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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十章 帝国の意地と闇ギルド
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罠?と熱々なお茶会



 土下座で何とか機嫌を取ったクロはラルフと合流し、女神の小部屋を発動させ中で待機しているエルフェリーンたちを呼び合流する。


「何か解ったかな?」


「はい、魔道鎧は量産され下の洞窟に並べてありますな。正確な数は数えておりませんが百体以上は確実に並んでおりますな。邪神像は瘴気の漏れ方すれば現存しております。あとは、あのように訓練をしている兵士が数名と技術者と思われる者たちを確認していますな」


 エルフェリーンからの質問に答えるラルフは小声で話しながらも警戒しているのか、下で動きの確認をしている兵士たちへと視線を向け、アイリーンは糸を飛ばし洞窟の天井へと張り付き空間を把握する。


「となれば、二手に分かれた方が効率いいね。魔道鎧を破壊するチームとクロと一緒に邪神像を盗むチーム。僕はクロと一緒に邪神像を盗もうかな」


「私は魔道鎧を破壊するわ! ここいらにいる闇の精霊たちが凄く怯えているし、力も貸してくれるってさっきから囁いてくるのよ」


「うふふ、私も破壊する方が得意ですねぇ」


「では、お嬢さん方のエスコートは私が致しましょう」


 ラルフが胸に手を当てて頭を下げると訝し気な視線を送るロザリア。


「うむ、爺さまならへまはせんと思うが……まぁよい、我はクロと邪神像の討伐じゃな」


「宜しくお願いします」


「うむ、我に任せるが良いのじゃ」


≪私もいますからね~ああ、それとヴァルちゃんも呼んであげたらどうですか? 浄化魔法を使えば瘴気を浄化できますよ~≫


 上から降ってきた文字を受けクロは召喚の宝珠を使いクラブル帝国に残っているシャロンの元にいるヴァルを召喚する。宝珠に魔力を通すと魔法陣が現れ薄っすらと輝き、そこから出現する三等身のゆるキャラ。


「主さまがお呼びという事は、お任せ下さい! このホーリーナイごもごもごも」


 魔法陣の上に片膝を付き叫ぶヴァルの口を右手で慌てて押さえたクロは、左手の人差し指を立てて自身の唇に当てる。


「頼むから静かにしてくれ。これから邪神像の捕獲作戦がはじまるからな」


 無言のままコクコクと頭を上下させるヴァル。


≪ちょっと待って下さい! 誰か来ますよ!≫


 文字が降り注ぎ下を確認する一同。アイリーンの文字の通りに足音が響き、訓練していた魔道鎧たちも動きを止めて姿勢を正す。


「かまわん、続けろ! それよりもだ。百五十体も増産したのはいいが、着ることができる兵士は育っているのか? 戦争になったのに動けませんでは話にならんぞ」


「そこはお任せ下さい。既に二百名の兵士が魔道鎧を装備する事ができるよう手配済みです。潜在的な魔力量に多少左右されますが戦闘自体は可能ですので、いつでも前線へ送る事が可能です。ただ、懸念があるとすればクラブル聖国などの国がどれほど早く動き出すかという問題がありますな。情報網が敷かれているクラブル聖国から落としさえすれば、後は順に西へ向かうだけで落とせましょう」


「魔道鎧がどんなに高性能でも一度に四つの国と戦争をすれば負けるのは必至……クラブル王国から攻め落とすのは定石だろう。そういえば荒野での戦闘訓練の結果はまだわからんのか?」


「はい、二日前に東の草原で向わせ魔物を狩っているはずです。本格的な軍事訓練も兼ねておりますので五日ほどで戻ってくるはずです」


「そうか、その結果次第では春を待たずに宣戦布告するのも悪くないだろう」


 よく響く声が洞窟内に響き現皇帝のザナール・フォン・カイザールと宰相であるラシーダは邪神像のある部屋へと足を進める。


「今の二人がこの国のトップである皇帝と宰相なのじゃ………………なのじゃが、驚くほどに阿呆なのじゃ……」


「こちらの知りたい情報を大声で話していたけど……」


「うふふ、もしかして罠でしょうか?」


 ザナールとラシーダの会話を耳にした一行はあからさまな会話に顔を見合わせる。


「魔道鎧が訓練をしていてこちらに気が付いていながら嘘の情報を掴ませようとしているのなら策士だけど、気が付いているのなら魔道鎧たちにここを攻撃させるのが普通かな?」

