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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十章 帝国の意地と闇ギルド
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カイザール帝国へ飛来する者



「ク、クロさま、どうか、どうか、エルフェリーンさま方をお止め下さい!!」


「英雄様以外にエルフェリーンさま方を止めることができる者はおりません! どうかお願いしますぞ!」


「いや~自分にお願いするのは筋違いかと……自分も師匠の弟子ですし、刺股の使い方も練習しましたので……」


 あれから三日が経過しカイザール帝国への討ち入り準備を進めたのだが、一日目は二日酔いで年長者組は昼間まで起きて来る者はおらず、クロとアイリーンで刺股の使い方や小雪や白亜との散歩で時間を潰し、やっと起きてきたエルフェリーンたち年長者組とカイザール帝国撲滅会議を開き、開口一番酒の封を開ける老害三匹(ドラン、ラルフ、エルフェリーン)にジト目を向けるが笑顔でスルーされ飲み会へと変わる。

 翌日も同じように午前中は刺股の使い方を覚え、小雪と白亜の散歩とキャロライナを入れた昼食作り、その後は起きてきた老害たちに軽い説教をしてからカイザール帝国抹殺計画を練るがいつの間にやら飲み会へと変わり、刺股を使った一発芸を披露するクロ。

 そして、三日目になりアイリーンにお願いし二日酔いで寝ている老害たちへ強制エクスヒールの刑にして渋る老害を起こしたのだ。

 その結果、昼までにカイザール帝国へいい加減に出発するぞ会議が終わったのだ。


「その、できればあと二週間ほど出発を遅らせていただければ同盟国が軍を率いて援軍として……」


 出発準備を終えたクロたちに頭を下げて懇願する聖女ジュリアスと国議会の老人たち。クロは困った顔をしながらも自分では止めることができないと素直に口にする。


「う~んとね、君たちはひとつだけ間違っているから言うけど、今回のカイザール帝国の事は僕個人に対する暗殺計画への報復だからね。本心でいえばカイザール帝国がどこかに軍事侵攻をして滅ぼしたとしても僕はよかったんだ。けど、僕への暗殺計画がいらっとしたし、母さんからは邪神像の回収を頼まれ、ラルフの闇ギルドも関わっていると聞いたからね~

 僕はラルフと母さんと自分の為に戦いに行くだけさ」


 天魔の杖を手にしたエルフェリーンからの言葉に説得は無理だろうとその場に崩れる国議会の老人たち。そこへクロがアイテムボックスからお徳用のウイスキーの大きなペットボトルを取り出して口を開く。


「できるだけ早く戻ってきますので師匠たちの好きなお酒を置いて行きますね。強いお酒なので水で割ったりして飲んで下さい。技術者の方々の事も宜しくお願いします」


 英雄からのプレゼントと捕虜たちのことを断ることができない国議会の面々は渋々受け取り、クロの肩に笑みを浮かべて手を置く二人の老害。


「うむ、あのように大きなウイスキーもあるのだな……言い値で売ってくれ。頼む!」


「わしも同じのが欲しい。できれば三つほどあれば嬉しいぞ。金でも鱗でも好きなだけ揃えようぞ」


 後ろから肩に手を置かれ振り返ることができないクロはアイテムボックスから同じものを取り出すと、お礼を言われ受け取るラルフとドランに大きなため息を吐く。


「それじゃ、行ってくるからみんなは良い子に待っているようにね~」


 そう口にしたエルフェリーンは転移ゲートを開き続々と中へと入り消えて行くさまを見つめる聖女ジュリアスと皇女ゼリールに聖騎士と国議会の老人たち。この国のトップであるクラトニーは丁寧に頭を下げ続けるのであった。









 一行は予定通りにカイザール帝国から二十キロほど離れた農村地へと転移し、寒い中でも強く育っている冬野菜が視界に入りクロは思わず膝を折り寒さに耐える白菜に似た野菜を観察する。


「まわりの葉は枯れているが中身は元気そうだな……」


≪白菜に似た野菜ですね~この前の鍋にも入っていましたし、鍋はやっぱり味噌味がいいですね~≫


「もう、そんな事よりもすぐに移動よ!」


 繁々と観察するクロの襟を掴み立ち上がらせたビスチェはそのままクロを引きずりならが街道へと続く道へ進む。街道は土がむき出しのありふれたもので、ぬかるんではいないが凹凸があり馬車で走ればお尻を痛くする事だろう。


