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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十章 帝国の意地と闇ギルド
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女神ベステルの頼みと神器の軍手



「はぁ……どこで教育を間違えたのだか……」


 大きくため息を吐いたキャロライナのお説教は三十分ほどで終了し、説教終了と同時におにぎりを口にするキャロット。白亜も一緒に怒られていたがキャロットと同じようにおにぎりを口に運び尻尾を振り、その尻尾にじゃれる小雪。


「うむ、何やら安心する味なのじゃ」


「前に食べた豚汁に似ているが、こっちの方がさっぱりして食べやすいな」


「がはははは、やはり米は美味いのう。クロのお陰で農業の大切さと米の可能性が知れたわい」


 ロザリアにラルフとドランもおにぎりとお味噌汁を食べながら感想を言い合い、シャロンとメルフェルンも同じように朝食を口にしホッとしたのか瞼の重さを感じていた。


「丸一日飛んでおったからな。乗っていた二人も眠いのだろう」


「ふわぁ……すみません。落ちないとわかっていても眠る事はできませんでした……」


「それでしたら王宮に部屋を用意させましょう。そちらの方々も眠さの限界のようですし馬車を用意させましょう」


 シャロンの大きな欠伸に聖女ジュリアスが提案し、聖騎士数名が馬車の用意に走る。捕虜というよりも農作業用ゴーレムの改良研究者である四人も丸一日の空の旅に疲れているのか、おにぎりを持ったままうつらうつらとしており今にも寝落ちしそうであり聖女の提案に頭を下げお礼を言うシャロンとメルフェルン。


「うむ、我らも少し休みたいところじゃが、エルフェリーンさまに伝えたい事があるのじゃ」


「あの禍々しい瘴気を帯びた邪神像を思い出すだけでも身が震えるな……」


 二人が見た事をエルフェリーンへと伝えると目を閉じて考え込み、クロは女神ベステルから頼まれていた事を口にする。


「その事ですが、実は女神ベステルさまから女神の小部屋に収納して欲しいと頼まれました。危険なので手で触れずこれを使って収納しろと軍手を貰いましたけど……大丈夫ですよね?」


 クロは話しながらアイテムボックスから賜った軍手を取り出して目を開いたエルフェリーンに手渡す。


「これは面白いね! 聖属性が付与された手袋だよ! 使っている糸の素材が解らないけど呪いや瘴気なんかには強そうだね! これならあの禁書を掴んでも安全だぜ~読んじゃう? 読んじゃおうぜ~」


「読みませよ……それよりも女神の小部屋に入れろと言われていますけど、あの禁書が入っているのに邪神像を入れても問題ないですか? 混ぜるな危険とか、嫌ですよ……」


「それは大丈夫だと思うけど……困った時は本人に聞けばいいんだよ~クロだったら女神シールドを出せば教えてくれるだろ?」


 その言葉に目を見開き絶句する聖女ジュリアス。聖騎士たちも食事を終えておりエルフェリーンたちの話を耳にし邪神像やらの物騒な話や女神ベステルと交信ができるという事実を耳に入れ驚きの表情のまま固まる。


「そりゃできますけど……答えて貰うたびに料理と酒をたかられますよ」


「あははは、そうだね~それはクロの料理とお酒が美味しいのが悪いんだよ~悪いと言ってもいい意味で悪いからだぜ~神をも魅了する料理と酒を作れるクロを僕は誇らしく思うぜ~」


