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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十章 帝国の意地と闇ギルド
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闇と対峙する光



「貴様らはいったい……」


「こんな事をして、ただで済むと思っているのか!」


 糸でグルグル巻きにされている男が五名地面に這いつくばり威勢の良い声を上げるが遮音結界内という事もあり罵声は外に漏れず、クロは浄化された魔道鎧をアイテムボックスへと収納する。二体ほど強引に開け壊してしまったが魔核やゴーレムの核は無事であり再利用も可能だろう。


「こんな事っていうけどさ、僕は暗殺されかけたんだよね~そう考えればこの魔道鎧全てを破壊したとしても問題はないぜ~正当防衛だぜ~」


 正当防衛という言葉を口にするが過剰防衛だろうと思うクロ。ビスチェとメリリにヴァルを肩に乗せたラルフはすでに動き出し、格納庫と使われている洞窟に潜入し魔道鎧を無力化するためにゴーレムの核のある頭部を破壊して回っている。


「過剰防衛でもあるが戦争を起こすのなら破壊は必然なのじゃ」


≪命があるだけましだと思って下さいね~≫


 ロザリアとアイリーンからの言葉に眉間に皺路寄せながらも戦争という単語に搬送する兵士五名。


「それよりも体調はどうかな? 目や喉は大丈夫かな?」


 エルフェリーンからの言葉に今まで地獄の苦しみを味わっていた五名の兵士はキョトンと表情を変え、不意を突かれ痛みがない事に気が付く。


「痛み……ないな……」


「あれだけの激痛がなくなっている……」


「あの、もしかしてですが………………エルフェリーンさまですか? 違いますよね?」


 兵士たちが自身の身に起こった痛みが綺麗サッパリと無くなっていることを自覚し、ひとりの兵士が幼く見えるエルフェリーンに質問をする。


「うん、そうだぜ~二百五十年前に帝都の城に大きな火球を落とした張本人さ。カイザール帝国は懲りずに僕に喧嘩を吹っかけてきたからね~これで二つ目の大きな廃墟が増えるぜ~」


 天魔の杖を掲げたエルフェリーンからの言葉に縛られていた男たちは悲鳴を上げ、なかにはその場で泡を吹いて気を失う者まで現れ相当な恐怖だったのだろう。


「この帝国ではエルフェリーンさまの名は恐怖の対象じゃな。幼い頃から親にエルフェリーンさまにだけは手を出すなと言われておるそうじゃぞ。ああ、双剣もじゃったな」


≪私もそのぐらい怖がられたいですね~アイリーンに手を出すと火傷するとか?≫


 やや中二病的な発言と発想を持つアイリーンの文字にクロが吹き出すのを堪えながらも魔道鎧を回収し終えと、まわりを確認し瘴気が流れてくる洞窟へと視線を向ける。ぽっかりと口を開いたそれからは黒い闇が覆い先を見ることはできないが、視線を向けただけで全身が震えて体がヤバイと訴えてくるようであった。


「師匠、取り敢えず瘴気が漏れている場所を女神シールドで塞ぎますか?」


「うん? そうだね。その方がここで縛っている兵士たちには安全かな。浄化魔法で清めた場所だけどもう瘴気が流れてきてるからね~」


「しょ、瘴気だと……」


「だから敏感な者たちがここへ入ると震えていたのか……」


「俺らの様な兵士は問題なかったが、新兵や衛生兵なんかは怖がっていたよな……」


 糸でグルグル巻きにされた兵士たちもそれなりに自覚が合った様で、口々に瘴気という負の感情の塊に顔を青ざめる。


「瘴気は負の感情や恐怖を宿した魔力マナじゃからな。それを吸い続ければ体に瘴気が溜まり悪寒や嘔吐、更には生物としての本質が変化しどうなるか解らんのじゃ。下手したら魔力過多や体の構成すらも変わり純魔族の様な存在へと変貌するのじゃ。ここで長居するのは得策ではないのじゃが……」


 ロザリアの言葉に身震いする兵士たちをしり目に視線を暗い洞窟へと向け、クロが女神シールドを展開しその洞窟を塞ごうとした時だった。


「クロ!」


「クロ先輩!」


 エルフェリーンは天魔の杖を急ぎ向け聖魔法を使いホーリーアローを飛ばし、アイリーンは糸をクロへと飛ばすと瞬間的に縮めてその場から強制的に撤退させ、次の瞬間にはクロがいた場所に闇が通り抜け斬撃の跡が地面に残り、転がるクロは慌てて女神シールドを複数展開させ自身や兵士に仲間たちの前に配置する。


