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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十章 帝国の意地と闇ギルド
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ラスボス前の窃盗団



 聖魔法の連打で灰すら残さずに消滅した瘴気の塊を纏った現役カイザール帝国皇帝のザナール・フォン・カイザール。訓練をしていた兵士の叫びによって知る事となったが既に消滅し遺品や魔石の様なものは残らず、残ったのは瘴気がほぼほぼなくなり居心地の良くなった洞窟内の澄んだ空気ぐらいだろうか。


「へ、陛下が、陛下が……」


 ひとり逃げ出さずにいた兵士がその場に崩れ、申し訳なさそうな表情をするクロ。アイリーンはそれなりに披露しているのか肩で息をしながらも糸を飛ばして床に膝を付き涙する兵士に糸を飛ばして拘束し、アイテムボックスから取り出した魔力回復ポーションをクロから受け取る。


「ふぅ……まだ、邪神像は奥にあるからね~油断は禁物だぜ~」


「闇の精霊たちも今の光に喜んでいたけど、まだまだざわついているわ。奥には瘴気を生み出している邪神像があるはずよ」


「師匠もポーションをどうぞ。ビスチェたちの分も出そうか?」


 クロから受け取った魔力回復ポーションを口にするエルフェリーン。ビスチェは首を横に振り、メリリはひたすら笑顔を浮かべ、ラルフも必要がないのかぽっかりと口を開け闇にさえぎられている穴へと視線を向ける。


「瘴気により姿形が変貌するとは……邪神を崇拝してまでも帝国領土を取り戻したかったのか……」


「どうだろうね……邪神と呼ばれているけど元は天使だからね~信仰対象でもあるし、邪神の欠片なんてものを手に入れたからそそのかされたのかもね~」


「うむ……それにしても凄い光だったのじゃ。あれが聖属性と光属性の力だと思うと身震いするのじゃ……」


≪エルフェリーンさまの聖魔法は凄かったですね~私もそれなりに聖属性魔法が使えますが、斬撃に光属性を乗せて聖魔法を使ったのには驚きました~≫


「そのせいで光の精霊が集まっているわね。今も洞窟内を照らして楽しそうにはしゃいでいるわよ」


 ビスチェたちの話を耳にしながらクロは思う。


 聖属性と光属性の違いは何なんだ? もしかしたら太陽光とLEDライトの違いか?


 ひとり腕を組みながら頭を傾げているとエルフェリーンが文字を浮かべる。


≪光魔法はそのままで、魔力を光に換える魔法です。聖魔法は神さまの力が含まれる魔法で、魔力を対価に神さまから力を借りているといわれていますね~クロ先輩の女神シールドとかは聖魔法ですよ。ああ、だから神さまたちに料理や酒をたかられているのですね~≫


「魔力ではなく現物で対価を渡しているのはクロぐらいだね~」


「うふふ、やはりクロさまの料理は素晴らしいです! 聖魔法すらも扱える料理なのですから」


「うむ、考え方によっては凄いのじゃな。神たちもクロの酒を奉納されては聖魔法を使えるよう神力を授けたのじゃろう」


 エルフェリーンやメリリにロザリアからフォローが入りクロは何とも言えない表情を浮かべながらも、喜んで料理を食べ酒を飲む神たちの姿を思い出しそれで助かっている事も事実だなと心の中でひとり納得する。


