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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十三章 お騒がせハイエルフ
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食べ過ぎとコース造り



「も、もう食べられない……わ……」


 朝食後にそう口にしてソファーに横になるシュミーズ。それを呆れた表情で見つめる妹のビスチェ。


「うふふ、シュミーズさまは小食なのですねぇ」


 食後のお茶を飲みながら微笑みを浮かべるメリリに今度はメルフェルンが呆れた視線を向ける。


「あれだけ食べたのにおにぎりを五個も食べ、お茶漬けにして追加で二つもおにぎりを食べる方が驚きです」


 小食前にクロが出した携帯食を口にし、更におにぎりを五個と、出汁を入れ山葵と胡麻を入れたおにぎりを二個食べたメリリ。ルームランナーの出番は近いだろう。


「ぷはぁ~僕もお腹いっぱいだよ~おにぎりを使ったお茶漬けは美味しいね~具によって味が様変わりするのは楽しいね」


「私は衝撃を受けたね。米という穀物を初めて食べたけど美味しいね。具が入っているのもいいし、最後にスープをかけたのも美味しかったね。甘い玉子焼きはまた今度食べたいな」


「俺は味噌汁が美味かったな。もちろん、おにぎりも美味いし玉子焼きやしょっぱい野菜もおにぎりと一緒に食べると美味いが、味噌汁は食べると心が休まる気がしてな……不思議と故郷を思い出したよ……」


 エルフェリーンとエルカジールはリビングの椅子の背もたれに体を預けお腹を摩りその動きがシンクロし、ゼギンは感想を言い終えると静かに目を閉じ故郷の風景や両親と兄妹を瞼の裏に浮かべる。


「師匠があれではコース造りは午後でしょうか?」


 クロの隣に座るルビーの言葉に背もたれに体を預けていたエルフェリーンは体を起こし、エルカジールも同じタイミングで体を起こす。


「そうだね! コースを造らないとだね!」


「私も参加する! アレが走るところを見たい! 乗りたい!」


 食べ過ぎていたのが嘘のように立ち上がり庭へと走り出す二人。ルビーも立ち上がり庭へと向かう。


「元気になったのはいいが食休みぐらいゆっくりしたらいいのに……」


「歯磨きもしないで走り出したわね。ふふ、子供みたい」


 シュミーズを呆れた表情で見つめていたビスチェがクロへ話し掛け微笑み、二人して肩を揺らすのであった。









 エルフェリーンたちが走り出し一時間ほど家事をしていたクロやメルフェルンにメリリは洗濯を干し終える。洗濯といってもアイリーンが浄化魔法をかけたもので既に綺麗になり乾いている。それを日に当てた方がふっくらするという理由でベランダに上がり干しているのだ。


「うふふ、三人でやればすぐに終わりますね」


「人数が増えたから手伝ってもらえるのは助かります」


「いえ、シャロンさまの下着を干す栄誉を与えて下さり、私としては感謝しかあません」


 変態がいるがそこは気にしない様に努めながらベランダから一階へと降りると、横になっていたシュミーズが体を起こす姿が見え声を掛けるクロ。


「大丈夫ですか? まだ体調が悪いようなら胃薬やポーションをご用意しますが」


「大丈夫よ……調子に乗って食べ過ぎただけだから……ふぅ……もう大丈夫よ……」


 ゆっくりと立ち上がったシュミーズは外が気になるのか窓辺へと移動し外を眺める。


「先ほどエルフェリーンさまが大魔法を行使され荒野の方で砂煙が上がっておりました」


「あれは凄かったですね。干しながら驚きました」


「上から見たのである程度のコースの概要が分かったが、あの雑誌に載っていたコースを再現していたな。大きな外周コースと内側にヘアピンカーブやS字カーブを入れて、最後に急カーブを入れて盛り上がるようにしたのか、それともそのまま再現したのか……」


