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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十一章 春のダンジョン戦争
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アイリーンの里帰りと新たな出会い



 ランチをしながら一行は自然界の厳しさを再認識する事となる。大地の亀裂呼ばれたら渓谷には大きな蜘蛛が多く巣を張っているのだが、その蜘蛛を餌とする飛竜種や大型の鳥の魔物などが襲来し怪獣映画さながらのバトルを繰り広げているのだ。


「飛竜は爪や嘴の一撃が強力だけど羽を狙われたら不利みたいね」


「うむ、蜘蛛によっても戦い方が違うのじゃな。巣を張る蜘蛛に、糸を飛ばす蜘蛛。あっちは飛びついて噛みついたのじゃ」


「一歩間違えれば私たちもランチになっていたのですね……」


 自然界の厳しさを見つめ顔を引き攣らせるシャロン。メルフェルンやルビーも顔を引き攣らせ目の前で戦う蜘蛛VS魔物の光景にドン引きであった。


「キュウキュウ……」


「大丈夫なのだ! 白亜さまは私が守るのだ!」


 自信満々に口にするキャロットだが、白亜はランチの片づけをするクロの足にしがみ付き体を震わせている。


「ん? 怖いのなら女神の小部屋に入って待つか?」


 足にしがみ付きコクコクと頭を縦に振る白亜。クロは女神の小部屋に通じる入口を出現させると白亜が一番に中へと入り、ルビーとメルフェルンにシャロンが逃げるように後へと続く。


≪あの光景は懐かしいですね~故郷に帰ってきた気がします≫


 怪獣映画のような光景を見ながら昔を懐かしむような表情を浮かべるアイリーン。一歩間違えたら隣で死が待ち受けるような世界で生きてきたのだろう。


「アイリーンの強さの根源が分かった気がするのじゃ……」


「確かに強くならないと生きては行けない世界で生活していたのね……」


 ロザリアとビスチェがアイリーンを見つめ言葉を漏らし、クロもアイリーンが蜘蛛の魔物として転生した当時は大変だったのだと知り、自分は死者のダンジョンで苦労した経験からか、転移者や転生者は必ず苦労するのかと思案する。


≪確かに戦いに明け暮れましたがみんな仲間思いで良い蜘蛛たちですよ~ほら、こっちに気が付いた蜘蛛が手を振っていますね~≫


 渓谷に大きな巣を張る一匹の大きな蜘蛛がこちらに右手を振っており、魔化したアイリーンはそれに応えるように手を振り返す。すると、他にも多くの蜘蛛が手を振り始め、魔物にも仲間意識があるのかと驚愕するロザリア。


「これは驚いたのじゃ……魔物同士が共闘し仲間意識があるとは驚きなのじゃ……」


「あら、オオカミ型の魔物とかには多くあるじゃない。群れを成して生活し狩りをするのよ」


「うむ、それは知っておるのじゃ。現にフェンリルなどはそうであろう。じゃが、虫型の魔物が仲間意識を持ち……ん? アイリーンはアラクネ種という新たな人類じゃろ? それなのに蜘蛛の魔物と……」


≪昔の知り合いかもしれませんね~魔物は進化しるので外見が変わるので何とも言えませんが、手を振ってくれるのは仲間だと認識しているからですね~≫


 手を振っていたアイリーンが結界から一歩出ると手乗りサイズの小さな蜘蛛たちがわらわらと集まり、皆片手を上げて挨拶をしアイリーンもそれに応えて片手を上げる。


「ギギギギギギ」


 鳴き声を上げる子蜘蛛たちにアイリーンは何と言っているのか理解しているようで何度か頷き糸を空に向けて放出すると高く舞い上がり、空を自由に走り回る姿に子蜘蛛たちは歓声を上げているのか両手を上げ左右に振り「ギギギ」と叫ぶ。