「大丈夫なようなら進むけど、ビスチェとメリリにロザリアはここで待機か先に外に出て、ん? まだあっちにも洞窟があるからそこにいる人たちを外に運んでくれるかな?」


 エルフェリーンが視線を向けたのは魔道鎧の格納庫があった洞窟とは違う小さな穴で、まだ研究員が残っている事に気が付いたのだろう。


「闇の精霊たちもそこに人がいるといっているわね。さっきの瘴気の塊みたいなのが襲ってきたら私やメリリでは対処できないし、師匠とアイリーンに任せるわ!」


「うふふ、私も物理的に殴る方が得意ですからお邪魔になりますね」


「我はクロを守ると約束したのじゃが……まぁ、先ほども我が守られたようなものじゃが……ふぅ、我よりも爺さまの方が向いておるのも確かじゃの。クロの事を頼むのじゃ」


 ロザリアはクロから祖父であるラルフへ視線を向け頭を下げ、ラルフは頷き「クロ殿の事なら任せなさい」と優しい笑みを浮かべ、腐った文字が躍る。


≪これはラルフさルートの開放だと………………まさかの展開に私の魂が揺さぶられ、たぎってきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!! まさかのロマンスグレールート突入のクロ先輩! 私は守りませんからラルフさんに守られながらモラルを守った戦闘を期待しますよ! ああ、でも、戦闘中に足が絡まったり腰に手を当てられたり勢い余って一線を越えてもOKですからね!!! 私はクロ先輩を応援しています!≫


 浮かんだ文字をヴァルが浄化魔法で消去するが、両手で顔を隠しながらも指の隙間から二人を見つめハァハァする変態に白い目を向けるクロ。


「ヴァルもビスチェたちと一緒に行動してくれ。ヴァルが付いていれば浄化魔法や回復魔法で役に立てるかもしれないからな」


「はっ! お任せ下さい。誰一人傷付けさせません」


 ヴァルがクロの頭から離れロザリアの頭の上に着地し、何とも言えないような表情を浮かべ口を開く。


「ほとんど重さを感じぬが、うむ……変な感じがするのじゃ……」


 ロザリアの言う通りにヴァルの姿は三等身のゆるキャラであり、金髪に美しいくも幼さの残る顔立ちの上に乗せればアホな子供に見えてしまうのは仕方のない事だろう。


≪アイドル顔負けのロザリアさんの上にヴァルが乗るとシュールですね……≫


 浮かぶ文字を瞬時に回収するクロ。祖父であるラルフは顔を背けて肩を揺らし、同じく美少女であるビスチェはホッとしながらも口元を片手で押さえ視線を向かう予定の洞窟へと変える。


「うふふ、私は可愛いと思いますよ~ヒラヒラなドレスとヴァルさまの天使の翼が相まって素敵です」


「ぶふぅ!?」


 ラルフとビスチェが吹き出し顔を歪めるロザリア。


「ほらほら、遊んでないで最後に邪神像を盗んで帰ろうぜ~クラブル聖国で待っているシャロンや家で待っているルビーも首を長くして待っているぜ~」


「盗むというのはちょっとアレですが、早く帰ってゆっくりと落ち着きたいのはありますね。ルビーが飲み過ぎてないといいのですが……」


 クロの頭にちらつく光景は鍛冶で汗をかいたままの姿でリビングの炬燵に入りウイスキーを瓶ごと口にするルビーの姿であり、止める存在であるクロがいない現状ではリビングも酷いことになっているだろうという想像であった。


「うふふ、炬燵はいいものです! あれは世界へと広めるべきだと思いますよ!」


「コタツ? それは何なのじゃ? 」


「うふふ、炬燵は真冬でも温かく過ごせる場所で、そうですね………………求めていた幸せを形作ったものでしょうか」


 人差し指を顎に手を当て考えながら口にするメリリ。ロダンも興味があるのか警戒しながらも向き直り炬燵という物を想像しているのか髭に手を当てる。


「炬燵は変わったテーブルで足を入れると温かいんだぜ~他にもクロは湯たんぽも創ってくれたし、カイロという携帯型の温かい物も創ってくれたぜ~」


「私は風の精霊が温かい風で寒さから守ってくれるけど、カイロは火の精霊たちが喜んでいたわね! カイロよりも原初の炎に歓喜していたけど……」


「げ、原初の炎じゃと!?」


「アレは便利だぜ~薪代も掛からないし、鉄を打つ時も魔力を込めれば火力が上がるからね~扱いには注意が必要だけど便利なのは確かだぜ~」


「原初の炎……エルフェリーンさま……それはこの世界で初めて文化が生まれたとされる原初の炎でしょうか?」


「うん、そうだぜ~ヴァルが生み出した原初の炎は魔力を糧にしているから扱いやすくて助かっているぜ~」


 エルフェリーンの言葉に期限を良くしたヴァルが翼を大きく広げ、ロザリアの頭の上では更なるマヌケさがプラスされるのであった。








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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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