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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十一章 春のダンジョン戦争
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ダンジョンへ行く準備は入念に



 朝食を済ませたクロはキュロットとクランとフランにビスチェ。それに加え仏頂面をするランクスを含めた六人でキッチンカウンターに座り成樹祭のメニューを考えていた。

 他の者たちはアイリーンと一緒に外に出て野営のトレーニングを行っておりアルラウネのアルーの近くにテントを張っている。


「簡素なテントでシャロンさま向きではありませんね……」


「そうかな。手触りは良いし、水捌けも良さそうだよ。これはアイリーンさんの糸で作られていますよね?」


 シャロンが完成したテントを撫でながら声を掛けるとアイリーンはニコニコと微笑みながら文字を浮かべる。


≪流石、シャロンくん! お目が高いですね~このテントは私が丹精込めて編んだ糸で布を作り、部品はクロ先輩から参考に頂いたテントを分解してルビーさんに作っていただきました~ジッパーとかは大変なのでクロ先輩にお願いしましたが基本は手作りです! 火には弱いですが、耐水と防塵に防刃に優れています!≫


 ドヤ顔をしながらテントの説明を文字にして浮かせるアイリーン。


「確かに手触りはシルクスパイダーと遜色ないです……」


「うむ、これはテントにするよりも服を作った方が良かったのではないかと思うほどなのじゃ」


「部品作りは大変でしたがテントの部品だったのですね」


 メルフェルンが顔を歪めながらテントの手触りを褒め、ロザリアは超が付くほどの高級な素材を無駄に使っていることを指摘し、ルビーは部品作りでの苦労が報われた思いを噛み締める。ちなみにキャロットは骨組みを作り終えた段階でテント作りに飽き、白亜と一緒に果樹園近くで春積みのキイチゴを口にして酸味のある甘さに満足気な表情を浮かべている。


「前にも見たがダンジョン内では安全地帯で毛皮を敷いてごろ寝する事はあっても、小さな家の様な個室を作るとは驚きなのじゃ」


「王都のダンジョンの時にはもっと安っぽい感じのテントでしたよね。あれにも驚きましたが、こちらは手触りが良く何だか高級感があっていいですね」


「うふふ、冬は炬燵。夏場はテントで生活するのもいいかもしれませんねぇ」


 メリリにも気にったのか中に入り顔だけ出して会話に加わる。


≪気に入っていただけたのなら良かったです。これは後で商業ギルドにでも作り方を売って利益を出すのもいいですね~お金持ちまっしぐらです!≫


「うむ、確実に売れると思うのじゃ。特に女性の冒険者は喜ぶじゃろう」


 ロザリアが言うようにダンジョン探索をする女性冒険者は危険と隣り合わせである。なかには同じパーティーメンバーに襲われる事もあり、そういった危険を感じ女性だけでパーティーを組む者も少なくはないのである。


「これに魔物除けを付ければ問題ないですかね」


「うむ、魔物の嫌うハーブの香りや、血の匂いを誤魔化す薬剤などもあると便利なのじゃ」


「うふふ、ダンジョンの安全地帯ならそのままでも問題ありませんが、自然が相手では虫よけなども必要ですね。本気で虫対策を行うのであれば泥なども有効ですが、あれはもうしたくありません……」


 何やらトラウマがあるのか死んだ目をして下を向くメリリに深くは追及せず、文字を浮かべるアイリーン。


≪今度行くダンジョンは普通のダンジョンとは違い自然にある魔素の強い洞窟です。クロ先輩にお願いしてヴァルさんに聞いてきて頂いたのですが、ダンジョン神さまの管轄であるダンジョンとは違う天然ものなので注意が必要ですよ。基本的には安全地帯は皆無ですから≫


