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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十二章 七味たちと成樹祭
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天界で宴会を



 教会の中へと案内されたクロたちはいつもの様に二階へと通され、貴族用の祭壇のある一室へと入る。すると、いつもの様に床に魔法陣が現れ足を踏み入れた瞬間に転移し、広く白い空間には長いテーブルとそれに会うだけの多くの椅子が並んでいた。


「ん? いつもの炬燵部屋じゃないのか?」


 炬燵のある女神ベステルの私室を思い浮かべていたクロは思わず呟き、後に続いて現れたビスチェやシャロンにメルフェルンも辺りをキョロキョロと見渡し、キャロットと白亜は長いテーブルに興味を持ったのか走り出す。


「これならいっぱい座れるのだ!」


「キュウキュウ~」


 走り出した二人に同じくテンションを上げて尻尾を振る小雪がシャロンの手から飛び降りると華麗な着地を決め走り出す。


「小雪ちゃんはずっといい子にしていましたからいいストレス発散になりますね」


 クロの横に並び走る小雪を微笑ましく見つめるシャロン。その後ろではクロの裾をクイクイと引くロザリア。


「クロよ。これはいったい何なのじゃ? 先ほど前は教会におったのに転移したかのような……転移なのじゃ? どうなのじゃ?」


 若干パニックを起こしているのかクイクイと引く力が強くなりバランスを崩しそうになるクロは下半身に力を入れて振り向き口を開く。


「ロザリアさん、力が強いですよ」


「う、うむ、すまんのじゃ。じゃが、ここはどこなのじゃ? 教会とは違う神聖な空気に満ちておる気がするのじゃが……」


「ここは天界の女神ベステルさまの私室? 教会へ行くと何故だが毎回天界へ招待されて……」


 クロの言葉に口をあんぐりと開けるロザリア。同じように驚いている教皇と聖騎士の数名。聖女レイチェルは何故だかドヤ顔を浮かべ、ハミル王女とアリル王女は付いてきている近衛騎士に状況を伝え、アリル王女の専属メイドであるアルベルタもその説明に参加し口を開く。


「クロさまと行動していればこのような事が起こります。アリルの専属メイドが前に話したでしょう?」


「私はここへ来るのは二回目ですが、前とは違う場所のようです」


「あら、今日は大人数でやって来たわね」


 各所で説明していると女神ベステルが姿を現し、その後ろには愛の女神フウリンと叡智の女神ウィキールに見慣れない緑色の髪をした女神の姿があり聖女と教皇に聖騎士たちは膝を折り跪き、近衛騎士は驚き目を見開き、ロザリアはクロの背中に隠れるように抱き着き震える。


「はい、また来ました!」


 アリル王女の元気な返事に愛の女神フウリンが走り抱き上げるとキャッキャしながら喜ぶアリル王女。ハミル王女はカーテシーをして挨拶をし、アルベルタも同じようにカーテシーをしてドヤ顔を浮かべる。


「アリルちゃんは可愛いですねぇ~このままお家に持ち帰りたいですぅ」


 犯罪の香りがし始めた所で叡智の女神ウィキールが愛の女神フウリンへ軽いチョップが入り頭を抑える誘拐犯。介抱されたアリル王女は頭を抑えるフウリンの頭部を優しく撫で笑みを浮かべる。


「ほらほら、そんな所で片膝付いてると邪魔だから席に付きなさい。クロが美味しい料理を振舞ってくれるわよ」


 急な無茶振りをする女神ベステルにクロはやっぱり料理を振舞う事になるのかと思いながら頭の中で何を作ろうか思案し、教皇たちは急ぎ立ち上がるとオロオロとどの席に座ればいいかしているとハミル王女が上座へ手を引き案内し顔を引き攣らせる。


「私の様なものが上座に座るのは不敬ではないでしょうか」


「女神ベステルさまはそのような細かい事を気にしませんので大丈夫ですわ」


「ええ、気にしないから誕生日が近い教皇がお誕生日席でも構わないわよ。私はクロが作る料理で一杯飲みたいだけだから」


 そういうと手を払いお誕生日席を用意する女神ベステル。教皇は恐る恐るその席に腰を下ろすと四席空けてハミル王女が腰を下ろしその対面に聖女が掛け、開いていた上座の席に女神ベステルやウィキールたちが腰を下ろし、考えに耽っているクロの裾をクイクイするロザリア。