「この道をまっすぐ進めばカイザール帝国だけど、やっぱりまだ軍事侵攻前だったね」


 エルフェリーンが街道のボコボコとした凹みを確認する。もし、カイザール帝国が軍事侵攻した後なら重量のある魔道鎧を馬車に乗せ運んだ跡が残りもっと街道は更にひどく荒れていただろう。


「これならカイザール帝国の帝都だけで事足りますな」


「キャロットよ、魔道鎧と戦い時は頭だけを潰すのだぞ。他を潰しては命を奪ってしまうからな」


「わかっているのだ! ゴーレムの赤い魔核がある頭を潰すのだ!」


 自信満々のキャロットの発言に若干の不安を覚えるが、ドランが魔化しキャロライナとキャロットも魔化し大きな竜の姿を取り、カイザール帝国の崩壊へのカウントダウンが始まるのだった。









「今日も見張りの仕事は眠気との戦いだよな」


「ふわぁぁぁぁぁ、いうなよ……」


 大きな欠伸をしたのは城壁の上から遠くを見渡し見張る兵士二人。昼食を食べ風もなく日の当たる城壁は真冬でもそれなりに温かく欠伸との戦いがメインとなる。


「このまま昼寝をして給料がもらえるのなら最高の職場なんだがな」


「違いねえ……ふわぁぁぁぁぁ、ん? 鳥か?」


 欠伸をした兵士の視界に飛び込んで来る黒い影、魔力を瞳に集めて目を凝らすと三頭のドラゴンが視界に映り思わず絶句する。


「どうしたよ? ん? ありゃ………………ドラゴンだ! ドラゴンが攻めてきた!!!」


 同僚の兵士が確認すると大声を上げ、下へと続く伝声管と呼ばれる蓋を慌てながら取り叫び声を上げる。この伝声管は船などで使われており、蓋を取れば下へと声が伝わるシンプルな筒である。


「ドラゴンが三頭もこちらを目指して飛んでくる! 下の奴らは上層部へ報告してくれ!」


 慌てて報告する兵士の報告が下の兵士たちの詰所に響き渡り真っ先に動いたのはこの場の最高責任者である門番の兵士長である。


「どちらの方角だ! それを伝えろ!」


「東だ! 東から三頭のドラゴン! 色は赤だ!」


 兵士長の冷静な判断により飛んでくる方角がわかり伝令役として一人の兵士を城へと走らせ、兵士長は急ぎ兵士たちへ指示を出す。


「相手がここを襲うとは限らないが門の外にいる商人を素早く誘導し地下のシェルターへ避難させろ! お前は街中を走り民たちは教会や丈夫な建物の中に入るよう叫んで知らせろ!」


 詰所では遅い昼食を取っていた兵士たちが指示を受け慌てて走り出し、兵士長は現場を確認すべく階段を走り息を切らせながらも見張りの兵士の横に立ち人差し指を向けている方角へ慌てて視線を向ける。


「うわっ!?」


 兵士長が叫び声を上げた瞬間には頭上を三頭のドラゴンが通り過ぎ、その後には強風が体を包み込み後ろへと転がり壁に体を打ち付け、見張りの兵士たちは泡を吹いてその場で意識を失った。


 城壁内の街中からは叫び声が響き渡り、突如上空を飛ぶドラゴンの姿にパニックを起こす住民たち。それらを落ち着かせ避難を促す兵士や冒険者に教会のシスター。


「ドラゴンが、ドラゴンが、」


「見ればわかります! それよりも避難です!」


「おいっ! 教会はどっちだ!」


「子供が、私の子供がまだ!」


「屋台の火をすぐに消せ! 火がまわったら被害が広がる!」


 避難誘導が迅速に行われた事により三十分もしないうちに帝都から人が消え、殆どの者たちは丈夫な場所へと避難する事に成功した。これは以前エルフェリーンが帝国へと報復した際に素早く帝国民を避難させるマニュアルが作られたのだ。事実、三十分という速さで非難を終えたのはエルフェリーンのお陰かもしれない。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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