「喜んでいいのかわかりませんが、後で聞いてみましょう。それよりも今は料理の片づけですかね」


 立ち上がり空いている皿を集め始めたクロを見ながら聖女ジュリアスは自身が体験した天界での事や昨晩の料理や酒。更には朝食で食べた初めて見食べした料理を思い出す。


 英雄さまは自身を使徒ではないと否定しておりましたが、女神ベステルさまから直々に頼まれそれを遂行するのは、最早使徒さまです! 自覚がないだけなのでしょうか……


「クロだけ頼まれたのね。私だってその手袋が欲しかったわ!」


 白地に黄色のラインで手首の所を縁取られ指には黄色のイボが多くある軍手をエルフェリーンから受け取ったビスチェが口を尖らせ、クロは思う。


 それならその役は譲りたいと……


≪女神ベステルさまから個人的に依頼を受けるとか、やっぱりクロ先輩は凄いですね~≫


 隠れていたアイリーンが戻り文字を浮かせつつ、温かい緑茶をメリリから受け取り白い息を吐きながら口にする。


「うふふ、クロさまはやはり女神さまの使徒ですねぇ」


「いえ、違いますからね。お茶、ありがとうございます」


 クロもメリリの入れた緑茶を受け取り一口啜りほっこりとしながらも、ロザリアとラルフが話す瘴気を垂れ流す邪神像を想像する。


 邪神というからにはやっぱりおどろおどろしい感じなんだろうなぁ。アンデットなら女神シールドで対抗できるけど邪神というぐらいだから危険なんだろうな……

 はぁ……早く終わらせて春に向けてのポーション作りや状態異常関係のポーションに胃腸薬とか卸さないとだよな。春になればポンチーロンも来るだろうし、薬草畑と果樹園の堆肥も撒かなきゃならないし、色々と忙しくなるんだよな……

 春といえばアルラウネのアルーさんはアイリーンが起こしてくれるから大丈夫だと思うけど、また液体肥料を要求されるだろうから暇を見つけて魔力創造しないとだな……

そっか、春になるのか……山菜とかも採りに行くだろうからナナイさんの所にも寄って山菜の天ぷらに蕎麦打ちとかもできたら……


「馬車の準備が整いました!」


 ひとり思案し脱線するクロだったが、聖騎士が馬車の準備が終わった事を大声で伝え舟を漕ぎ始めたシャロンを視界に入れ近づき肩を揺する。


「ふわっ、えっ、クロさん……あれ? まだ夢………………」


「夢は馬車に乗ってクラブル聖国のお城へ行ってからだな。お城を宿代わりに使うのは申し訳ないけど聖女さまが許可してくれたから、立ち上がれるか?」


「えっ、あっ、はい………………」


 やや寝ぼけ気味なシャロンに手を貸し起き上がらせ、メルフェルンはメリリが軽々とお姫様抱っこするとクロの目の前に腐った文字が躍る。


≪はぁはぁはぁはぁ、ククククロ先輩は手だけじゃなく腰に手をまわして、もっとくっ付く感じでお願いします! シャロンくんはいい感じですよ~頬の染まり具合とか完璧です! クロ先輩は空気を読んで下さい! 呆れた顔じゃなくて目に力を入れ今にも襲い掛かる虎のような荒々しくも美しい表情をっ!!!≫


 腐った文字に呆れるクロが左手で糸を掴み被害者が出る前に回収しようとすると、浮かぶ文字の辺りが急に輝き天から光の筋が降り注ぎ現れるホーリーナイトのヴァル。


「主様! お待たせ致しました! 主様の守護者であるヴァルが戻って参りました! なっ!? 何ですこの糸はっ!!」


 クラブル聖国へ来る前に天使同士の会議があり渋々クロの元を離れ天界へと戻っていたヴァルが天界から降臨したのだが、降臨した場所が悪く腐った文字に絡め捕られ宙に捕獲されジタバタと足掻く。その姿はまるで蜘蛛の糸に引っ掛かった蝶のようで、悪い笑みを浮かべているアイリーンはまさに蜘蛛女といったところだろう。


 呆れながらも糸の手を伸ばしアイテムボックスのスキルで糸だけを収納すると涙目になりながらクロに感謝を伝え頭の上に着地するヴァル。


「主様! 感謝しますぞ!」


「感謝はいいから馬車に乗って王宮へ向かうからな~ほら、シャロンももう目が覚めただろ」


「は、はい……行きましょうか……」


 立ち上がったシャロンはクロから手を話すことはなく頬を染めたまま歩き出し、クロも息を荒げている腐ったアラクネの視線にダメージを受けるが、この場を素早く後にした方がダメージが少ないだろうと思い足を進める。


「キュウキュウ~」


「白亜さまもクロと一緒の馬車に乗るのだ! 待つのだ!」


 おにぎりを食べていた白亜は立ち上がり馬車へ移動するクロと一緒にいたいのか鳴き声を上げ飛び上がりクロの後頭部へとくっ付き、手に付いたコメの粘着力もあってかベタリという感触を額に受けつつ馬車に乗り込み、後でヴァルに浄化魔法を掛けてもらおうと思うのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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