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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十章 帝国の意地と闇ギルド
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魔道鎧への対処とメリリが怖がられている理由



「下で訓令をしている五体をどうにかしないとね」


鍾乳洞のある洞窟内は広く所々には明り取りの魔道具が設置され、五体の魔道鎧が陣形の取り方や戦い方を学んでいる。入口はクロたちが入ってきた場所の外にも数ヵ所あり、多くの魔道鎧を補完する場所に、量産体制を取るべく工場のように流れ作業でゴーレムを作る入口、城へと上がる道、他にも道と呼べないかもしれないが洞窟は続いている。


「あまり音を出さないように戦わないとだよな。わらわら魔道鎧が出てきたら対処に困りそうだし……」


「うむ、それなら問題ないじゃろ」


ロザリアの言葉に一瞬呆けるクロ。他の者たちは気が付いたようでアイリーンが上から降りてくると手を上げる。


≪ドランさんたちが外で兵士を呼び寄せているからですねよ~≫


「ドラゴンが三体も現れれば軍部や兵士はその対応に追われるというものじゃ」


「今頃は大慌てで兵士を集めているな」


悪い笑みを浮かべるロザリアと顎に手を当てて口を開くラルフ。


「そういう事だから大丈夫だよ~まあ、僕が遮音結界を張ってもいいし、またクロの極悪スプレーを撒けば簡単なお仕事だろ」


「今この場には私たちの外に十人だけね。下の魔道鎧を着ている五名に奥に二人、とは邪神像の所に二人ね」


エルフェリーンが遮音結界と熊撃退スプレーを提案し、闇の精霊がビスチェのまわりにいるのか薄っすらとした闇が手に集まり薄明かりに対して不自然に光を遮る。


「そんなに便利なものがあるのなら使ったよいのじゃ」


クロへと興味ある視線を向けたロザリアとラルフ。ビスチェとアイリーンは多少なりアレの凶悪さを知っており顔を引き攣らせ、被害者であるルビーの目が真っ赤に腫れ涙ながらに咳き込む姿と捕虜たちの悲惨な状況を思い出したのだろう。


「うふふ、あれは拷問道具にも使える代物かと」


微笑みながら怖い事を言うメリリにクロが一歩後退る。


「では、結界を張りそこへ熊撃退スプレーを散布するのはどうでしょうか。そうすれば誰の被害もなく魔道鎧を片付けることができます。無力化後に私とアイリーンさまが浄化魔法を施せばこちらへの被害もありません」


クロの頭に乗っていたヴァルからの提案に「それならいいかな」と呟くクロはエルフェリーンへと視線を向ける。


「うんうん、じゃあそれで行こうか。僕が遮音結界と合わせて結界を張るからね~アイリーンは上から凶悪スプレーを撒いてくれ」


「凶悪スプレーではなく熊撃退スプレーです……ほら、これな」


アイテムボックスから熊撃退スプレーを三本ほど出すとアイリーンが受け取り上へと糸を飛ばし消え、エルフェリーンが天魔の杖を構える。


「音の精霊よ。僕の声に応えて洞窟の下の方を静かなる空間で囲んでくれるかい」


 すると下で鳴り響いていた大きな足音や司令官だと思われる者の声が一切聞こえなくなり遮音結界が施されたのだとしり、アイリーンが上から糸を垂らし下へと降下しスプレーを散布する。

その姿はまるでスパイが敵地に乗り込み潜入する姿に見えるが、攻撃方法がスプレーというシュールさに笑い出しそうになるクロ。


 五分ほどですべての熊撃退スプレーを使い終わり次第に様子がおかしくなる魔道鎧たち。動きがぎくしゃくとしはじめ咳をしているのか体を揺らし、統率されていた動きがなくなり地べたに這いずり回り苦しむ姿晒すと、ロザリアとラルフはクロへと視線を戻しあからさまに引いていた。