 浮かぶ文字を見つめだんだんと顔を青ざめさせるルビー。ロザリアも眉間に深い皺を作り、シャロンは数歩後退る。


「それは危険じゃ……」


≪もちろん危険です! ですが、ダンジョンとはそもそも危険な場所ですし、私が生まれた洞窟なら道案内もできます! もしかしたら兄妹たちにも会えるかもしれませんし、運が良ければ仲間になってもらえるかもしれません! 私が記憶している限りクリスタル状の魔石? や、発光する石も多くありましたから、何らかの鉱石が多く眠っているかもしれませんよ≫


 青ざめていた顔色が戻りホクホク顔を浮かべるルビー。ロザリアやシャロンは相変わらずだが、ドワーフである彼女は珍しい鉱石というだけでもテンションが上がるというものである。


「発光する鉱石は蛍石でしょうか? それとも太陽石? 精霊銀とかも精霊が集まり光ると聞きます! クリスタル状の魔石は円環石や宝石の類かもしれませんね!」


「塩なども柱状の結晶を作る事があるのじゃ」


「うふふ、クリスタルは種類も多いですから興味は沸きますが……」


「し、塩ではないと思いたいです……ね……」


≪塩ではないですよ~齧っても味がしませんでしたからね~≫


 肩を落としたルビーに文字を浮かべるアイリーン。すると落ちた肩も上がりキラキラとした瞳を向ける。


≪話はこれぐらいにして、次はテントの片づけ方ですね≫


 キラキラ眩しい瞳を放置してテントの片づけるアイリーン。片づけ方といっても先ほどとは逆にするだけであり特に注意する事はないのだが、折り畳み方には注意が必要でそこを重点的に説明しながら綺麗に袋に入れアイテムバックへと収納する。


「うむ、これは中々難しいのじゃ」


「慣れが必要ですね……」


「ゆっくりと押しながらやればふくらみがなくなりますね」


 シャロンは中の空気を抜きながら畳んだおかげかスムーズに片付ける事ができ笑顔で作業を終わらせ、他の者たちも同じように空気を抜きながら畳みテントの収納を終わらせる。


≪食事はクロ先輩にお願いするとして、あとはダンジョンでの注意事項とかですかね?≫


 隣にいるロザリアへと視線を向けるアイリーン。頼られたロザリアも満更ではない様子で口を開く。


「うむ、今度行く場所はダンジョンとは違うが、基本ダンジョンと変わらんじゃろうから探索するにせよ常に緊張感を持ち油断せぬことじゃな。一瞬の油断で仲間を失う事もあるのがダンジョンじゃ。自身が生き残ってもその後悔は一生死ぬまで続くじゃろうからな。常にまわりに気を配り危険だと判断したらすぐに引き返すのも必要なのじゃ。生きてさえいればまた挑戦はできるのじゃ」


 仁王立ちで話し終えると良い事言った感を出すロザリアにまわりからは拍手が起き、メリリも何度も頷きながら細くする。


「前方を注意するのはもちろんですが、後方は一番危険です。不意に魔物が襲って来る時は頭上か後方が多いので最後尾を歩く方は盾を持つ事をお勧めします。一本道だけではないので必ず分岐がある時は後方確認をして帰りの風景を記憶しておくことも重要です。分かれ道などには目印などをするのも効果的ですね。

 他には使う武器はできる限りコンパクトに振る練習などもしておくとよいでしょう。狭い所で襲われては普段の動きをする事も出来ませんから」


 うふふと微笑みながら補足し終えたメリリ。ロザリアよりも内容のある話を真剣に耳を傾けた一同は、ダンジョンの事は今度からメリリの話を聞くようにしようと心に決める。


≪以前、ルビーさんはひとりでダンジョンに潜っていましたよね?≫


「はい、低層階が中心でした。鉱物を持ち帰って叔父さんの鍛冶屋を手伝うぐらいでしたけど……私から言えることは洞窟内で試作品を使わないことです! 私はアレで死にかけました……」


 クロたちとの出会いを思い出しながら自身の放った爆薬で吹き飛ばされ瀕死の体験を語りシャロン以外を引かせ、シャロンはというとルビーを助けたクロにひとり尊敬の念を抱くのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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