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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第九章 年末と新年へ
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天界でクリスマスを



「メリクリよ~~~~~~~~~~~~」


 天界へとやって来たクロたちを迎えたのは創造神ベステルの大声と多くの神たちからのクラッカーであった。


 パンパンと大きな音を立てるクラッカーの音に身を竦めるビスチェとシャロンに聖女レイチェルとアリル王女の専属メイドのアルベルタ。他の者たちはクラッカーの音よりもテンションを上げる神たちの奇行に驚いており口を半開きにさせ固まっている。


≪神様もクリスマスパーティーをするのですね……≫


 テンションを上げる神たちとは対照的に若干テンションを下げ始めたアイリーンの文字に、クロも面倒臭い事にならなければいいなと思いながら口を開く。


「あの、神さま方が異世界の神を称えるような祭りをしてもいいのですか?」


「何硬いこと言ってるのよ! 折角クロが私の為にクリスマスケーキを用意してくれるのなら楽しむべきでしょ! それともしんみりと干したイカと日本酒を飲む? 私は嫌いじゃないけど集まった神々はカー○ルさんのチキンに期待しているわよ」


 女神ベステルの言葉に他の神々も笑顔で縦に振り天界に訪れた者たちをエスコートするべく動き出す。


「アリルちゃんよく来ましたねぇ。ほらほら、こっちに来て下さいねぇ~。シャロン君も私は神なので性別とか気にしませんよ~」


 愛の女神フウリンがアリル王女とシャロンを手招きし笑顔で走り出すアリル王女。専属メイドのアルベルタはその後を追い、呼ばれたシャロンはクロへと視線を向けるが無言で頷かれメルフェルンと共に足を進める。


「エルフェリーンと教皇はこちらにどうぞ。教皇は天界へ来るのは初めてだったな」


「これは叡智の女神さま……私が天界へ来るには分不相応かと思いましたが使徒様と聖女に背を押され……」


「あまり多くのものが訪れて良い場所ではないが、教皇ならかまわないぞ。信仰心がそうのなどいう心算はないからな。楽しんで帰ってくれればそれでいい」


「そうだぜ~天界に難しい話を持ち込んだり空気を悪くしたり、マナー違反をしなければ問題ないぜ~今日はパーティーなんだから楽しまないと損だぜ~」


 叡智の女神ウィキールに誘われエルフェリーンと教皇が足を進める。その後を我が物顔で歩くキャロットは白亜を抱き締め、アイリーンは小雪を抱いたまま武具の女神フランベルジュと共に足を進める。


「使徒様……神々が浮足立っているような気が……」


「クリスマスパーティーですからね。たまにはいいのではないですか?」


「そうね! たまにはいいのよ! そう、たまにはね! だから聖女レイチェルも楽しみなさい! クロが美味しいケーキやチキンを出してくれるし、料理の女神ソルティーラも多くの料理を作ってくれているわ。お酒はクロが色々と出してくれるから楽しみなさいね!」


「何だろう……酒目当てで呼ばれている気がするが……」


「そんな事ないわよ~ほらほら、早くお酒を出さないと乾杯ができないわよ!」


 女神ベステルに背を押され広い会場を進むクロは多くの神々から会釈や言葉を掛けられ軽い会釈を返しながら席へと辿り着く。何故、会場には畳が敷かれた宴会場なのかは理解できないが一々考えると疲れるので考えないようにしながら座布団の上に腰を下ろすと、魔力創造でシャンパンや日本酒やウイスキーにカクテル缶を創造するクロ。


「クロに感謝なさい! お酒の殆どはクロが出してくれているからね~他にも天界で作っているワインや蒸留酒もあるからそれも飲みなさいよ~」


「ダンジョン神から提供された酒も多く獲り揃えておりますのでそちらもご賞味ください」


 女神ベステルに続きダンジョン農耕神も顔を出し会場の隅には多くの酒樽に酒瓶や缶が積み上がられ、その横にはビッフェ形式なのか多くの料理が並び料理の女神ソルティーラの姿もありクロへと小さく手を振る。