「わ、我も座った方がいいのかのう?」


「うふふ、ロザリアさんはこちらの席にお座りください」


 メリリに促されクロから離れ席に付き、その近くにシャロンやキャロットが腰を下ろし、下座には聖騎士や近衛騎士たちが腰を下ろす。


「人数がいるからオードブル的なものと、前に採った山菜があるから天ぷらかな……また、調理場を借りても構いませんか?」


「好きに使って構わないわよ。助手に料理の女神であるソルティーラを付けるから料理とお酒は任せるわね」


 そう口にする女神ベステル。ドアが開きコック服を身にまとった女性が現れ、クロは面識があり軽く挨拶を交わしこの場を後にする。


「何というか、クロは神さまたちを相手に動じぬのじゃな……」


「クロは良い意味でも悪い意味でもマイペースなのよね。何度かここで料理を振舞って慣れているといえばいいのかしら?」


「我は慣れる気がせんのじゃが……」


「うふふ、私も実は初めてここへ来ますが、何度かお話を聞き憧れておりました」


 ビスチェはロザリアにクロが何度もここで料理を振舞っている事を伝え、メリリはその話を何度か聞いており実際に体験できることを喜び、聖騎士や近衛騎士たちはガチガチに緊張しながら椅子に座り姿勢を正す。


「そちらの騎士たちもリラックスをするといい。キャロットたちの様に走り回るほどリラックスをしろとは言わないが、フルフェイスの兜は脱いでくれないとこれから運ばれてくる食事の邪魔になるぞ」


 やんわりと走り回るキャロットと白亜に小雪を注意し、騎士たちの緊張を解そうと口にする叡智の女神ウィキール。愛の女神フウリンは椅子に座り、その日あの上にアリル王女を乗せてご満悦である。


「ビスチェも大きくなりましたね。ペプチの森の長の娘としてエルフェリーンに仕えている事は耳にしていましたが大きく育ちましたね」


 緑の髪をした世界樹の精霊であり神でもある世界樹の女神はビスチェに微笑み、ビスチェは成樹祭の際に遠目にしたその姿を思い出し固まり、ロザリアはエルフが信仰する世界樹神だと気が付いたのかビスチェの肩を揺らし正気を取り戻させる。


「固まるでない。正気を保つのじゃ」


「あらあら、成樹祭では活発な姿を見せてくれましたが……もう料理が運ばれてきましたね」


 ドアが開き現れたのは料理の女神ソルティーラであり手には大皿を持ち、まわりには天使が飛びその手にも大皿などを持ちテーブルに料理が運び込まれる。大皿にはオードブルらしいローストビーフやポテトフライに生春巻きや串に刺したトマトやオリーブにハムを使ったピンチョスなどが色鮮やかに盛り付けられている。


「お酒はまだかしらね~」


 そう口にする女神ベステルに料理の女神ソルティーラは急ぎ厨房へ戻り多くの酒瓶を抱えて戻り、天使たちも背負うタイプのビールサーバーを背負って現れ「ビールはいりませんか~」と声に出して宙を飛び回る。


「ビールサーバーとか野球場の売り子みたいね。一杯貰おうかしら」


「私も頂こう」


 女神ベステルと叡智の女神ウィキールに天使たちがビールを用意すると受け取り「かんぱ~い」と声を上げ、まだ酒を選んでいた教皇や騎士たちは慌ててグラスに酒を入れると同じように掲げる。


 神からの緩いパワハラを受けながらもロザリアやシャロンは飲みなれている白ワインやウイスキーを口にし、教皇たちや騎士たちも緊張しながら赤ワインを口にし、遅れてやってきたアイリーンは七味たちと共に席に付くとオードブルを口にしながらノンアルコールのジュースをアイテムボックスから取り出すと七味たちに配り、愛の女神フウリンはアリル王女とハミル王女の為にアイリーンからジュースを分けて貰い二人のカップに注ぎ入れる。


「姉ちゃん、ありがと~」


 アリル王女のお礼に、更にメロメロになる愛の女神フウリンなのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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