 顎に手を当て考えるクロ。それを聞きシュミーズは振り返りクロの肩に手を置く。


「クロはどんなコースになるか知っているのね! どんなコースなの! 教えなさい!」


 肩に力を入れるシュミーズにビスチェとそっくりだなと思うクロはエルフェリーンに渡した雑誌をその場で魔力創造すると、それを手渡し逃げるように後退する。


「今のが魔力創造……昨日エルカジールさまが騒いでいた神が使うスキル……」


 昨晩、クロが白ワインのカクテルであるスプリッツァーを作った際に魔力創造で材料を創り、それを目撃したエルカジールが驚き、結局は皆にクロの魔力創造がばれたのである。


「白ワインはクロの魔力創造で創ったのかい?」


 目をキラキラさせそう口にしたエルカジールにクロは苦笑いしながら頷き、シュミーズやゼギンの目の前で白ワインを作りキュアーゼも目を丸くする。


「あの素晴らしいケーキも魔力創造で創ったのね……」


「あれは自分が住んでいた近所のケーキ屋さんの物や、雑誌に載っていた有名なものですね」


 キュアーゼの疑問に答えながら複数のホールケーキを魔力創造すると目を輝かせる乙女たち。メルフェルンは素早く動き皿を用意し、メリリはフォークを用意しナイフを持ってくる。それを手早く切り分け口にする乙女たち。エルカジールやシュミーズもケーキを口にして表情を蕩けさせたのだった。




 昨晩の事を思い出して顔を両手で覆うクロ。


「安心なさい。私は言い触らしたりしないし、ゼギンもそんな奴じゃないわ。エルカジールさまはわからないけど……無茶をいうような方じゃないわよ……たぶん……」


 クロのリアクションにシュミーズが声を掛け、クロは顔を上げるが「たぶん……」と終る言葉に肩をガックリと落とす。そのリアクションを見たシュミーズは小さく笑い雑誌へ視線を落とし、そのカラー印刷や見た事のない世界の情報に目を丸くするのであった。







「地形を操作する大魔法は何度か見たが、こんなにも繊細な操作は初めてだ……」


「うむ、これほどまでの大魔術で大地に干渉しておったのに揺れが起きないことに驚いたのじゃ……ハイエルフという存在はやはり別格なのじゃな……」


 人類で数少ないSランク冒険者であるゼギンと、ヴァンパイヤでAランク冒険者であるロザリアはエルフェリーンの使った魔術に驚いていた。

 すぐ目の前で天魔の杖を掲げ魔術を使い隆起する大地。雑誌に載っていたレーシングカートコースを作り上げたのだ。水がたまらない様コースとコース外に緩やかな坂を付け、待機場所やメンテナンスができる小屋まで土で作り上げたのである。


「ふぅ、こんなものかな~あの小屋は後で木や石で補強すれば完成だぜ~」


「凄いよ! やっぱりエルフェリーンが一番の魔術士だね! 私はずっとそう思っていたよ!」


 雑誌を持ち出来上がったコースと見比べながら叫ぶエルカジール。エルフェリーンは相当疲れたようで天魔の杖で体を支え、近くにいたビスチェは魔力回復ポーションを手渡す。


「素晴らしい魔術だわ……大地の精霊も手助けしていたけど、とても楽しそうだった……私にはまだまだ無理だわ……」


 地震との力の差を見せつけられたビスチェは素直に感心しながらも込み上げる悔しさに歯を喰いしばる。


「本当にエルフェリーンさまの魔術は凄いですね~あっという間にレースコースが完成しちゃいましたよ~レース中は七味たちも気を付けなきゃダメですよ。レーシングカートは小さいけど引かれたら痛いですからね~」


 「ギギギギ」の声が重なり七味たちが手を上げる。


「コースの試運転はルビーに任せるから改善点があれば教えてくれよ」


「はい、任せて下さい!」


「私もしたい! 試運転を手伝いたい!」


 ルビーが元気な返事をし、その横で両手を上げて乗りたいアピールをするエルカジール。エルフェリーンは微笑みを浮かべ自身がクロからプレゼントされたヘルメットをエルカジールに手渡すのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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