≪異世界というよりも日本のホテルの宴会場ですね……≫


 アイリーンが飛ばしてきた文字を目で追い確かにと思うクロは魔力創造を使いクリスマスケーキを量産する。自身の魔力量に気を付けながら魔力回復ポーションを手にしたクロに、愛の女神フウリンが肩に手を置くと魔力が流され「ありがとうございます」と口にするクロ。


「いえいえ~感謝するのはこちらですぅ。多くのお酒にケーキやチキン……異世界の料理や酒を提供して頂いているのですからぁ胸を張って下さいねぇ」


「異世界の料理や酒に目がないのは人だろうが神だろうが同じだからな。クロには感謝しているよ」


 叡智の女神ウィキールもクロの横に現れ腰を下ろすと丁寧に頭を下げ、クロはその思いに応えるよう某有名チキンをバーレル単位でいくつも魔力創造すると神たちから歓声が上がる。


「アレが秘伝のフライドチキン!」


「世界一有名なフライドチキン!」


「あのビスケットを食べて見たかったのよ!」


 神々が酒とケーキにバーレルをテーブル各所に運び終えると女神ベステルは立ち上がりシャンパンの瓶を掲げて口を開く。


「少し早いけどクリスマスよ! 普段から鬱憤が堪っているだろうけど騒いで飲んで忘れなさい! 異世界の神の誕生とか知ったこっちゃないっ! 美味い料理と酒飲んで、騒いで飲んで楽しむわよ! かんぱ~~~~~~~~い!!!」


 この時、クロは思った。


 只々、酒を飲み騒ぎたいだけだと……


 乾杯の声が重なり神々が酒を口にしてチキンを口にするとキャロットは我先にチキンを口にし、白亜も同じように手に取り大きな口を開け齧り付く。エルフェリーンも大きなチキンに齧り付き、それを見た教皇も同じように口にすると目を見開きその味に驚き、ビスチェやシャロンにメルフェルンもチキンを口にして表情を溶かす。


「ルビーも来ればよかったのにな……」


「お世話になった叔父さんの所へ行くの一片張りでしたね。私も畏れ多いと思いますがこれほど美味しい料理が口にできると思うと来て良かったです」


「サキュバスの国は養鶏を行っていますが、これほど美味しいチキンは初めて食べました」


 メルフェルンとシャロンが某有名フライドチキンを食べながらワインで流し込み、クロはルビーが天界へ行くことを辞退した時の事を思い出していた。


「クロは気にし過ぎだぜ~オーガの村でもクリスマスはするんだ。その時にまた食べさせてやればいいよ~」


「それもそうなんですけどね……メリリさんも王都へ来るのを嫌がっていましたし、新年はみんな揃って家でゆっくりしましょうね」


≪クロ先輩が何やらフラグ的な事を言っていますが、私もお正月はゆっくり過ごす派ですね~≫


「正月といえばおせち料理はもう用意しているのですか?」


 正月という単語に食いついたのは料理の女神ソルティーラであり、いつの間にかクロの横に座り目を輝かせている。


「おせちは和洋中で全く違うので好みが分かれますが、和風のなら少しお高い物からコンビニで売っているおひとり様ようの物も出せますよ」


 そう口にしながら魔力創造した二種類のおせちを女神ソルティーラに渡すと、何の躊躇いもなく一番上の重箱の蓋を開封する女神ベステル。


「おおお、見た目が宝石箱のようね。色のバランスもそうだけど輝いて見えるし、これは金粉……金すらも食すとか……日本料理は目でも楽しませてくれるわね。どれ、ぱくぱく!」


「クリスマスなのにおせちを食べないで下さいよ……」


 クロのツッコミを受けた女神ベステルは数の子を口にし、いつまでも咀嚼を繰り返すのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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