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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十二章 七味たちと成樹祭
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シャロンと王族 成樹祭の終わり



 シャロンとメルフェルンはターベスト王国の王城にある王家が使うサロンにお邪魔していた。理由はハミル王女とアリル王女に今年の初めに生まれた新たな王族であるミミル王女の今後の教育方針と、サキュバニア帝国との繋がりを持ちたいという理由で王家のサロンに連れられたのだ。

 シャロン的には誕生祭をクロとまわりたかったが人の多さにあまり乗り気ではなく、降って湧いた王家からの依頼に承諾しクロたちとは別行動をしている。


「ミミルさまは本当に可愛らしいですね」


 カミュールが初めてお腹を痛め産んだ子はミミルと名付けられ乳母が抱く赤ちゃんを見つめ優しい笑みを浮かべるシャロン。アリル王女は初めてできた妹の存在が嬉しいのか姉として歌を聞かせ言葉を教えようと日々頑張っている。


「ええ、とても可愛いわね。でも、最初に話す言葉はきっとマヨになりそうで……」


 ハミル王女とアリル王女が歌うマヨの歌を思い出すシャロンは確かにと思いながらも、健康に育ってくれるのならそれでいいのかもしれないと自信を納得させる。ただ、国王であるルーデシスはパパと話して欲しいのか会話の最初に必ず「パパは」と付け多少家族からウザがられている。


「それでだ、パパは娘たちの教育方針に思う所があってな。サキュバニア帝国は女系が多いと聞き参考になればと思い来てもらった訳だが……パパとしてはハミルとアリルとミミルには立派な女性になってもらいたいのだ」


「確かにサキュバニア帝国の皇帝を含め僕以外はみんな女性です。教育方針とはか僕が言えたことではないですが長所を伸ばす方針だと思います。一姉さま、じゃなかったキャスリーンは皇帝の座を継ぎ政治を行い、キュアーゼは兵士として活躍しております。キョルシーはまだ幼いのであれですが、アリル王女と同じぐらいの年齢だと思います」


「そうなのですか! お友達になれるでしょうか?」


「キョルシーは甘えん坊だからアリル王女とは相性がいいかもしれませんね」


 シャロンの言葉に目を輝かせるアリル王女。面識のあるメルフェルンも同意見なようで何度も頷いている。


「ほぅ、それはパパも嬉しいぞ。サキュバニア帝国へは陸路でひと月ほどだったか? 使者を送り更なる友好関係を結ぶべきだな」


「はい、友好関係になったらキュアーゼさまと遊べます!」


「あらあら、アリルったら。そうね、その時はカリフェルさまのお話もお聞きしたいわ。サキュバニア帝国を数百年間安泰させた手腕と考え方を学ばせてもらいましょう」


「うむ、パパも賛成だな。ダリルに良き刺激となろう」


「私は使者にマヨを持って行くよう進言します。マヨがあれば世界が平和になり友好関係も築けるはずです! 作り方も教え、養鶏の素晴らしさも教えれば、長きに渡り同盟国となれるはずです!」


 ハミル王女の言葉に苦笑いを浮かべる王族たち。


「マヨは僕も好きですよ。母さんやキョルシーも好きでしたから作り方を教われば喜ぶかもしれませんね」


 シャロンの言葉に目を見開くハミル王女。


「も、もう、作り方を知っておられるとは……サキュバニア帝国恐るべし……」


 クロと共に何度かサキュバニア帝国を訪れた際にお土産としてアルコールやお菓子に紛れマヨや醤油などの調味料もプレゼントしており、尚且つカリフェルが錬金工房『草原の若葉』を訪れた際には常用している事もありその味を知っているのである。


「養鶏はしていませんが同盟関係にあるオークの国では畜産が行われておりますし、最近では魔鉄を使った農具の販売をしておりますね。そのせいでカイザール帝国が滅びましたが……」


