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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第二章 預かりモノと復讐者
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魔力枯渇



「幻術も解けていましたしぃ、みなさんで本を読みぃ、クロさんと子龍だけが掃除をしていてぇ何があったのかと思いましたよぉ~」


「はははは、女神だって色々あるって、それよりもお茶をお願いね。いや~久しぶりに綺麗になった部屋を見るけど、ゴミが無くなると寂しくなるわね」


「よくそんな事を自身の信者の前で堂々と言えるな……」


三人の女神を前に綺麗になったテーブルには紅茶が置かれ、お茶受けにはクロが魔力創造したかきの種とポテチが広がる。


「では、改めて自己紹介ね。私が最高神であり創造を司るベステルよ。こっちがウィキールで叡智を司り、お茶を持ってきたのがフウリンで愛を司るわ。不倫から名を受けたのは本人が気にしているから内緒にしてあげてね」


明るく話す女神ベステルに「態々言わないで下さいよぉ~」と怒る女神フウリン。横でウィキールがため息をつき、それを見つめる聖女はどういう顔をしていいか解らず顔を軽く伏せ紅茶から上がる湯気を見つめる。


「じゃあ、叡智の女神さまの名前の由来はウィキペ」


「それは内緒だ! それよりもクロたちをここに呼んだ事を説明せねばなるまい」


「そうね! まずはアイリーン。ごめんなさい。こっちに転生する事を選んだのに三日で殺されるなんて思わなかった。本当にごめんなさい」


テーブルに額をつけて頭を下げる最高神に、アイリーンは前足をあたふたさせギギギと叫ぶ。


「そう、今が楽しいのは解ったわ。それでね、貴女が望めば人として再スタートさせて上げるわ! 私ったら寛大すぎる!」


「ギギギーギギ」


「えっ!? 蜘蛛のままでいいの?」


≪今では文字も使えます≫


宙に糸で文字を描くアイリーンにポカンと口を開ける女神ベステル。


「これは面白いな。糸で生成した魔力を空間に固定し文字にするとは……」


「愛の告白にも使えるかもしれないですぅ。背景にハートを描いて好きですとかぁ」


女神ウィキールは感心した様に宙に浮く文字を見つめ、女神フウリンは使い方を模索しながらキャッキャする。


「おお、文字化消えて行くぞ」


「儚く消えて行く文字で告白するのですぅ~」


「いやいやいやいや、ありえないでしょ! 特殊個体とはいえ空間に糸を固定とかどんなチート能力よ! 蜘蛛なら蜘蛛らしく枝に糸を固定しなさいよ! 空間に糸が固定できるって事は魔力が続く限り空に糸を引っ掛けて飛べるって事よ! どんなチート能力よ!」


再起動した女神ベステルは声を荒げ指差すが、当の本人はその手があったかと前足を上から下へと打ち付ける。


「それにクロ! あんたも飛んだチート能力にしやがったわ! 私の上半身を象ったシールドで聖属性化するとかどういう心算よ! そもそもシールドに色付けするという発想も可笑しいし、私の肖像画で攻撃を受けようとする発想が気に入らないわ! 私は女神よ! それもこの世界の最高神! それで攻撃を受けるって! さっきはそれでネクロマンサーに止めを刺すし……私は鈍器か!」


今度はクロを指差し怒鳴りつける女神ベステル。


「それにだ……お前の描くベステルさまの胸は少し大きくなっていないか?」


「それはいいのよ! 寧ろもっと大きく描きなさい!」


「女神でもぉ胸のサイズは気にするものですぅ~」


「そうね! そこは同感だわ!」


ビスチェまで会話に入り胸の大きさを語る女神たちに、クロは助けてくれという意味を込めてエルフェリーンを見つめるがその視線はまだネクロミノコンに向かっており、聖女へと視線を送ると自身の胸を手で押さえており、瞬時に首を捻り白亜へと視線を向ける。


「キュ?」


首を傾げる白亜はまだまだ子供なようで、胸のサイズを気にするお年頃ではない事に心底安心感を覚えるクロ。


「話が脱線したわね。それでアイリーンはそのまま蜘蛛の姿で生きて行きたいという事でいいのかしら? 手が使いづらいとか、食べにくいとかあればアラクネの姿にしてあげる事もできるわ! 下半身が蜘蛛バージョンや魔力を込めると完全に蜘蛛になるバージョンとかも選べるわよ! どう? どうかな?」


