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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十章 帝国の意地と闇ギルド
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帝都の兵士たちと運び出された魔道鎧



 ドランたちが帝都を目指していた頃、クロたちはリアカーに似せて作った手押し車を引き帝都へと入る商隊の列に並んでいた。帝国の東側の門には多くの商隊が列を作っており、サキュバニア帝国やオークの国との取引で購入しているのだろう。中には武骨な鉄骨を運んでいる馬車もありサキュバニア帝国で販売されている魔鉄だと伺える。


「本当にあの魔鉄を売っているのかよ……」


 小さく呟くクロに気が付いたビスチェは眉を吊り上げ口を開く。


「クロが魔力創造した塔の一部よね。カリフェルは何を考えてカイザール帝国なんかに売ったのかしら……」


「そう言うなよ。あげた物をどう使うかなんてさ……はぁ……」


≪それならため息を吐くのは? ビスチェさんはビスチェさんなりにクロ先輩を心配しているのですよ~≫


 一緒に馬車を引いていたアイリーンからの文字を受けて頬を染めるビスチェ。クロはというと引いているリアカーに掛けてある布がもぞもぞ動いた事に冷やせが溢れ、中に入っているメリリがばれませんようにと祈る様な気持ちでいたが、男の叫ぶ声が聞こえ振り返るとドラゴン三頭が空を進む姿に思わず「おおおお」と声を上げる。

 まわりの商隊からはドラゴンを恐れる叫びが上がり、女性たちからは絹を裂くような悲鳴も上がる。


「お前たち! ここは危険だから急いで門の中へ入れ! 後で荷物の検査をするからな!」


 門番をしていた複数の兵士から誘導され無事に検問を突破するクロとビスチェにアイリーン。メリリとエルフェリーンはカイザール帝国では目立つという理由からリアカーの荷台に乗せられ隠れ、ロザリアとラルフの二人は先に影に入り門を抜け魔道鎧と邪神像の確認に向かっている。最初からロザリアやラルフの陰に入り門を抜ければいいと思うが、陰に入っての移動には重量制限があり、特にメリリを含めると無理であったのだ。


「だ、ダイエット………………」


 衝撃の事実を突きつけられたメリリは酷く落ち込むも、エルフェリーンから、


「大丈夫だよ~すぐに大暴れをすれば体なんてすぐに痩せるぜ~」


 との言葉を頂き、涙ながらに拳を握り締めるのであった。


 そんな事もあり、二名を乗せたリアカーが門を抜け誘導された場所へ向かっていると、パニック状態の町の人々を宥めながらも誘導する兵士や教会関係者の声が耳に入る。


「悲鳴を上げても助けは来ません! それよりも避難しますよ!」


「お前たちも荷馬車を置いたら教会か冒険者ギルドに避難しろ!」


「商業ギルドの地下も安全なはずだ! 命があれば何度だってやり直せるからな!」


 叫ぶようにクロたちへと助言する兵士に感謝しながら足を進める。すると低空飛行で街の上を通過するドランから巻き起こる風に二台の布が吹き飛びそうになるのを慌てて押さえるクロとアイリーン。手には柔らかな感触があるのだが、いま手を離せば二人を隠している布が吹き飛ぶと必死になって抑える二人。


「クロ! この風の中なら二人を出しても大丈夫よ!」


 強風が吹き荒れる街中では誰もが目を閉じている事に気が付いたクロは手を離すと急ぎ布を取りアイテムボックスへと入れ、現れた二人は若干頬を染めているがそれを気にしていては発見されると思いリアカーもアイテムボックスへと収納するクロ。二人もそれに気が付いたのかリアカーから降り、フードを深くかぶり街中へと姿を隠す。


