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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十章 帝国の意地と闇ギルド
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邪神像の捕獲



「クロ! 気を付けなさいよね!」


「うむ、爺さまも無理をしないようにするのじゃぞ」


「うふふ、お早いお帰りをお待ちしておりますね」


 ビスチェたちと別れたクロたちは洞窟内の広場から細く暗い邪神像が眠る道へと足を踏み入れる。先ほどの戦闘の余波で正気は薄くなっているが奥からまだ湧き出しているようで、足元には黒い闇のような霧が薄っすらと流れている。


「アイリーンはできるだけ浄化魔法を使ってくれるかい? 僕はみんなに瘴気に耐性のある光属性の魔術を掛けるからね~」


 エルフェリーンが天魔の杖を一人ずつに翳し光属性が付与した防御魔術を施すと薄っすらと体全体が輝き、暗い洞窟内を照らす。所々に光の魔道具があり足元を照らしてはいるが薄暗かったが、四人で発光する事により月明かり程度には視界が保たれ、アイリーンが先を歩き浄化魔法を使い闇の霧である瘴気を浄化して行く。


≪扉が見えましたよ≫


 アイリーンの上に浮かぶ文字にエルフェリーンが天魔の杖を翳し光球を作り出すと扉付近に飛ばし安全を確認する。


「罠や潜伏している者はいなそうだけど、扉の下から瘴気が漏れているね……」


 エルフェリーンが言うように装飾された木製の扉は洞窟の壁に取り付けられているのだが、壁は天然の洞窟な事もありゴツゴツと岩らしい凹凸だらけでドアの下からは黒い霧が漏れている。


「本当にこれで邪神像を取り押さえても問題がないのですよね?」


「母さんがそれ用に与えたのだから大丈夫だよ~クロの前で見せている顔はだらしなくわがままを言うだけの神に見えるだろうけど、あれでも………………探せば良い所ぐらいあるって~きっとあるぜ~」


 探さないと思い出せないのかと思いながらも装着されている軍手と刺股を見つめ力を込めて握る。


「何にしても邪神像を女神の小部屋に入れれば作戦は終わりだからね~」


「ここへは皇帝ともう一人入って行ったのを確認している。もう一人が同じようになっている可能性もあるから注意が必要だな」


 ラルフが自慢の髭を摩りながら口にしドアへ視線を向け、アイリーンは魔化していた下半身を人型に戻す。


「そこは僕とアイリーンで同じように聖魔法を使えばどうとでもなるよ~」


≪聖魔法の連打で倒して見せますからクロ先輩は邪神像を盗んで下さいね~はっ!? どうせ盗みに入るのならクロ先輩にはレオタードを着て貰うべきでした!≫


「お前な……俺にしか解らない様なネタを態々文字に起こすなよ……それよりも早く終わらせて帰ろうぜ」


「うんうん、そうだね~早く帰って打ち上げをしないとだぜ~ラルフも一緒にクロの美味しい料理とお酒を楽しもうぜ~」


「それはそれは、楽しみですな」


 やや締まらない会話をしながらもドアに手を掛けるエルフェリーン。左手には天魔の杖を持ち既に詠唱を終えているのか薄っすらと白く輝き、アイリーンは小声で詠唱を続けながらもエルフェリーンの後ろに付きいつでも聖魔法を放てる準備に入っている。


「じゃあ、開けるぜ~クロは女神シールドをすぐに張るようにね~」


 クロが慌てて女神シールドを張るとドアが開かれ中の様子が目に飛び込んで来る。


「えっ………………」


 驚きの声を口にするクロだったが、アイリーンとエルフェリーンから聖魔法が解き放たれ光の斬撃と雨がそれに降り注ぐ。


「ホーリーレイン!」


「ホーリースラッシュ!」


「まったく無粋です……久しぶりに受肉し体を取り戻したというのに、会話する事もなく魔法で攻撃をしてくるとは……ん? おお、ハイエルフ! それとヴァンパイヤですね。普通人族と、う~ん、見たことのない種族がいるようですが……」


