渡り廊下へと消え、それをこそこそと追い掛けるエルカジール。残ったのは食べ過ぎて動けなくなった者たちとクロとシャロンにゼギンの男子たちであった。


「もう食べられないのだ~」


「ギュウギュウ~」


 大きくなったお腹を摩りソファーに横になるキャロットと鳴き声に濁点が付くほど満腹な白亜。


「ふぅ……美味しかったけど……食べ過ぎ……たわ……」


「牛丼を三杯も食べてシフォンケーキにたっぷりとホイップクリームにベリーのジャムまで付けるんじゃなかった……うぷっ……」


 エルフ姉妹もソファーに体を預け天井を見上げている。


「太るとわかっていても、ふわりとしたホイップとベリージャムを付けたくなるわね……」


「うむ……ふぅ……牛丼は最高じゃったし、シフォンケーキは至高なのじゃ……」


 キュアーゼとロザリアもリビングの席に付いたまま動く様子はなく、食べ過ぎながらも後悔はないようで紅茶を少しずつ飲みながら消化を待つ。


「うふふ、やっぱりクロさまの料理は最高ですねぇ。シフォンケーキにはホイップクリームとベリーのジャムですぅ」


「くっ……私としたことが動けなくなるまで食べるとは……これもクロさまの料理やデザートが美味しいのが悪い……」


 うっとりとした笑みを浮かべフォークを持つメリリとクロをキッと睨みつけるメルフェルン。その頬にはホイップが付いており指摘するか迷うクロ。


「ふぅ……私も久々に食べ過ぎました~あのベリーのジャムは前に一緒に作ったものですよね?」


 お腹を摩りながら満足気な表情を浮かべていたアイリーンからの疑問にクロが口を開く。


「ああ、そうだな。春先にみんなで一緒に採った物を砂糖と煮詰めたものだな。少しだけシナモンを入れて煮込んだから香りが良いよな。シャロンも泡立てに手伝ってくれてありがとな」


 ホイップクリームを作る際の泡立ては何気に重労働でクロはホイップにレモン果汁を少量入れ泡が立ちやすくしたのだが、目を輝かせホイップクリームを凝視する乙女たちからのプレッシャーに作る量を増やしシャロンが協力してくれたのだ。


「いえ、手伝える事があったら何でも言って下さい……」


 微笑みを浮かべるシャロンは紅茶を口にする。食べ過ぎの変態がハァハァしているがそれには触れずに皿を回収していると天井から七味たちがテーブルに降下する。


『牛丼美味しい。ケーキ美味しい。浄化手伝う』


 一味からの念話にクロが頷くと両手を上げて浄化魔法を使う一味と二美。以前は七味の中でも一味だけが浄化魔法を使えたのだがニ美も習得したようで同じように両手を上げてテーブルに乗っている皿を浄化し目を見開く一同。他の七味たちは二匹をじっと見つめる。


「魔法を使う蜘蛛の魔物は見た事があるが、浄化魔法を使うのかよ……」


 ゼギンの言葉にアイリーンは小さな胸を張るがまだお腹いっぱい食べた影響があるのかすぐに背を丸め、口を押えて糸でテーブルの上に文字を浮かべる。


≪うちの子たちはそこいらの蜘蛛とは違うのです! 一味とニ美は浄化魔法を覚えましたし、三美と四美は複数の糸を操れるようになりました! 五美は高速タップを覚え、六美は影魔法? を覚えたそうですよ! 七美はツッコミが得意です。どうです! 凄いでしょう!≫