「お、恐ろしい毒なのじゃな……」


「あのように苦しむとは……」


「熊を撃退するスプレーです威力ですから……って、提案したのは俺じゃなくてヴァルだからな」


「命を取らない安全な兵器です。多少の苦しみは仕方のない事かと……」


 頭の上でもっともな事を言うヴァルの言葉に複雑そうな表情を浮かべるロザリアとラルフ。


「うふふ、帝国の兵なら苦しむべきですね。私の受けた屈辱に比べればこれぐらいどうという事はありません」


 口角を上げて笑うメリリ。


≪メリリさんはいったいどれほど帝国に恨みがあるのですか?≫


 上から戻ってきたアイリーンの文字を見たメリリが下半身を魔化させ白い蛇へと変わると双剣を構えて口を開く。


「私は冒険者として真面目に活動しておりました。が、いつの間にか恐怖の対象として見られるようになり、子供にいうことを聞かせる話として早く寝ないと双剣がくるぞ。とか、双剣の見た目に惑わされると臓器を食われる。とか、双剣に係わるとどのギルドからも追放される。とか、双剣とパーティーを組むと一生独身!!! とか、ありもしない噂話が広がり、『剛腕と悪鬼』の二人との因縁もあり恐れる者が増え………………

 気落ちしていた私を唯一弄ってくる冒険者ギルドマスターをちょいとボコボコにしたら指名手配ですよ……酷くないですか!」


 ギルドマスターをボコボコという単語にアイリーンとクロが引き、他の者たちは何故か笑っていた。


「あのじじいをボコボコにできる実力があると思えば頼もしい限りなのじゃ」


「うむ、あの爺さんも元はAランク冒険者だろう。メリリ殿がメイド姿で門番をしていたのも理解ができるな……」


「剛腕と呼ばれたお母さんたちとの因縁……ぷっ!」


「あはははは、メリリはメイドとしても用心棒としても優秀という事だね~頼もしいせ~」


≪それにしても関わると一生独身は酷いですね~見た目はこんなにも可愛い系ですよ~≫


「家事だって率先して手伝ってくれたよな。寒い朝は起きてこないけど、湯たんぽとかカイロとかあれば動いてくれるしな」


 アイリーンとクロからのフォローに涙目になりながら両手を合わせるメリリ。


「主様、数名が魔道鎧を脱ぎ捨てました如何いたしましょう」


 メリリの昔話に聞き入りヴァルに指摘されるまで下の様子を確認していなかったクロたちは下へと視線を向けると、地獄でした………………

 魔道鎧を脱ぎ目を擦り咳き込む男たち。まだ魔道鎧に乗っている者は転げまわり、もしくはビクビクと体を痙攣させている。


「うわぁ……引くわね……」


「地獄とはあのような光景なのじゃろう……」


「ヴァルはすぐに浄化を、アイリーンは糸で捕縛しながら浄化を頼む」


「はっ! お任せ下さい」


≪行ってきますね~メリリさんのフォローはお任せしましたよ~≫


 ヴァルが飛び去りアイリーンがターザン方式で飛び去るとクロの後ろで下半身を魔化させた白い大蛇モードのメリリがゆらゆらと揺れておりその手を合わせ、ささ、フォローの言葉をどうぞ、とでも言いたげな瞳を向けて来る。


「えっと、メリリさんはよく気が付き気が利きますし、重い荷物も平然と持ってくれるので助かりますね。おやつの時いつもは残っていたのに確りと全部食べてくれますし、炬燵のまわりをいつも綺麗にしてくれているのはメリリさんですよね。髪の毛一本も落ちていないのは凄く助かります」


 クロのフォローなのか、食べ過ぎを指摘しているのか、自身の部屋として寛ぐ炬燵を指摘しているのか、という疑問が少々残るが、メリリはどの言葉も素直に受け止め両手を頬に当て身をくねらせて照れるのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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