 二人から高位の聖属性魔術を受けながらも闇の霧で相殺し言葉を放つそれは先ほど皇帝と中へと入っていた宰相の姿ではなく、黒い翼に赤い瞳を浮かべた闇であり、ヴァルの様な三頭身ではなく八頭身をした天使であった。


「堕ちた天使が受肉しただと!?」


 ラルフが驚愕しているのか声を上げ右手に魔力を集め攻撃のタイミングを窺っているのか歯を喰いしばり二人の聖属性魔術が治まるのを待ち、クロは黒い障壁をどうにかしないと二人の魔術が通らないと考え刺股を手にしながら女神シールドを飛ばす。


「うん? あれは創造神さま?」


 堕ちた天使の視線が女神シールドへ向くと翼を羽ばたかせ一気に距離を詰め移動し、クロはすぐに女神の小部屋の入り口を生み出す。


「なっ!?」


「へっ……」


「あはっ、あはははははははは、捕獲成功だよ! クロ! よくやったよ~」


 呆気に取れるアイリーンとラルフを余所にエルフェリーンはクロへと駆けつけ抱き締める。大人モードなエルフェリーンという事もあり抱き締められているクロはあたふたとするがエルフェリーンはお構いなしに抱き着きクロを褒め続ける。


「聖魔法を防御された時は驚いたけど、女神シールドを囮に使って堕ちた天使を捕獲するとかクロは凄いよ~本当によくやったぜ~」


「ちょっ! 師匠! 落ち着いて下さい! 邪神像を捕獲するのが目的であって、さっきの黒い天使を捕獲しても意味は、」


「あるぜ~あれが邪神像だったものだぜ~恐らくだけど邪神像には邪神の欠片が使われ瘴気を生み出していたんだけど、その瘴気にあたり人というよりは闇になったのがさっきの皇帝。こっちはもう一人いた男の体に瘴気を使い変質させ自身の体として使い復活した邪神だ。ほら、その証拠にこの部屋にある邪神像はあの様だろ。クロは邪神を捕獲したんだぜ~」


 エルフェリーンが指差す先には邪神像と呼ばれている黒い天使像があるのだが多くのヒビが入り白く変色し、触れば今にでも崩れ落ちそうなほどに朽ちている。


「あまりのことに驚きましたが、クロ殿は単身でダンジョンを突破し、邪神すらも討伐した大英雄ですな」


 ラルフも自慢の髭を弄りながらクロを褒め、テンションを上げて抱き着いているエルフェリーンの姿に微笑みを浮かべている。


「ちょっ、ちょっ、ちょっと! クロ先輩ばっかりズルイですよ! 私だってまだ試してみたい聖魔法とか、白薔薇の庭園に聖魔法をエンチャントした一撃とかも用意していたのに! 女神シールドを使って捕獲するとか、ズルくないですか!?」


 アイリーンからは罵声にも似た言葉を受けるが、今更女神の小部屋から出すという選択肢もない現状では罵声を受け続けるしかなく、師であるエルフェリーンに抱き着かれながらも申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「ふんっ! まあいいです。この事はビスチェさんに報告しますからね~エルフェリーンさまに抱き着かれ唇を奪われたって!」


 アイリーンの言葉にビスチェが鬼のように憤慨するイメージが湧き上がり顔を青くするクロだったが、柔らかいものが頬に触れ一瞬何だか理解できなく目をぱちぱちとさせる。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! エルフェリーンさまがっ!」


「これは、これは、エルフェリーンさまもまだまだお若いですな」


 アイリーンが二人を指差し叫び、ラルフは嬉しそうに微笑みを浮かべ、エルフェリーンは頬を染めながら口を開く。


「えへへへ、頑張ったクロにはご褒美だぜ~僕からの口づけはとってもレアで、妖精たちよりも幸運をもたらすぜ~」


 言い終わると姿をいつもの幼女モードへと戻し笑顔を向けるエルフェリーン。クロはひとりフリーズするのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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