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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十三章 お騒がせハイエルフ
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焼きそばとメリリ



「いや~本当に美味しいよ~白ワインもそうだけどウイスキーにブランデーと色々なお酒がるんだね~」


「そうだぜ~クロが作ってくれるお酒は美味しいんだぜ~他にも日本酒やどぶろくというお酒もあって、最近じゃあドランもゴブリンたちとお酒を作っているからね~」


 頬を染めながら話すエルカジールとエルフェリーン。ドッキリを仕掛けると聞いた時は仲が悪いのかと思ったが和やかに話す二人の姉妹にホッとするクロ。他の『草原の若葉』たちも姉妹仲が良好な事に安堵したのか酒が進みルビーは一人でウイスキーをひと瓶空けている始末である。


「ぷはぁ~このハイボールという酒は最高だな! 飲みやすさもあるがシュワリとした喉ごしがたまらん! ツマミに持ってきた柔らかい肉も最高に美味いぞ!」


「あら、ローストなんとかは白ワインの方が合うわ! こっちのエビを使ったサラダも美味しいわよ!」


 『千寿の夜明け』の二人も酒を飲みクロが持ってくるツマミを口にしては表情を溶かし歓声を上げる。初めて食べる料理が多くそのどれもが酒に合ったものとなれば喜ばない酒飲みはいないだろう。


「メリリさんもキッチンの一人でキッチンの奥で食べないで、皆さんと一緒に食べてはどうですか?」


 キッチン奥の地下室へと続く廊下に段ボール箱を置き、その上に料理とレモンの焼酎缶を置いて食事をするメリリへと声を掛けるクロ。


「いえ、その、あの………………うまっ!? うふふ、ローストビーフは柔らかくて本当に美味しゅうございますね。それに歯切れのよいエビのサラダと、大根を使ったスティックサラダはヘルシーで素晴らしいと思います」


 どうやらリビングの宴会には参加し辛い事でもあるのだろうかキッチンの隅から動こうとはせず、クロが小分けした料理と酒を口にして微笑みを浮かべる。


「本当に何があったのかね……っと、それよりも今は料理に集中しないとな」


 メリリから竈に視線を変えてフライパンで肉と野菜を炒め別のフライパンで麺を炒める。麺を軽く焦がし水を入れ煽り粉末の焼きそばソースを半分入れ混ぜ、炒めた肉と野菜を入れて残った半分の粉の焼きそばソースを入れて炒めながら混ぜ、大皿に盛り青のりをかけて仕上げる。


「何々、この香ばしい匂いは!!!」


 エルカジールが立ち上がりキッチンカウンターに腰かけ、ゼギンとシュミーズもその香りに釣られキッチンカウンターに顔を見せ、シャロンに抱きついていたキュアーゼも鼻をヒクヒクさせ流れてくる焼きそばの香りに視線を向ける。


「あれは焼きそばという料理ですね。熱々を口に入れると香ばしいソースの香りと麺のモチモチとした食感を楽しめますよ」


「それは美味しそうね……」


 ソファーでシャロンに抱きついていたキュアーゼはリビングのテーブル席に付き、どっと疲れた表情を浮かべていたシャロンはキッチンカウンターに座り料理するクロを見つめる。山盛りの焼きそばをメルフェルンが届け皿に分けると一番に腕を伸ばしたゼギンがフォークを使い口に運ぶ。


「こりゃすげーな! よくわからんが美味いぞ! 野菜はシャキシャキで、茶色く長いのがモチモチして噛むと楽しくなる!」


「うんうん、これは段違いだね! 焼うどんも美味しかったけどこっちの方が何倍も美味しいよ!」


「クランが言っていた通りね……これは全然違う料理だわ……それにワインとはあまり合わないわね……」


「それならビールを飲むといいわ!」


 シュミーズが焼きそばを口にして白ワインで流し込み感想をいうと、ビスチェが冷えた缶ビールを目の前に置きエルカジールとギゼンの前にも同じように置き席に付く。


「酒よりも焼きそばなのだ!」


「キュウキュウ~」


 お酒が好きではないキュロットと白亜は焼きそばを口に入れながらその味に喜び尻尾をシンクロさせ、アイリーンも七味たちに焼きそばを分けに壁際へ移動しそれを追い掛ける小雪。


「熱いから冷ましながら食べて下さいね~クロ先輩の焼きそばはそこらの屋台の焼きそばよりも美味しいですからね~」


「ギギギギギギ」


 両手を上げお尻を振り喜ぶ七味たち。そんな光景を目にしながら焼きそばを口にし、あまりの熱さにロックのブランデーを口に含むロザリア。

 その光景にクロはまた焼きそばを炒め始め、キッチンの奥で目を瞑り鼻をスンスンと鳴らすメリリが視界に入ったからだろう。


「取り分けるのを忘れたな……」


 小さな反省をしながら焼きそばを作っているとキッチンにビスチェが現れ口を開く。


「クロ! ビールの追加! 私が勧めたら手持ちを全部取られたわ! 教えなきゃよかった!」


 口を尖らせるビスチェにクロは片手でフライパンを操りながら魔力創造しドライなビールを箱ごと作りキッチンテーブルにドンと現れ、それを抱えたビスチェは笑顔でリビングへ向かう。


「焼きそばにはビールが合うよな~最近は暖かくなってきたし、ビールもいいかもな~」


 そんな独り言をいいながら青のりを振りかけ焼きそばを完成させ皿に移すと期待した目を向けるメリリへと届ける。


「うふふ、ありがとうございます。焼きそばの香りに胃が活発に動いてしまい、ぐうぐうと鳴っておりました。では、いただきます。はふはふ……」


 笑顔でお礼を言うと箸を使い一気に口の中に運ぶメリリ。出来立てという事もありハフハフと熱い息を漏らし口にし山盛りの焼きそばが胃袋に消えて行き、その食べっぷりに美味しかったことが分かり無言で数度頷くクロ。


「いや~美味しそうに食べるねぇ~メイメイと久しぶりに会えて僕は嬉しいよ~」


 急に聞こえた声に振り返るとクロの真後ろには微笑みを浮かべるエルカジールの姿があり、メリリは壮大に咽てクロは慌ててアイテムボックスからペットボトルの水を取り出すと蓋を開けて手渡す。


「ゴクゴクゴクゴク……し、死ぬかと………………ゴクゴク……」


 盛大に咽たメリリは水を飲み焼きそばを流し込みエルカジールと視線を合わせると顔色が青く変わり、それとは対照的に微笑みを浮かべたエルカジールはクロの後ろから移動しカタカタと震えるメリリに抱きつく。


「大きくなったねぇ~噂は聞いていたけどこうして会えて私は嬉しいよ~」


 カタカタと震えていたメリリだったがその頬に二つ筋の涙が流れ、頭に落ちてきた水滴に顔を上げたエルカジールは「あれ? えっ!? 涙!!」と取り乱し、クロはアイテムボックスからハンカチを取り出すとメリリに手渡す。


「エルカジールさま……お久しぶりにございます……追放された私を、まだメイメイと呼んで下さるのですね……」


 ハンカチを受け取ったメリリだが流れ出す涙を拭うことなく震える声を発し、取り乱していたエルカジールだったがメリリの声を聞くとギュッと力を入れ抱き締め直す。


「あたり前だよ……メリメリは私の友達だからね~もう長い時が流れたけど……また会えて嬉しいよ~」

 

「私も……嬉しいです……」


 震えていたメリリはエルカジールに優しく手をまわし抱き締め、それを静かに見ていたクロはメリリの前歯に付いた青のりを指摘するか悩むのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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