 一瞬顔に影が差すシャロン。隣に立ち同じように顔を伏せるメルフェルン。


「うむ、パパもその話は聞いている。魔鉄は魔力を通しやすく武器としては一級品だからな。力を持った者が暴走するのはよくある話だ……その力を制御してこそ初めて本物だといえよう」


 良い話をしているのだが会話の最初にパパと付けることで台無しにする国王。王妃たちは苦笑いである。


「母さんは今、エルカイ国で宰相? のような仕事をしているそうです。エルフェリーンさまにお願いされたのと、魔鉄をキャスリーン姉さまが売った事への責任を取っているとかで……国が安定するまで数年は掛かると……」


「パパも貴族制度を廃止した事には驚いたが州知事という新たな役職が各地域を統治しているそうだな。トップも国王ではなく議員と呼ばれ、元王族のゼリールに商業ギルドに貴族ではない者から選ばれた市民の代表が話し合うそうだな」


「トップを一人に決めず話し合いで解決する方針だそうです。その会議も多くの市民たちに聞こえるよう専用の会場で行うそうです。賄賂など徹底的に排除したクリーンな政治が目的だとかで……」


「うむ、パパも御用商人などから耳にしたが……可能なのか疑問であるな……」


「政治の世界はどうしても多くの金貨が動きますから……」


「必要悪とは申しませんが、裏でそれらを纏めるのも王族の務めと……」


 王妃たちが眉間に皺を寄せ新たな国家の先を心配する。王政を取っていない国もあるが殆どの国は国王、もしくは教皇などの宗教的なトップの元で政治を行っている。それを考えると三名のトップが話し合いで決める国というのは珍しく、まわりの国からは数年もてばいい方だろうと思われていたりもする。が、それを影で支えるカリフェルの努力と支える一人のメイドの頑張りによりエルカイ王国は商業国家として発展を続ける事となる。


「そういえばミミル王女のお披露目は行わないのでしょうか?」


「うむ、パパも早く行いたいのだがミミルの事を考え流行り病が過ぎた頃にすべきだと宰相に止められていてな」


「新たな王族の誕生には多くの人が城の前に集まりますから、そういった面も考えなければなりませんね」


「ダリルやハミルの時も流行り病が終息してからでしたわ。エルフェリーンさまのお陰で流行り病が流行り病ではなくなりつつありますが注意はすべきです」


 王妃たちもその意見に賛成なようで優しい瞳を向け、寝息を立てるミミル。


「どの子も健やかに育って欲しいものであるな……パパはそう思うぞ」


 最期に付け足したようにパパと付ける国王にシャロンも苦笑いを浮かべるのであった。










「今年の成樹祭は楽しかったね~美味しいお酒と料理に出会えたし、皆も元気で良かったよ~」


「そうですね。エルフたちが健康であればこれからも世界樹を管理し、そのお陰で私も葉を広げられるというものです。これからも管理を宜しくお願い致しますね」


 一方、エルカジールと世界樹の女神が話を追えるとエルフたちは涙を流しながら咽び泣き自身が信仰する神と、神に等しい存在の言葉を胸に焼き付ける。


「エルカジールは国に戻るのですか?」


「ん? 私は少し旅に出ようかと思ってねぇ~君たちが私に教えたくない事もあるようだから詳しくは言わないけどさ~」


 質問を疑問で終わらせるエルカジールの言葉に世界樹の女神の眉がピクリと反応し、事情を知るランクスやキュロットの顔が曇り、シュミーズはあからさまに視線を外す。


「それは私にも教えられないと?」


「ふふふん、内緒だね~神から妨害されるとか、そんなのはギャンブルじゃなくなるからね。チップを払わない客とはギャンブルをしない事にしているからね~」


 自身が最も得意とするギャンブルに例えて話し笑みを浮かべるエルカジール。


「あまり派手に動いてあの方の不孝を買わないで下さいね」


 目を細め警告する世界樹の女神シソリンヌ。本当に理解しているのか手を振りながらその場を離れるエルカジール。そんなエルカジールの後を追うシュミーズは困った事になったと思いながらも、心の底ではまた白ワインが飲めると思案するのであった。







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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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