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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十二章 七味たちと成樹祭
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ポーション作りと食後の無駄話



「ふぅ……これで完成ね。よくやったわ!」


 ビスチェの言葉に安堵の表情を浮かべるクロ。錬金釜には魔力反応の光が治まった緑色の液体があり、ビスチェが完成といった事でポーション作りの終わりを意味する。まだ、瓶詰の工程と品質保持の魔術を施さなくてはならないが九割方完成していると言ってもいいだろう。


 ポーション作りは薬草を潰す所から始まり、潰した薬草を錬金釜に入れ魔力で作られた水か聖水を使用し混ぜ続ける。この時に魔力を込めながら混ぜ続けるのだが、錬金釜は魔力に反応しその力を加速させ錬成させる。反応が早く出過ぎてしまうとポーションの出来は悪くなり、逆に遅くても品質は劣化する。光の強さを見ながら魔力反応させポーションに適した魔力を注ぎつつ撹拌しなくてはならないのである。


「やっと一人でポーションが作れたよ……はぁ……」


 大きく息を吐き出すクロ。


「あら、私が細かく助言したわ。それがなかったら今頃は七味たちが手伝った薬草はただの畑の肥料になっていたわよ。クロがひとりでポーションを作ろうだなんて五十年は早いわね!」


 その言葉にクロは確かにと思いながらも、五十年は言い過ぎだろうと自身の老人姿を思いながら口にする。


「五十年は言い過ぎだろ……」


「そうね。真面目に毎日練習すれば五年と掛からず一人で作れるようになるかもね」


 微笑みながら話すビスチェに思わず心音が高鳴る。ビスチェも弟弟子がほぼ一人でのポーション作りを成功させ嬉しいのだろう。


「そ、そうだな……はぁ……それにしても疲れたよ。一定の魔力を流し続けるのは集中力がいるよな……」


「それはそうよ。私はこれで魔力操作を覚えたぐらいだもの。クロは魔力操作が得意だからもっと余裕があるかと思っていたけど、以外だわ」


「俺の魔力操作は本当の意味での魔量操作だからな。こうやってシールドを出して移動させるのとかは得意だぞ」


 五センチ角のシールドを三枚発生させたクロは自身の頭上に浮かせクルクルと回転させドローンレースのような軌道を描き動かせてみせる。


「本当に変な所で器用よね……」


「死者のダンジョンじゃこうやってシールドを囮にして逃げていたからな……はぁ、今思い出すだけでも恐怖が蘇ってくる……」


「それよりも、早く瓶に詰めるわよ。そこに残った薬草のカスは灰と混ぜて畑に撒くから捨てないようにね」


「はいよ。ポーションの瓶に入れて蓋をすると――――」


 作業は続き一時間ほどかけて瓶に移し終えるとその場に座り一息付くクロ。隣ではビスチェが新たな錬成をしており集中して魔力を流しながら撹拌している。薄っすらと輝くそれを見つめるビスチェの集中する姿を眺めていると魔力反応が治まり、大きく息を吐くビスチェ。


