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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十章 帝国の意地と闇ギルド
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魔道鎧2



 キャロットが飛び立ち如何にもな馬車を視界に捉えその周辺には三体の魔道鎧の姿があり、隣をターザン方式で移動するアイリーンと無言で頷き合うとその一体に蹴りを入れ着地する。

 アイリーンはキャロットの蹴りで吹き飛ばされた魔道鎧の頭部が吹き飛ぶ様に苦笑いを浮かべ、自身も一体に対して粘着性の糸を飛ばし両肩の動きを封じ、二体のまわりを大きくまわりながら糸を発射する。


「よく飛んだのだ! うわぁぁぁぁ、大変なのだ!?」


 吹き飛ばされた一体が果樹園の木に当たり止まったのだが、その木がへし折れ顔を青くするキャロット。


「これも全部お前たちが悪いのだ!」


 ビシッと魔道鎧を指して宣言するキャロットはピクピクとしか動いていないそれに対して腕だけ魔化し、巨大なドラゴンの腕を振り下ろし砕ける頭部。頭部には赤い魔石の様なものが付いていたがそれも完全に砕かれ、完全に機能を停止したのかピクリとも動かなくなる魔道鎧。


 一方、アイリーンは高速でグルグルと回り魔道鎧の動きを封じるが、一体の魔道鎧の左腕に装着されたバスターソードがオレンジ色に燃え上がり拘束していた糸を燃やし一歩前に踏み出でショットガンのような筒を前に構えると、アイリーン目がけ拳大の火球が発射される。


 思っていたよりも遥かに高性能ですね~動きは鈍いけどそれを補う硬さとパワーがあるし、火球を飛ばして遠距離攻撃もできるとか………………凄く欲しいです!


 目を輝かせながら火球を避けるアイリーン。着弾した後方では雪を積み上げた山があったのだが穴が開きその威力が窺える。


 直撃したらやばそうですね……ん? ああ、あの雪山は……これは頼るのもありですね~


 何やら思いついたのかアイリーンは足を止め穴の開いた雪山近くに足を進め、それを追い掛けやって来る魔道鎧。


「嬢ちゃん、これを見られたからには生きて返せないな」


「悪く思うなよ……」


 二体の魔道鎧から籠った声が響くなか、アイリーンは後方へ糸を飛ばし自身の声を糸に乗せる。


「まだ冬ですが起きて手伝って下さい。報酬は魔石ですよ~」


 小声で話すアイリーンに首を傾げる魔道鎧二体だったが、足を進めオレンジに輝くバスターソードを構えもう一人は火球の銃口を向ける。


「嬢ちゃんの速さと糸は脅威だが、糸が燃えるようじゃ勝ち目はないだろ」


 そう言いながら距離を詰める魔道鎧。オレンジに輝くバスターソードからは陽炎が立ち込め、アイリーンの持つ白薔薇の庭園で受けても火傷は確定的。下手したらそのまま折れてアイリーンも二つに分かれるだろう。


「ふわぁぁぁぁ、まだ雪が残っておるぞ! これ、アイリーン! 春になったら起こせと言ったであろう!」


 後方の雪山が吹き飛び顔を出したのは全身が緑色の少女であり、その目は紫色をしており体には無数の棘のついた蔓が撒きつけられ大きな欠伸をしながらもアイリーンに対して不機嫌な視線を向ける。


≪早く起こしたのは謝りますから、ちょっと手伝って下さい。燃える大きな剣と炎を飛ばしてきます。体は固く、弱点は機動力の低さです≫


 文字を飛ばすアイリーンにムッとした表情を浮かべながらも小さく頷くと周囲の雪が盛り上がり現れる無数の棘付きの蔓。それを鞭のように伸ばし一体の魔道鎧の右腕に巻き付けると強引に引き込む。地面が雪と水分を吸った土な事もあり体制を崩し滑る魔道鎧は叫び声を上げオレンジに輝くバスターソードを振り回し蔓を切ろうとするが、アイリーンが粘着性の糸を飛ばし肩の関節の動きを封じる。