アイリーンにグイと顔を近づける女神ベステル。


「ギギギ」


「そう! それならそうしましょう! フウリンは別室で用意しておいた魔石を食べさせてきなさい! ふふふ、これで私の世界にもアラクネ種が繁栄するわね!」


立ち上がり女神フウリンに指示を出すと拳を掲げる女神ベステル。その背後には後光が差し無駄に女神らしさを醸し出していた。


「アイリーンさまはこちらへどうぞぉ。あちらにアラクネ用に創造した魔石とぉ進化に適した部屋をご用意してありますぅ」


「ギギギ」


「お世話掛けますだなんてぇ蜘蛛に言われたのは初めてですぅ」


部屋を退出したひと柱と一匹を見送るクロはビスチェから裾を引っ張られ、振り向くとニンマリとした笑顔で口を開く。


「甘いものが食べたいわ。ケーキとかケーキとかホットケーキとかね」


「それは僕も食べたいね! 頭を使ったから甘いものが欲しいよ!」


「あら、私は板チョコが食べたいわ。変にナッツとか入れてあるのではなく、シンプルなチョコを出しなさい!」


ビスチェとエルフェリーンに女神ベステルからのオーダーを受け、魔力創造でコンビニスイーツをテーブルに出すと我先に手を出す女性たち。


「ウィキールさまもお好きな物をどうぞ。色々ご迷惑を掛けましたし……ん? 掛けたか?」


「はへたわよ……もぐもぐ……」


「喋るか食べるかにして下さい。聖女が困っていますよ」


「聖女さまもお好きな物をどうぞ。どれも甘いものですので、甘いのが苦手ならしょっぱい物を出しますが」


「い、いえ、ありがとうございます。では、これを頂きます」


聖女は手にしたチーズケーキをビスチェの手元を見ながら開封し、フォークを持つと口に運ぶと頬笑みを浮かべる。


「おっほん! クロが私に迷惑をかけたのは本当ね。だいたい、この地で暮らす事になったら一度ぐらい教会に顔を出すでしょ! そう思って待っていても一向に来る気配がないし、もっと早く来てくれれば愛理を助けに行くよう指示を出したのに……それにあなたの体がこの世界にちゃんと適応しているかもチェックしたかったのよ。異世界召喚され残る事を選んだから簡単に体を弄ったのに、心配したんだからね!」


ツンデレ口調よりも、この世界に適応する為に軽く体を弄ったという衝撃の事実に、手にしていた蒸しパンをテーブルに落とすクロ。


「これからは年に一度ぐらいは教会に顔を出しなさいね。体のチェックをしてあげるわ! それに日本のスイーツやお酒にツマミを出してくれると嬉しいわね。お安い取引でしょ!」


女神とは思えない言葉に落とした蒸しパンを見つめるクロ。


本人の了解なしで体を弄るとか……でも、この世界に適応させる為だと強く文句は言えないか……いや、しかし……女神シールドの件も考えると年に一度は教会に顔を出すべきか……アイリーンの捜索とかも受けられたのも事実だし……この世界で楽しく生活できているのは女神ベステルさまのお陰だものな……


「異世界の酒は美味しいからねぇ~ベステルが欲しがるのもわかるけど……女神として脅迫するのはどうなのかな? クロの体調管理は僕がしているし、ビスチェもクロを観察しているよ」


「後輩の体調管理に気を使う私にも日頃から感謝しなさい!」


「へいへい、何だが真剣に考えていたのが馬鹿らしくなってきた……魔力創造で出せるお酒とかコンビニに売っている奴だけだからな」


魔力創造でウイスキーとブランデーに缶ビールに焼酎を創造すると青い顔をするクロ。


「ああ、魔力枯渇!? 今日はいっぱい魔力を使ったし、今もお菓子にお酒をいっぱい出したから! もうっ! 無理しちゃダメだよ!」


「マナポーションを飲ませます! もごもご」


食べかけのイチゴショートを強引に一口で食べ、ビスチェが普段持ち歩いているポーチから魔力回復用のマナポーションを取り出すとぐったりしたクロの口に強引に押し込み顔を上に向け流し込む。一切の躊躇なくマナポーションを流し込むと額を拭う仕草をし、一仕事終えた顔をするビスチェ。


「キュウキュウ……」


そのまま後ろに倒れたクロを心配そうに揺さぶる白亜。いま一番クロを心配しているのは白亜だろう。


そんな白亜の頭に手を優しく置いたクロは「大丈夫だからな」と口に出し、キュウキュウ心配しながら鳴く白亜の頭を撫でるのだった。





 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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