とある運のない男
ある男は地方貴族の三男に生まれ、家督を継ぐ事はなかったが生まれ持った魔術の才能を伸ばし治水工事の責任者にまで登り詰めた。
雨季に氾濫する川を整備し防壁を築き、敢えて壊れやすい地には深い池を作り大きな功績を残して行く。
民からは、水を制した魔術と呼ばれ、その名声は王都まで広がると国王陛下から直々に王都近郊の治水工事を任される事となる。
が、彼は運が悪かった……
治水工事をはじめて三カ月もしないうちに二度の大雨が襲い、築きはじめていた堤防は崩れその土砂は王都近郊の川をせき止め大きな氾濫を生む事となり、甚大な被害を与える事となった。
まだ実をつける前の麦は土砂に埋もれ飢饉が発生した事もあり、王国は穀物の輸入に手を出すことになり膨大な損害を生む形になったのだ。
男は自身の信念に従い治水工事を進めるが、国王は責任をその者へと擦り付ける形収集を図る事となり処刑台を赤く染めた……
しかし、男は復活を果たす。
人より優れた魔力量と生前に手にしていたネクロミノコンと呼ばれる魔道書を手に入れていたのだ。
魔道書は実家の倉庫の奥深くに眠っており、それを似た本とすり替え偽装し、いざとなればアンデットを使い治水工事をすればいいと考えていたのだ。
男が墓場から復活を果たし、自身が報われないのは国王のせいだと決めつけ、王都の地下水道で極秘裏に試行錯誤を続けネクロミノコンの力を増幅させていた。
王都という事もあり人は多く死ぬ者も少なくはない。
男は思った。
この地はアンデットの楽園になり、新しい王になるのは自分であると……
それから数百年ほど経過し、ネクロミノコンの力の半分ほど使えるようになると男はさらなる実験に手を出す事となる。
配下を集めよう……
レイスを使い極秘裏に情報を集めていた事もあり、多くの貴族に近衛兵が処刑された事を知った男はネクロミノコンの力を振るう事となる。
リッチが三体にデュラハンが三体。どちらも上級なアンデットであり簡単に勝つ事が難しい。それに加え多くのレイスたちが人々を怖がらせる事により手にした恐怖の感情が男に更なる力と自信を与えた。
「長く暗い時を過ごしたな……新しい時代を作りに向かうぞ……」
ネクロマンサーとして、死を超越した者として、新しい王として……
夜空に浮かぶ月を数百年ぶりに見た男はレイスに指示を出す。
さらなる恐怖を……
月明かりを背にアンデットの楽園を作るため、男は動き出すのであった。
これにて二章は終わりです。次からはダンジョンの話になる予定です。
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