「くっ! 瘴気を鞭にしておるのじゃ!」


「アイリーンはできるだけ兵士たちをここからら離れた場所にっ!」


≪糸を解きますので自分で逃げて下さい!≫


 アイリーンが自身の糸に干渉して四散させると男たちは慌てて起き上がりその場から逃げ、クロたちはゆっくりと姿を現す闇と対峙する。


「ふはははは、この場に帝国潰しがいるとは幸運な事もあるものだな!」


 その声は声というよりも念話のような頭の中に響き、洞窟から姿を現したそれは人の形をしているが目が赤く輝き鼻や口はなく黒い闇に覆われ、肩から先は腕というよりも長く引きずる黒い布のようで、胴体や足もクレヨンで塗り潰されたかのような不自然な形をしている。


「みんな! 気を付けてよ! これでもかってぐらいに邪神の瘴気に飲み込まれているよ! こうなると下手な魔法は効果がないからね! 聖魔法以外は使わず絶対に攻撃を受けちゃダメだぜ!」


「それなら! ホーリーレイ!」


 真っ先に動いたアイリーンが聖魔法の中でも浄化に特化した最上位魔法を放ち光の柱に包まれる闇。

 あまりの眩しさに目を細めながらも女神シールドを維持するクロはゆっくりと下がりながら聖魔法が使えないロザリアのフォローをすべく動き、ロザリアもそれに気が付いたのか素早くクロの後ろにまわりレイピアを抜き不意打ちに備える。


「グガァァァァァァァ! この程度の痛みなど歴代の王たちの苦しみに比べたらっ!」


 光の柱が飛散し顔の半分が姿を現すと声を上げる一人の兵士。


「こ、皇帝陛下っ!」


 案の定、カイザール帝国現皇帝であるザナール・フォン・カイザールであり瘴気に侵食され半分ほど見せた顔には黒い筋が浮きで、開いた口からは異常に発達した犬歯が姿を現す。


「まるでアンデットとなり地を這いまわるヴァンパイヤのようじゃな……」


 ぽつりと漏らしたロザリアの言葉を耳にしたクロは新たな女神シールドをザナールへと飛ばすが、左手を振り上げると同時に鞭のようにしなった闇に相殺される。が、痛みはあるのか叫びを上げる。


「グガァァァァアァ、貴様は誰だっ! 忌まわしき女神を模したシールドなど聞いたことがないっ! いったいお前はだぺらっ!?」


 ザナールが叫びを上げている最中にも更なる攻撃を受け、光の柱が声を遮り親指を立てるアイリーン。


 この時クロは思った。


 ラスボスだろうと矢継ぎ早に弱点を攻められるのは可愛そうであると……


「二人とも離れて! ホーリーフレア!」


 いつの間にか姿を変え黄金の輝く大人モードのエルフェリーンの叫びにロザリアはクロの後ろ襟を掴むと足に力を入れ瞬時にその場を飛び去り後退し、次の瞬間には白い炎が黒い闇を舐め尽くす。


「痛っ! ちょっ! ロザリアさん!!?」


「うむ、緊急事態だったのじゃ。ほれ、見てみい、あの白い炎を……」


 クロの目の前には聖魔法の中でも攻撃に特化した最上級魔法のホーリーフレアが闇を蹂躙しており、白い炎の柱が天井の鍾乳洞までも焦がし洞窟内の温度を上げ顔や体には熱風を感じ慌ててシールドを張る。


「これで少しは……」


 熱風を遮るシールドに感謝しながらも白い炎が回転し上へと昇る轟音を前にするクロとロザリア。エルフェリーンは下半身を白い蜘蛛へと魔化したアイリーンに回収され素早くクロたちの後ろへとまわりダメ押しの詠唱を続ける二人。


「光は闇を滅し、輝きは集束させ、閃光へと誘う一筋の刃と化せ! ホーリースラッシュ!」


「浄化の光よ! この地に染まる瘴気を払い、聖なる雨で払いたまえ! ホーリーレイン!」


 矢継ぎ早に放たれる聖魔法。しかも上位。に、闇に包まれていたカイザールの姿はいつしか見えなくなり、クロはアイテムボックスから取り出したサングラスをロザリアと二人で掛けているが、聖魔法の光はサングラスにも効果がないらしく薄目で成り行きを見守るのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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