「ご、合流場所は帝都の墓地だぜ………………クロはもっと優しく女性に触れるべきだと、お、思うよ……」


 頬を染めたエルフェリーンからの言葉に、どうやらエルフェリーンの頬を強く抑えて布が飛ぶのを防いでいた事を知り安堵するクロ。


「うふふ、私はお尻を強く押さえつけられて………………」


「それはアイリーンだと思います」


 キッパリと言い切るクロに頬を染めていたメリリは真顔へと戻る。


≪とても柔らかかったですよ~≫


 フォローになっているのかはわからないがアイリーンが文字を浮かべ、一行は帝都の北にある墓地を目指し人目を避けながら移動を開始する。しばらく進むと悲鳴が上がっていたがそれも聞こえなくなり、代わりに冒険者や兵士などから上がる叫び声が耳に入り足を止める一行。


「三頭のドラゴンの目的は判明していないが、壁が破られればどれほどの被害が出るか想像できない! 幸運にもドラゴンたちは帝都の外に着地した! どれほどの犠牲を出そうが帝都を守り、家族を守るぞ!」


「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 兵士たちから上がる地鳴りにも似た叫びに、クロは家族を思って奮い立つ戦士たちだなと思いながらも、頼むからやり過ぎないでくれとキャロットたちドラゴニュートの顔を思い浮かべる。


≪何だかカッコイイ叫びでしたね。心を揺さぶられるというか、皆でドラゴンに立ち向かう意思を感じるというか≫


「凶悪なドラゴンにみんなで立ち向かうのは勇気がいるぜ~況してや敵はドランたちだからね~」


「私もドランやキャロライナの前に立つのはごめんよ。魔術が効き辛いし、精霊だってドラゴンには近寄らないわ」


「うふふ、ドランさまやキャロライナさまはそこらのドラゴニュートとは桁違いの強さを持っております。私が冒険者だったら逃げる時間さえ稼げたらすぐにでも撤退致しますね。ドラゴンは敵というよりも災害という認識で事にあたるべきです」


 メリリの言うことは尤もで、ドラゴンという存在は固い鱗は斬撃と魔術に対する耐性が高く、それに加えてブレスという広範囲攻撃と巨大な体から放たれる尻尾の一撃などを考えれば戦うという選択肢はないに等しい。戦う理由があるとすればそれは撤退までの時間を稼ぐ事ぐらいだろう。


「うむ、我もドラゴンを相手にするのは骨が折れるので勘弁してほしいのじゃ」


 影から姿を現したのはロザリアであり影の中でも外の音を聴くことができ同意する。


「ん? 落ち合う場所は教会のはずだったけど何かあったのかな?」


 頭を傾けて口を開いたエルフェリーンにロザリアは静かに頷き口を開く。


「ここへ来る途中に魔道鎧を運び出した跡があったのじゃ。重い荷物を馬車が引いているという可能性もあるのじゃが、もしかしたら数体の魔道鎧がここから運び出されておるかもしれんのじゃ。爺さまは予定通りに中に潜り邪神像と魔道鎧を確認しに言っておるが、我は運び出された魔道鎧がどこへ向かったかだけでも調べようと別行動をしたのじゃが……」


「自分たちは東の門から入りましたがそれなりに道が荒れていました。魔鉄を運んでいる馬車もいましたのでそれが原因かもしれませんが」


「そうなると南か西の門から運び出された可能性があるわ。南は私たちも道を確認したけど魔道鎧を乗せて通ったような跡はなかったから、西の街道を抜けたのかしら?」


「そうなるとドロシー共和国かカルサス王国か、両方か……どちらにしても先に現存する魔道鎧の破壊と邪神像を優先すべきかな。ロザリアはこのまま追っても構わないけどどうする?」


 エルフェリーンの言葉を受け顎に手をあて考え込むロザリアだったが、目を開きクロへと視線を向けると決意した口を開く。


「うむ、運び出された魔道鎧に関しては後回しじゃな。それよりも今は邪神像と魔道鎧の破壊を優先すべきなのじゃ。運び出されたとしても何かしらの資料が残っているはずじゃ」


 ロザリアを加えた一行は墓地近くにある地下へと続く道を目指すのであった。





 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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