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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十二章 七味たちと成樹祭
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神託と提案



 誕生祭が終わった翌日、クロたちは王家の者たちに見送られ錬金工房へと戻った。すると妖精たちが玄関前で待っており目が合った瞬間に飛び寄りエルフェリーンのまわりを飛び回る。


「大変~大変~」


「アルーが呼んでる~」


「急いで~急いで~」


「アルーが呼んでる? アラクネのアルーが僕に用なのかな?」


 首を傾げるエルフェリーン。アラクネのアルーが人を呼ぶ時は大抵仲の良いアイリーンでありエルフェリーンが呼ばれることはほぼほぼない。


「クロも呼んでる~」


「クロも来て~」


「早く~早く~」


 クロの顔に張り付き翼を羽ばたかせ頬を引っ張り地味に痛い思いをする。


「痛たたたた、行くから頬を引っ張るな! 痛いって」


「わわっごめん! でも、急いで~」


 妖精の様子から緊急事態だと推測しクロは妖精を丁寧に顔から剥がすと体の向きを果樹園へと変え、エルフェリーンも視線をビスチェたちに向ける。


「じゃあ僕たちはアルーの所へ行くからね~」


 呼ばれた二人はアルーが住む果樹園近くへと移動し、残った者たちは家の中へと消えて行く。


「アルーに何かあったのか?」


 目の前を飛ぶ妖精に話を聞くと先を行く妖精は振り返り首を傾げる。


「わかんな~い」


「早く呼んできてって」


「アルーが焦ってたよ~少し面白かった。ねぇ~」


「ねぇ~」


 妖精たちが共感し笑い声を上げていると、こちらを見つめるアルーの姿が見え、焦っているのか若干の縦揺れをしている。


「やあ、僕たちを呼んでいると聞いたけど何かあったのかな?」


 近づきエルフェリーンが話し掛けるとアルーは棘のある蔦をウニウニと動かし口を開く。


「大変なの! 頭に声が響いて世界樹さまから神託があったのよ! 私みたいな若輩のアラクネによ! これってすごい事よね? ねぇ?」


 早口で捲し立てるアルーに神託と聞き顔を引き攣らせるクロ。


「世界樹の女神からの神託? 世界樹の女神は成樹祭に参加しているだろうから、それが関係しているのかな?」


「そうなの! 世界樹さまが言うには、エルカジールと呼ばれる人が近いうちにそっちへ行くかもしれないからエルフェリーンとクロは注意しなさい、だそうよ! エルカジールって誰かしらね!」


 テンション高く話すアルーに対して顔を引き攣らせるエルフェリーン。クロはフランとクランの料理に興味を持ったのか、それともビスチェの母であるキュロットが白ワインを広めたのが原因かと思案する。


「エルカジールとか……面倒事の臭いしかしないよ~はぁ……」


 大きなため息を吐くエルフェリーンに、クロはどんな人なのかと思い口を開く。


「あの、エルカジールさん? は、どんな人なのですか?」


「エルカジールは僕の妹さ。ギャンブルが大好きでことある毎にギャンブルを挑んで来る迷惑な奴かな……はぁ……後は自慢話が好きで珍しいものを手に入れると真っ先に僕の所へ自慢にくるんだぜ~

 ん? もしかしたら成樹祭で白ワインを手に入れて自慢しにくるのかも! くふふ、これはおちょくるチャンスじゃないか! こうしてはいられない! 準備をするぜ~」


 そう言葉を残し屋敷へと走り出すエルフェリーン。それはそれで面倒な事になったと大きくため息を吐くクロ、アルーは首を傾げながらも葉を大きく広げ日光浴を始めるのだった。






「いいかい、エルカジールが来た時は白ワインに驚くんだぜ~その後で飲みきれないほどの白ワインを登場させてマヌケ顔を晒してもらうぜ!」


 広いリビングではエルフェリーンがプチドッキリの計画を立て皆に説明し、皆はその話を聞きながらもアルーから呼ばれた理由は何だったのかとクロへ視線を向ける。


「師匠、順を追って説明したからドッキリの説明をしないと皆さんが首を傾げていますよ」


「ああ、そうだったね! 楽しくなって順番を間違えたよ~あのね――――と、いう訳なんだ! だから、エルカジールが自慢しに来たら白ワインを大量に用意して脅かそうぜ~七味たちが急に上から降って来ても驚くと思うぜ~」


「クロ先輩! どうせ驚かすのなら釣竿にコンニャクを用意すべきですよ! あと金盥かなだらい!」


「脅かすのなら大きな声とブレスがいいのだ!」


「あら、精霊にお願いして風を吹かせても驚くわよ」


「僕は脅かすのは苦手だけど……辛い料理とかも驚くと思います」


 続々と驚かす案が話されテンションを上げる一同。ただ、メリリだけは顔色を青く変え目が泳いでおり、それに気が付いたクロはアイテムボックスからペットボトルの水を取り出しメリリに声を掛ける。


「気分が悪そうですが大丈夫ですか?」


「は、はい……だ、大丈夫です……」


 そう口にしながら震える手でペットボトルを受け取るメリリに、クロは何かあるのかなと思いながらも本人が口にしたくないのだろうと理由は聞かず瞳を向ける。

 封を開けてゆっくりと一口水を含み飲むと落ち着いたのか、ふぅと息を吐き口を開くメリリ。


「エルカジール様には色々とお世話になった事がありまして……」


 俯きながら話すメリリに、このままドッキリを仕掛けても良いものかと思うクロ。


「ああ、そう言えばそろそろ田植えの時期ですね」


 話題を変えようとするクロにアイリーンが口を開く。


「田植えとかしたことないです! テレビでは見た事ありますが大変そうですよね」


「ああ、だから手伝いに行く予定でいるけど、ドランさんがそろそろ来る時期かなと」


「爺さまが来るのなら爺さまを驚かしてみたいのだ!」


「キュウキュウ~」


 話の流れからドランを驚かす事に決まり申し訳なく思うクロだったが、メリリの表情もいつものにこやかなものに戻りホッと胸を撫で下ろす。


「ドラン相手なら手加減はいらないぜ~ドラゴニュートは体が丈夫だからね~落とし穴とかも楽しいかもしれないぜ~」


「クロ先輩! ビリビリ椅子とか作れますか?」


 中々の無茶を言ってくるアイリーンにジト目を向けるが、ビリビリ椅子という聞きなれない単語に目を輝かせるルビーとエルフェリーン。


「ビリビリ椅子? それは何だい?」


「私も興味あります! 初めて聞きますが絶対に楽しいものですよね!」


「ビリビリ椅子は座ると電気が、雷が流れるかな? もちろん弱い威力ですからね。ドアノブを握った時にビリッと来る感じの威力です」


 静電気ぐらいの威力だと説明するアイリーンに興味を持った二人は「作ろうか」「作りましょう!」と口にして立ち上がり鍛冶場へと向かい、それを見送ったクロはアイリーンに向け口を開く。


「アイリーンが提案したんだからビリビリ椅子の試作テストは頑張ってな」


 その言葉に顔色を青くするアイリーン。他にも自身が提案したドッキリを思い出しキャロットも顔色を変えるのだった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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