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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十章 帝国の意地と闇ギルド
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神器と結果報告とこれから



 刺股を持って現れたクロが顔を出すと聖騎士たちは安堵の息を吐き、ビスチェとエルフェリーンが現れ馬車を連れた聖騎士たちがゆっくりとクロたちの元へと向かう。


「お怪我はありませんか?」


「はい、問題なく終わりましたが……いや、ある意味問題があったのかな……」


 複雑そうな表情で刺股をアイテムボックスへと入れるクロに聖騎士たちはフルフェイスの中で表情は解らないが何かあったのではとエルフェリーンへと視線を向ける。


「ん? 大丈夫だよ~クロが新たに与えられた神器に不満があるだけだけらね~心配しなくてもそこは大丈夫だよ~それよりも、また城へお願いできるかい」


「はっ! お任せ下さい」


「この命に賭けましても!」


 やる気の漲っている聖騎士たちに若干の不安を覚えるがクロたちは馬車へ乗車すると来た道を戻る。クラブル聖国の街道は広く交通マナーが確立されており馬車はスムーズに進み、空がオレンジに染まる頃には宮殿へと辿り着く。


「色々な屋台がありましたね」


「閉め切っていて匂いはわからなかったけど行列ができていたわ! 昨日食べたスープの屋台のおじさんの店もあったわ!」


「あのスープは美味かったよな。是非とも師匠に食べて貰いたかったけど……」


「それは惜しい事をしたぜ~でも、クロなら再現してくれるだろ? 僕はそれまでいい子に待つからね~」


 馬車を降りた三人は城内を進み貴賓室へと通され、それに気が付いた白亜が飛び立ちクロの胸にダイブし、アイリーンに抱かれていた小雪もテンションが上がったのかクロのまわりを走り回る。


「白亜と小雪はいい子にできたか?」


「キュウキュウ~」


「わふん」


 白亜は甘えたような鳴き声を上げ、小雪は急停止しお座りをしてひと鳴きする。その姿に癒されるクロ。邪神像を捕獲するという危険な任務を女神ベステルから与えられ、しかも対邪神像用に与えられた神器が軍手と刺股というペッポコぷりであり、どうせなら聖剣や聖魔法といった物を与えてくれと思うのは仕方のない事だろう。そして、伴いたまったストレスを白亜と小雪を撫でて発散するのがクロである。


「よしよし、偉いな~ほらほら、よしよし~」


 膝を屈め白亜を抱きながらも小雪を撫でるクロの姿にアイリーンは思う。癒されたいのだろうと……

 そして、それに気が付いたのはアイリーンだけではなく、シャロンとメルフェルンも互いに顔を見合わせ普段よりも長く撫でる二匹への対応に何かあったのだろうと察し、ソファーを立ち上がって給仕を開始するメルフェルン。シャロンはクロの元へと足を進め同じようにしゃがみクロに抱き着いている白亜の背を撫でる。


