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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十三章 お騒がせハイエルフ
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昼食は牛丼を



 クロは昔の事を思い出しながら竈でご飯炊きながら出汁に砂糖と醤油と日本酒を入れ沸騰させ玉ねぎを入れ軽く煮ると、牛バラ肉を入れて灰汁を取る。最後にみりんを入れてひと煮立ちさせ味見をする。


「こんなものかな。後はお味噌汁と漬物かな……ああ、紅ショウガもだな」


 魔力創造で紅ショウガを創造し器に移し替え小さなトングを付け、米が炊きあがるとすぐにおひつに移し替え米を新たに炊き、ワカメと豆腐に長ネギのお味噌汁を作りアイテムボックスで保管する。


「人数が多いから米が足りるか心配だよな……もう一度炊いて、」


「お腹が空いたのだ!」


「キュウキュウ~」


 元気に帰ってきたキャロットと白亜。それに足元には小雪がおり尻尾を振っている。


「私もお腹が空きました~クンクン……これは……牛丼の香り!?」


 鼻をスンスンさせ料理名を当てるアイリーンに笑みが漏れるクロ。後ろからはビスチェとシュミーズにゼギンとシャロンの姿もあり帰ってくるなりリビングに椅子に腰かけレーシングカートの話題に花を咲かせる。


「うふふ、やはり私の勝ちでしたねぇ」


「くっ! 一度まぐれで勝っただけです! 次こそは私が勝ちます!」


 メリリやメルフェルンも帰宅し手を洗うと配膳を手伝い、その間に残りのエルフェリーンとロザリアとルビーが帰宅し、エルカジールはまだかと窓から外を見るクロ。遠くではまだ煙を上げて走る姿が薄っすらと見え、これはカートに嵌ったなと思うクロ。


「僕が二連勝したからね~エルカジールは悔しく練習しているんだぜ~」


「エルカジールさまは追いつこうとカーブでも減速せずにブルーのクッションに突っ込んでいました。怪我がなくて良かったですがあれは危険です」


 エルフェリーンがドヤ顔で話しルビーが補足説明をする。二人は開発者という事もありクロの雑誌に載っていたドリフト走行をし、それを真似てエルカジールがクラッシュしたのだろう。


「師匠とルビーもみんなが上手く操縦できるようになるまではドリフト走行は控えた方がいいですよ。真似して大怪我でもされたら」


「そこは私の出番です! 生きれさえいればエクスヒールでチョチョイのチョイですよ~それよりも牛丼を食べたいです! 大盛つゆだくでぎょくを付けて下さい!」


「マニアックな言い回しをするなよ。汁は別でテーブルに置くから好きにかけてくれ。普通盛りで出すから大盛分はおかわりしてくれ」


 そういってキッチンへ向かうクロ。メリリが笑顔で待ち、メルフェルンはどこか機嫌が悪そうではあるが牛丼の盛り付けを手伝う気でいるらしい。


「メリリさんはライスをドンブリに盛って下さい。メリリさんは生卵を運んで下さい」


「お任せ下さい!」


「生卵はこのバスケットですね」


 バスケットに入れた生卵と小鉢を運びキッチンからメルフェルンを遠ざけたクロはメリリにライスの量を簡単に教えると、自身はメリリの盛ったライスの上に牛丼の具を穴の開いたお玉で入れ最後に煮汁をかける。プロの様に一度で具を盛るような事はしないがバランスよく具を乗せるクロ。

 生卵を置いてきたメルフェルンが戻り、クロが指示を出しお味噌汁と浅漬けを乗せたトレーを用意すると牛丼を乗せ配りにリビングへ向かい、ライスを盛り終えたメリリも配膳へ向かう。