 椅子に座り口元を手で押さえるアイリーン。浮かべる文字とのギャップにクロとシャロン肩を揺らし、驚いていたゼギンは浮かべた文字を目で追う。


「うむ、我の影魔法を少し教えたらすぐに覚えたのじゃ。六美は影魔法の才能があるのじゃ」


 ヴァンパイヤのお姫さまであるロザリアはプリンセスとしてのプライドがあるのか食べ過ぎても姿勢を崩すことはなく平静を装う。


「ギギギギギギ」


 鳴き声を上げ両手を上げてお尻を振る六美。他の七味たちも同じように踊り出し、その姿に緊張していたゼギンは考えるだけ無駄だなと紅茶を口にする。


≪七味も凄いですが小雪も色々と覚えていますからね~この前はくしゃみと一緒に氷の粒が飛びましたし、狩りでも活躍してくれています! 擬態する系の虫とかを見つけて吠えてくれますね~≫


「わふっ!」


 アイリーンの座る椅子の横でお座りをして尻尾を揺らす小雪。飼い始めた頃は手乗りサイズだったが今では成犬サイズになり走る速度も上がってアイリーンと並走できるまでになっている。


「最初に見た時から思っていたが、ありゃフェンリルだろ?」


≪そうですよ~エルファーレさまからお預かりしているフェンリルの小雪です!≫


「ああ、やっぱり……フェンリルは一匹でも災害クラスと呼ばれる神獣であり魔物……リトルフェンリルは見た事があるが、顔つきが違うな……」


 若干引きながら口にするゼギンに、アイリーンは笑みを浮かべるが食べ過ぎの影響は大きく文字を浮かべるのも億劫おっくうになったらしく椅子の背のたれに体を預ける。


「リトルフェンリルの群れは僕も見た事があります。空から見たのですがキャッスルベアと戦っていて生きた心地がしませんでした……」


「あ、ありましたね……うぷっ……キャッスルベアとリトルフェンリルの戦いは今でも忘れられそうにありません……というか、巨大なイナゴとの戦いや巨大ムカデとの戦いも忘れられませんが……」


「うふふ、冒険者時代よりも恐ろしい魔物と戦っているのが不思議ですねぇ」


 シャロンは自身を抱き締めるように震え、同じくメルフェルンも思い出したのか顔を青ざめ、メリリは笑顔で『草原の若葉』と行動を共にするようになってからの戦歴を口にする。


「巨大なムカデって、お前たちは何と戦っているんだよ」


 呆れたように口にするゼギンだったがアイリーンが普段持ち歩いているアイテムバックから巨大なムカデの甲殻の一枚を取り出すと口をあんぐりと開けたまま固まる。


「邪魔だからそんなもの出すなよ」


「そうですよね……背景にすればばえると思って常にバックに入れてますが冒険者ギルドでも引かれただけでした……うぷっ……エクスヒール……ふぅ~初めからこうしておけば良かったですね~」

 

 魔力反応の光に包まれるアイリーン。光が治まると膨らんでいたお腹が元のスッキリしたものに戻り、立ち上がり大きく伸びをする。

 その姿に食べ過ぎ乙女たちの視線が集中したのは仕方の大事だろう。






「ふぅ……これで全員ですね~」


汗を掻いてはいないが汗を拭う仕草をするアイリーン。上位の回復魔術であるエクスヒールは欠損部位すら回復させる効果があり、食べ過ぎでその魔術を使ったのはこの世界では初めてではないだろうか。


「うむ、次からは食べ過ぎに注意するのじゃ」


「うふふ、これで動くことができますねぇ~」


「私も食べ過ぎには注意するわ……」


「あれだけ苦しかったのが嘘みたいね……ありがとね」


「キュウキュウ~」


乙女たちから感謝されアイリーンは笑みを浮かべ、白亜が感謝しているのかアイリーンに飛び付き甘えた鳴き声を上げて頬ずりをし、それに嫉妬したのか小雪はアイリーンの太ももに頬ずりをし「く~ん」と情けない鳴き声を上げる。


「でもいいのか? これって強制的に消化させている様なものだろ?」


クロの言葉に乙女たちの顔が引きつる。先ほどまでの満腹感が消えたのは良いがそれは次も普通に食べられるということである。ある意味、簡単に太る方法といえるだろう。


「そこはほら、クロ先輩が食の進まない料理を作れば解決ですよ~」


責任を押し付けられるクロなのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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