「うおぉぉぉぉ、おい、早く助けろ!」


「わかってるが、繊細な動作が難しい。一度落ち着け! 今蔓を斬ってやるからっ!? おい、こっちにも蔓がっ!?」


 もう一体の足にも蔓が巻かれバランスを崩す魔道鎧。二体とも雪原に転がされジタバタと抵抗する。が、今度は空から一体の魔道鎧が落下し、あまりの出来事に抵抗する事を止めスクラップになった一体を見つめ頭がフリーズする魔道鎧の操縦者の二人。


「おいおい、何の冗談だよ……」


「重量のある魔道鎧が空から落下してくるとか……」


 言葉を漏らす魔道鎧たちの前に降り立ったのはキャロットであり、先ほど果樹をへし折った事を挽回しようと派手に助けに入ったのだ。


「任せるのだ! さっき此奴がリンゴの木を折ったのだ! 悪い奴なのだ!」


 自身の罪を擦り付け指差すキャロット。その間にも蔓が魔道鎧に巻き付き拘束し、アイリーンも粘着性のある糸を関節に飛ばし動きを封じる。オレンジに輝くバスターソードも肩が動かせなければ使用する事も出来ず、雪を溶かし地面を温めるだけであった。


≪もう大丈夫そうですね~頭の赤い魔石を外しましょうか≫


 白薔薇の庭園を抜き近づくアイリーンに対してガタガタと身を震わせる魔道鎧たち。


「や、やめろ! 頭の魔石は見せかけだから絶対に触れるな!」


「胸の透明な魔石を取ればゴーレムが停止する! 頭の魔石は絶対に取るなよ! 絶対だぞ!」


 最早バラエティー番組だなと思うアイリーンはガタガタ震える一体の魔道鎧の頭部にある魔石に白薔薇の庭園を差し込み外すと、輝いていたバスターソードは次第に熱を失う。


「くそがっ! 帝国潰しの暗殺計画がっ!」


「魔道鎧の有用性を示す絶好の機会だったのに……」


 二体目からも魔石を取り約束通りに魔石を手助けした者へ放り投げるアイリーン。


「アルーさん、ありがとうございました! 今度は春になったら声を掛けますからね~」


「ふわぁぁぁあぁ、そうしてちょうだい。私には寒すぎるから優しく雪をまたかけておいてね」


 拳大の魔石を受け取ったアルーは大事そうに両手で掴むと蔓を巻きつけ眠りに入る。このアルーと呼ばれる者はアルラウネと呼ばれる亜人種であり、元は食用に採取した蔓芋と呼ばれる植物型モンスターである。

 妖精たちが土に植え世話をしていたのだが秋の終わりごろに小さな少女の姿を取るようになり、農作業をする妖精たちやビスチェと仲が良く肥料を受け取りその姿を成長させている。寒さに弱い事もあり結界を施し雪で覆って冬眠をしていたのだが、アイリーンに呼ばれ姿を現したのだ。


「アルーは寝坊助なのだ」


≪この寒さは植物に厳しいですよ~では、こいつらを連行しましょうか≫


 動けない魔道鎧三体を完全に魔化したキャロットが引きずり家へと戻る二人。引きずりながらも魔道鎧の構造を確認するアイリーン。


 なるほど、正面のこの穴から視界を確保し、酸素を取り入れているのですね~関節はゴーレムと同じような球体関節で、鎧に施された赤い溝から魔石の魔力が流れて体を動かしていると……ふむふむ、胸にある無色の魔石はバッテリーなのかな? 詳しくはエルフェリーンさまが調べてくれますね~

 ふふ、これを見たルビーさんの反応が楽しみです~


 ドラゴンの姿で魔道鎧三体を引きずり帰宅すると涙を流す縛られた男がおり、その横ではバラバラに解体されている魔道鎧の残骸とテンションを上げているルビーとエルフェリーンがおり、新たに捕獲した魔道鎧を見つけたルビーは走り出す。


「こっちも分解しましょう!」


 その声にガタガタを振るえる魔道鎧の中の人。


「まずは安全確保だぞ。ほら、熊撃退スプレー」


 クロから魔力創造された熊撃退スプレーを持ち嬉しそうに向かって来るルビーの姿に顔を引き攣らせるアイリーンであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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