「ふぅ、これでエルカジールさま以外の分は用意できたかな」


 メリリとメルフェルンが運び終え二人もリビングで食べ始めると料理についての声が聞こえ、クロはそれをBGM代わりにエルカジールの分を用意する。


「これは牛丼という料理ね! 甘辛く煮た肉と玉ねぎをお米の上に乗せたものよ!」


「生の玉子とか大丈夫なの? お腹を壊すのは嫌よ!」


「クロが出す玉子は大丈夫だぜ~生で食べても問題ないからね~」


 エルフェリーンの言葉に何やら気が付いたのかバスケットに入った玉子を手に取り神妙な顔で見つめるシュミーズが呟く。


「もしかして魔力創造……」


「ん? 魔力創造は酒を作るスキルだろ?」


「何を言っているのよ! 魔力創造は万物を作り出すと呼ばれる神のスキル……創造神ベステルさまの力じゃない! 酒だけに適用されるわけじゃないわ! この玉子を見なさい! どれも同じ形をしているわ! ほら、ここにポツッとした所とか全部にあるわ!」


「ん? ああ、あるな……」


「このバスケットに入っている玉子は全て同じものという事よ!」


「うふふ、おかわりで~す」


「……………………」


 シュミーズとゼギンがクロのスキルで作り出した玉子を見つめているうちにメリリは完食し、おかわりを用意すべく動き出す。キッチンカウンターには大きな鍋とおひつがあり、そこでライスを盛り好きに具を乗せ牛丼を完成させるメリリ。特盛である。


「私もおかわりしますね~あの店の牛丼よりも美味しいですよ~」


「私もなのだ~」


「キュウキュウ~」


 アイリーンとキャロットに白亜もおかわりをしようと立ち上がり、話し込んでいたシュミーズは卵を小鉢に割り牛丼に乗せ恐る恐る口にする。


「うまっ!? これうまっ!? お肉が柔らかいし野菜にもタレの味が染みて下のツブツブと一緒に食べると美味しいわよ! 玉子を入れたからヌルヌルするけど黄身の味が濃厚で止まらなくなるわ!」


「ツブツブじゃなく米よ!」


「おお、確かに美味いな! これなら何杯でも食えそうだ!」


 あっという間に一杯目を完食したゼギンはおかわりの列に並び、前に並ぶメルフェルンの作り方を見て自身で特盛を作る。


「この赤いものは何かしら?」


「それは紅ショウガよ。酸味があってサッパリ食べられるわ」


「ビスチェはそんなに入れるの?」


 シュミーズが指摘するように紅ショウガで真っ赤に染まった牛丼を美味しそうに食べるビスチェ。


「あら、これが良いのよ。シャキシャキとした歯応えも加わって美味しいのよ」


 訝し気な視線を向けるが少量を牛丼に入れ口にするシュミーズ。ゼギンは特大盛を自身で盛り席に付くとスプーンを差し込み口にして満足気に頷く。


「ゼギン、これを入れてみなさい! 紅なんとか、」


「紅ショウガよ」


「そうそれ! 美味しいわよ! シャキシャキなのよ!」


「お、おう、自分で入れるからな。そんなに大量に乗せようとするな。取り合えずそれを置け」


 小さなトングと紅しょうがの器を持ち構えるシュミーズにゼギンは顔を引き攣らせ落ち着かせるように紅ショウガを置くよう口にする。


「好評なようで良かったな。あの時もポンチーロンが取り合って食べていたよな~」


 エルカジールの分をアイテムボックスに入れたクロはひとり屋敷を出でコースを目指し、煙を上げて走る姿を遠目に足を進める。


「クロは優しいね~エルカジールに昼食を届けに行ったぜ~」


「紅ショウガも少量なら美味いな。味が変わって飽きないかもな」


「でしょ! 入れれば入れるだけ美味しいわよ!」


「ビスチェは入れ過ぎよ! それじゃクロが折角作った牛丼が紅ショウガ丼じゃない!」


「ふぅ~少し食べ過ぎちゃいましたね~七味たちも牛丼を気に入ったみたいですね~」


 アイリーンの視線が天井へ向かい七味たちが仲良く牛丼を食べる姿が映る。


「クロさんの分も残しておかないとですね」


 普通盛りを食べ終えたシャロンが立ち上がりエルカジールの元へ向かったクロの分を用意すべくキッチンカウンターへ向かう。が、牛丼の具を入れていた大鍋は既に汁しか残っておらずリビングに視線を向け、山のような牛丼の攻略を始めるキャロットとゼギンの食欲に驚くのであった。








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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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