「ふぅ……これでよしっと! こっちは中級ポーションね。材料は季節によって違うけど、クロにはまだまだ早いわね」


 ドヤ顔を浮かべるビスチェ。クロもそこは理解しているのか何度か頷き、自身が作ったポーションよりも濃い緑をするそれを見つめる。


「やっぱり綺麗だよな……」


 呟くように口にするクロに対してビスチェはドヤ顔が真っ赤に染まり目をぱちくりとさせ焦ったように口を開く。


「な、何を言ってるのよ!」


「ほら、濃い緑色がエメラルドのような色でさ。精霊も近くにいるのかキラキラ光って綺麗だなって……」


 その言葉にビスチェは錬金釜に視線を戻すと風の精霊が嬉しそうに飛び回る姿が視界に入り赤かった表情はすっかり元へと戻り、無表情で「そうね」と口にするのであった。








 昼食を終えた者たちは食後のお茶を飲みながら食休みという名の雑談をしていた。


「ロザリアさんはもう箸をマスターしたのですねぇ」


「うむ、マスターしたとはまだ言えんが、使えるようにはなったのじゃ。アイリーンやクロのように魚の骨を一本ずつ取るのはまだ先じゃな」


 右手をチョキチョキしながら話すロザリア。隠れて練習していた事もあり褒められて嬉しいのかチョキチョキのスピードが増して行く。


「私も箸の使い方はある程度マスターした心算ですが、小さな魚の骨を器用にとる姿には驚きました」


「僕もクロさんに魚の骨を取ってとお願いした時は器用に外してくれて……」


「麺類を食べる時はフォークよりも箸の方が便利ね。特にそばやうどんにラーメンとかはフォークじゃ食べ辛いわ」


「キュウキュウ~」


「白亜さまも箸が上手に使えると言っているのだ! 私も前よりも使えるようになってきたのだ!」


 白亜の言葉を通訳するキャロットの箸の握りは、親指と人差し指の間に二本の箸を入れ握り込むストロングスタイルであり基本刺すという食べ方である。


「うふふ、箸の色が人によって違いのもいいですよね」


「箸先にも工夫されているのか滑らないわ」


「箸の模様も綺麗ですよね。シンプルな物に花が散りばめられている物に貝を使っている綺麗な模様もありました」


「箸を置く小物も可愛いのじゃ。我のは小さな蝙蝠の形をしておるのじゃ」


「うふふ、私は蛇の形をしていますぅ」


「私も蜘蛛の形にして欲しいですね~とはいえ、箸置きを使うのも珍しいですよ~一般家庭で箸置きを使う家なんてほぼありませんからね~」


「そうなの? 私はてっきりクロの世界の常識なのかと思っていたけど……」


「クロ先輩はまめですからね~料理だってこだわって作っていますし、洗濯だって浄化魔法一発で終わらせず日に当てていますからね~」


「その方が着ている時に気持ちがいいだろ?」


 参加していなかったクロの声に一斉に振り向く乙女たち。


「それはありますね~浄化魔法で汗臭さや汚れは落ちますが、ふっくら感がないですから……」


「下着関係は私が干しておりますのである意味安心です」


 メルフェルンの言葉に変な疑いが掛けられないのであればそれでいいよ、と心の中で声にするクロ。


「僕も下着は自室に干していますし、下着ぐらいは自分で洗えますけど……」


「それはいけません。もし宜しければ私が責任をもって洗い干しますが」


 メルフェルンが鼻の穴を大きくしながら宣言し顔を引き攣らせるシャロン。


「それよりもじゃ、クロよ。クロの家では箸置きを使っておったのじゃろう?」


「いえ、使っていませんね。箸は家族全員のを箸立てに入れていましたね。ほら、人によっては嫌がったりするじゃないですか」


 その言葉に首を傾げるロザリア。


「そういうものかの?」


 ロザリアは隣に座るメリリに問いかけるがメリリも首を傾げ、キャロットやビスチェも嫌がっている様子はなく首を傾げる。


「間違えて他の人の箸を使う事がないのは良い事ではないでしょう……か?」


 何故か少しの間と最後を疑問形にするメルフェルン。


「いえ、クロさま。これは提案なのですがクロさまの負担を減らす為にも、箸入れに入れたままテーブルに置くのはどうでしょうか? そうすれば少しでもクロさまが楽ができると思うのですが……」


 メルフェルンの言葉にクロが口を開く。


「いえいえ、箸を並べているのはメリリさんやメルフェルンさんですよね? それに負担とかは気にしなくても大丈夫ですよ」


 クロの言葉に目を見開き体を震わせるメルフェルンはゆっくりと口を開く。


「そ、それは……そうでしたね……私としたことが……これでは間違えてシャロンさまの箸を使う事ができないではないですか………………

 故意に間違えてはメイドとしての信用が落ちてしまいます………………私はいったいどうしたら………………」


 両手で頭を押さえ驚愕しているメルフェルンに対してクロは思う。


 不審者はメイドを辞めるべきだと……






 大分楽になりました……皆さまも体調不良にはお気を付けください。


 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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