エルフェリーンも先ほどの大きな声でしていた会話に違和感を持ち考察するが、正解だと確信ができず頭を傾げる。


「どちらにしても魔道鎧の破壊と邪神像の奪取をしなくてはな。注意して進むとしよう」


 ラルフの言葉に皆で頷くのであった。








 一方、先ほどまでヴァルのいたクラブル聖国の貴賓室ではシャロンとゼリール皇女は互いに向かい合いメルフェルンの入れた緑茶を飲みながらゆっくりとした時間を過ごしていた。


「急に魔法陣が現れ天使様が消えたのですが……」


「うん、僕も見たよ。ホーリーナイトのヴァルちゃんが転移したね。クロさんが呼んだのだと思うけど……」


「それはヴァルさまが必要になるほどの窮地なのでは……」


「どうかな、クロさんたちが窮地に陥る所を想像できないけど……」


 ゼリール皇女から視線を移したシャロンは大きく頷くメルフェルンに内心では不安だった気持ちがスッと落ちる。


「ゼリールさま、『草原の若葉』は実力者ぞろいですので心配ご無用です。エルフェリーンさまはもちろんのこと、ビスチェさまは精霊と契約する精霊魔法の使い手で、アイリーンさまは神より剣を授かった身軽な剣士、メリリは同僚のメイドですが双剣の二つ撫で恐れられた悪名高いラミア。

 『豊穣のスプーン』のお二人もAランクの冒険者ですし、ラルフさまは以前エルフェリーンさまと旅をした仲だそうです。ドランさま方はドラゴニュートの中でも屈指の実力者と聞きますし、その奥様であるキャロライナさまは竜王国最強だとか……はっきり申しますとカイザール帝国の方が可愛そうかと……」


 メルフェルンの説明に白亜も「そうだ、そうだ」と鳴き声を上げ、小雪もご機嫌に尻尾を振るいシャロンの膝の上で優しく背を撫でられている。


「そ、それは心強いですね。あの、英雄であるクロさまの紹介がなかったのですが」


「クロさまは、」


「クロさんは凄いですよ! 料理やお酒造りが上手で気遣いもできる人です! 僕とメルフェルンの中が少しだけぎくしゃくした時も助けて頂きましたし、死者のダンジョンを単独突破するほどの実力者です! それに女神さま方からも信用され、カイザール帝国の魔道鎧と邪神像の破壊を女神ベステルさまから直々にお願いされたほどですから!」


 早口で捲し立てるシャロンのテンションにゼリール皇女は目を輝かせるが、メルフェルンは思う所があるらしく口を開く。


「クロさまはアンデットに対してだけは天敵と呼ぶべき力を持っております。が、ナイフを使った近接格闘術や素手での組手はシャロンさまや私の方が確実に実力は上です」


「そ、そうかもしれないけどクロさんは凄いです! クロさんお料理を目当てで神々が神託を与え、オーガの村の人たちだってクロさんを慕っています! 教会の子供たちはクロさんを見つけると走って寄ってくるぐらいに人気者です!」


 向きになってクロへの評価を上げようとするシャロンにゼリールは微笑みを浮かべ、メルフェルン少しだけ唇を尖らせる。


「ふふふ、シャロンさまはクロさまのことを慕っているのですね」


 その言葉に顔を赤くしたシャロンは誤魔化す為に熱いお茶を口にし、あまりの熱さに目を白黒させメルフェルンが急ぎ水を用意する。


「シャロンさま! こちらの水をっ!」


「ふはぁっ!? まだこんなにも熱かったのか……ふぅ、舌がヒリヒリする……」


「クロさまから頂いているポーションがありますが如何でしょう?」


 常に持ち歩いているポーチタイプのアイテムバックから下級ポーションを取り出すメルフェルン。


「このぐらい大丈夫だよ。それよりも早くみんなが返ってくるといいな……」


 小さく漏れた本音にゼリールは微笑みを浮かべながら相槌を打つのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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