「クロさんは大丈夫でしたか?」


「ん? ああ、大丈夫だぞ。軍手の外にも神器を頂いたからな……はぁ……」


≪神器を貰ったのにため息とはいい御身分じゃないですか~私の白薔薇の庭園ほどじゃないにしろ神器は凄い能力を秘めていますって≫


 アイリーンからの文字を受け小雪を撫でる手を止めたクロはアイテムボックスから受け取った刺股を取り出すと吹き出すアイリーン。


≪警察二〇四時で見たやつ!!!≫


 肩を震わせ大きく文字を浮かべるアイリーンにクロはジト目を向ける。


「そんなに欲しいなら交換するか? 今なら軍手も付けるぞ」


≪いえ、大丈夫です……そんな通販みたいな事を言っても白薔薇の庭園は譲りませんからね~ぷくく、それにしても刺股と軍手が神器とか。ぷくくくく≫


 肩を震わせるアイリーンにクロは更なる追撃を放つ。


「しかもこれで邪神像と戦うんだからな……アイリーンも絶対に手伝えよな……」


 ため息交じりに口にしたクロの言葉にアイリーンはその場で蹲り床を叩いて爆笑し、それを心配した小雪が蹲ったアイリーンに向けて情けない鳴き声を上げる。


「見た目は神器とは思えないが神聖な気配は感じるのじゃ」


「あの瘴気を見た後だから解るが、その軍手という物から発せられる神聖な加護の力があれば問題ないだろう」


「私も軍手とその不思議な棒からは神聖な気配を感じます。女神ベステルさまから受け取った者なら間違いないと思われます」


 ロザリアにラルフと聖女ジュリアスからの言葉を受けそんな気もしてくるが、見た目が見た目だけにクロのテンションは上がりきる事はない。


「まあ、何にしてもわしが手伝うのだ。安心せい」


「そうなのだ! 私も付いているのだ! クロは任せて美味しい料理を作ればいいのだ! 肉がいいのだ!」


「クロの肉料理はどれも美味かったからな。がはははは」


 ドランとキャロットからの励ましと料理のリクエストにクロもそうしようと心の中で決め立ち上がりシャロンと共にソファーに腰を下ろす。するとテーブルにはアイリーンたちが提供したのかスナック菓子にチョコ菓子が広がりドランやラルフの前には日本酒が置かれすでに飲んでいるのか、帰ってきたエルフェリーンはキャロライナからお酌されゴブリン御村で作られた日本酒を口にしている。


「禁書の方はどうなさったのですか?」


「うん? あれかい、あれは母さんが持って行ったよ。あの禁書はエルザリーザが残した世界の歴史に関するものだったよ。厳重な結界で封印されていたけど危険な事には変わらないからね~」


「それはそれは……エルザリーザさまが関与されていたのですね」


「結界に関しては僕よりも上手だからね~無理やりこじ開けたら爆発したよ~」


 のんきに日本酒を飲みながら口にするエルフェリーン。それとは対照的に目を見開きながらも平静を保とうとするキャロライナは危険な案件に参加しているのだと今更ながら自覚する。


「ラルフからも聞きましたが邪神像がカイザール帝国の地下に祭られ、それを捕獲するのが目的と聞きましたが」


「うん、邪神像はクロに任せていいからね~ドランやキャロライナは魔道鎧の破壊をお願いしたいんだよ。できたら頭部だけを破壊してくれれば中に人が乗っていても重くて動けなくなるからね~上手く傷を付けずに捕獲してくれれば農作業用ゴーレムに改造もできるからね~」


 エルフェリーンとキャロラナイの話を薄っすらと耳にしながら邪神像担当は自分なのかと更に肩を落とすクロ。それに気が付いたシャロンはクロを見つめて口を開く。


「僕も手伝いますからクロさんも一緒に頑張りましょうね!」


 キラキラとした瞳で元気付けようとするシャロンの言葉にクロは「そうだよな、頑張らないとだよな」と口にすると立ち上がりアイテムボックスの機能を立ち上げると、以前料理した物を色々と取り出しテーブルに広げる。


「スナック菓子とお酒だけでは栄養が偏るので野菜や肉も食べること! 師匠は飲み過ぎに注意ですからね! 白亜とキャロットも野菜をちゃんと食べること!」


 動き出したクロが料理を並べメルフェルンやメリリのメイドたちも動き出し貴賓室には多くの異世界料理が並び、席を共にしていた聖女ジュリアスや皇女ゼリールは未知なる料理を口にする。他にも捕虜として連れてこられた四人も同じようにテーブルを囲み寝食を共にしながらカイザール帝国へどう襲撃したらよいかを話し合い酒を飲み干す。


「うむ、ウイスキーも美味いがこの冷えたビールという飲み物が美味いな。どんな料理にも合う」


「我はクロの赤ワインとブランデーが良いのじゃ。爺さまの飲んでいるシュワシュワは喉がくすぐったいのじゃ」


「このような料理をクロさまが……天界での料理も素晴らしかったのですがこちらの料理も見た事がないものばかりです!」


「このサクサクとしたシュリンプは絶品ですね!」


「また腕を上げたようですね……」


 夕日の入る貴賓室では料理と酒を楽しみながらゆっくりと時が過ぎて行くのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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