≪皆さん喜んでくれて嬉しいですよ~≫


 糸にぶら下がり手を振るアイリーンはさながらアイドルようで、子蜘蛛たちからの歓声を受け盛り上がるライブ会場だなと思うクロ。


「うむ……何とも不思議な光景なのじゃ……」


「アイリーンも楽しそうで良かったよ~この姿を見ただけでも付いてきた良かったぜ~」


 ロザリアは首を傾げ、エルフェリーンは素直に歓迎されているアイリーンの姿を喜び笑みを浮かべる。


「深く考えてはダメね。アイリーンは蜘蛛たちから尊敬されているのよ」


 そう結論付けるビスチェは仁王立ちでなぜかドヤ顔である。


≪いや~故郷に凱旋しましたが歓迎ムードで良かったです~≫


 文字を浮かべて降りてきたアイリーンは数匹の子蜘蛛を手に乗せ頭を撫でる。撫でられている子蜘蛛は気持ちがいいのかお尻を揺らしうっとりとしているように見えるのだが、それを嫉妬したのか小雪が吠え子蜘蛛はさっと散り、今度は足元に走ってきた小雪を抱き上げるとその頭を優しく撫でる。


「小雪も撫でますからね~」


「わふっ!」


 撫でられている小雪は当然だと言わんばかりにひと鳴きし尻尾を揺らす。


「大きな蜘蛛がこっちに来るのだ!」


 アイリーンに気を取られていた事もありキャロットの叫びに慌てて警戒をするクロ。ロザリアやビスチェにエルフェリーンは武器を手に取り構えるが、アイリーンが手で制し文字を浮かべる。


≪私が交渉しますから攻撃しないで下さいね~≫


 谷からゆっくりと姿を見せた蜘蛛は大きく黒光りしたメタリックなボディーはビップカーを思わせるほどであり、谷から上がりきると子蜘蛛たちと同じように片手を上げ、アイリーンも片手を上げると糸を飛ばし何やら呟く。


「ギギギギギ、ギギギギギギ、ギギ、ギギギギ」


 和訳「私はここで育った蜘蛛です。神さまにアラクネ種と呼ばれる新しい亜人種に進化しましたので挨拶に参りました」


 糸を使い会話を試みるアイリーンに巨大な蜘蛛は理解しているのか数度頷くと、声ではない声を発する。


『そうか、よく帰ってきた。歓迎しよう』


 その声は頭の中に直接響いているようでアイリーン以外の者たちも聞こえ、フェンリルたちの長が使っていた念話を思い出すクロ。


「これって念話? その割には確りと内容が伝わるな」


 フェンリルの長が使っていた念話は単語を送ってくるようなもので文章として成立してはいなかったが、目の前の巨大な蜘蛛からは文章で送られ意味も理解しやすく感心するクロ。


「これは驚いたね! この蜘蛛さんは言語をしっかりと理解しているよ! 魔力も多そうだし蜘蛛たちをまとめている存在なのかもしれないね!」


「うむ、蜘蛛たちをまとめているのじゃろう。もうただの魔物ではなく社会を作っているのやもしれん……」


 エルフェリーンとロザリアが感心したのか口を開きアイリーンはゆっくりと近づくと手を差し出し、巨大な蜘蛛も同じように前足を差し出すとそれに触れ、握手を交わすアイリーンと巨大蜘蛛。


「凄いのだ! アイリーンは蜘蛛と仲良くなったのだ!」


「うふふ、蜘蛛同士で通じるものがあるのかもしれませんね」


 握手を交わす姿に場の空気が和み子蜘蛛たちも両手を上げお尻を揺らし、小雪だけが唸り声を上げるがその尻尾はペタンと下がり目の前の巨大な蜘蛛に恐怖しているのだろう。


「大丈夫ですよ~蜘蛛さんたちは仲間思いですからね~」


 握手を終えたアイリーンは唸り声を上げる小雪を撫でて宥め、小雪も理解したのか唸り声を止め数度尻尾を振るい巨大な蜘蛛へと向き直る。


『我々は無闇に襲ったりはしない。生きるために狩りをするぐらいだ。幼い狼よりも飛竜やロックバードの方が食べ甲斐があるというものだ』


 巨大な蜘蛛から念話が送られ、そりゃそうだよなと思うクロ。他の者たちも巨大な蜘蛛の体格を見て頷き、小雪だけは身を震わせアイリーンに撫でられ続けるのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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