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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第九章 年末と新年へ
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次に行く場所が決まったようです



「それと忘れる前にダリル王子さまに献上したい物がありまして、」


 そう言いながら立ち上がり少し広い場所へ移動しアイテムボックスからスノーウルフの皮を取り出すクロ。乗用車がすっぽりと収まるほど巨大なスノーウルフは畳まれていても大きく白い毛皮の上には二本の角がある頭部が姿を現すと、再度ダリル王子はあんぐりと口を開ける。


「白く美しい毛皮に角が二本……スノーウルフでしょうか?」


「はい、ダリル王子が成人の儀の際に場所を案内したオーガの村の長であるナナイから預かったものです。つい先日、スノーウルフの群れがオーガの村を襲いその時に居合わせたリーダーの個体の皮です。簡単に鞣し乾かしていますが好きに加工できるようにとナナイからの提案で、広げるとかなり大きいので後で確認して下さい」


「私が倒したのだ! 大きいだけで弱いのだ!」


「キュウキュウ~」


 あんぐりと口を開けていたダリル王子はキャロットの言葉に更に驚き、国王や王妃も目を見開き固まる。


「それは凄いですわ。スノーウルフは氷の魔法を使い危険な魔物……それを弱いと……やはり『草原の若葉』は一流の冒険者を軽く超えて行きますわね」


 感心したように口を開くリゼザベール王妃に国王とカミュール王妃も我を取り戻し顔を立てに振り、ダリル王子も同じように顔を立てに振り口を開く。


「オーガの村にはお世話になりとても良くして頂きました。ナナイさんやオーガの皆さんは気さくに対応して頂き感謝していますが、私への贈り物なのですか?」


「ナナイからはダリル王子さまに期待していると申されていました。あれだけ大きな白百合の花を採取した事に敬意を払い、ターベスト王国の次期国王となるダリル王子さまの権威の象徴のひとつにして頂ければと思います。ああ、このナイフも付けますね」


 再生の短剣をおまけ扱いで献上するクロはスノーウルフの皮の上にナイフを置くと、顎が外れんばかりに口を開くダリル王子。


「く、クロさま、スノーウルフの皮だけでも価値がありますのに再生のナイフまで献上されては王家としても何かお返しを考えなくてはならなくなる案件なのですが……」


 王家の中でも一番腹が座っているリゼザベール王妃が顔を引き攣らせながら何とか口を開き、エクスヒールに匹敵する再生の短剣は受け取れないと言葉にする。


「いえ、自分たちにはアイリーンがエクスヒールを使えますし、ヴァルも聖魔法が使えますから持っていても宝の持ち腐れです。ポーションだって作れますので王家で上手く使って下さい。怪我で引退せざる負えなった騎士さんの治療もできると思いますよ」


「確かにその通りかもしれませんが……」


 眉間に深い皺を作るリゼザベール王妃。騎士の治療という提案もあってかこれ以上口が出せなくなり代わりに国王が口を開く。


「うむ……それであれば我らの気が治まらないのだが……ハミルかアリルの婚約というのもあるが……ひっ!?」


 婚約という単語に反応したエルフェリーンとビスチェが国王へ向け視線を鋭くし、シャロンは手にしていたクッキーを落とすが近くにいた白亜が素早く移動し口でキャッチし尻尾を振るい、アイリーンはシャロンのリアクションを見ながら多少腐り、小雪を仲良く撫でていた王女二人は婚約問う単語に違ったリアクションを取る。


「クロさまと婚約ですか? 私は構いませんがエルフェリーンさまを敵に回すほど父上は阿呆になったのですか?」


「婚約……それはどのようなお菓子なのでしょうか???」


 ハミル王女はエルフェリーンがクロを気に入っている事を知っておりもし自身と婚約でもしようものならこの国が見放されると女性特有の感を働かせ、アリル王女はクロ=美味しいお菓子という計算式しかできておらずある意味ピュアであった。


「本当に気にしないで下さい。この後はルビーの実家に行くんだよな?」


 話題を変えようとルビーへと話を振るクロだったが、メイドの一人がノックして中へと入り中にいるメイドに耳打ちをし、されたメイドは急ぎ国王の元へと走り口を開く。


「陛下、教会から教皇さまと聖女さまに聖騎士の方々が現れ、使徒様との対談を要求されています」


「使徒様だと……ああ、クロ殿の事だな……はぁ……天界に行ったアリルの事かと思ったがクロ殿が使徒様か……専属メイドのアルベルタもおったが……はぁ……この場に呼ぶ方が良いのか、それともクロ殿たちには教会へ行ってもらった方が良いのか……」


 腕組みをしながら悩む国王にエルフェリーンが口を開く。


「クロは天界に行く用事はないんだろ?」


「そうですね。おせちを奉納しろとの約束はありますが、まだ新年には日がありますしクリスマス料理やケーキを奉納する事は出来ますが、異世界の神様にキリストの神様を祝う料理とか不敬かな?」


≪ベステルさまなら喜びそうですけどね~≫


「そうだね~喜ぶとは思うけど……ん? どうかしたかな?」


 キラキラした瞳を向けるアリル王女はエルフェリーンの膝に掴まり口を開く。


「また神さまたちに会えますか? 会ってお礼が言えますか?」


「あはははは、この子は本当に良い子だね~皆がこの子のように優しければ戦争や奪い合いなんて起きないだろうね~うんうん、それなら教会へ行こうか。この子の為にも天界へ行って神たちにお礼を言うといいよ」


 エルフェリーンは目の前のアリル王女の頭を優しく撫でると王へと視線を向け、王は口を閉ざしたまま頭を縦に振り隣に座る王妃二人も微笑みを浮かべる。


「それならここにもケーキを少し出しておきますね。生モノなので早く食べて下さい」


 そう言いながら魔力創造でクリスマスケーキを創造するクロはケーキの箱を積み上げ始め、ガクガクと震えだすアリル王女の専属メイドであるアルベルタ。専属メイドという事もありアリル王女の天界行きが決定すればそれのお供という事も決定するのである。


「もう二回も行っているのだから心配ありませんよ。神々は基本的には……絡み酒でうっとうしいですが悪い事はしてきませんから……」


 協会の関係者が聞けば激怒しそうな発言だが、事実クロは料理を提供したり酒を求められたりお告げで呼び出されたりと迷惑を受けているのである。その代わりに色々とスキルやアイテムを授与されているが静かに暮らしたいと願うクロからしたらいい迷惑なのである。


「そ、そうか……では、そう教会の者たちに伝えよ」


「はっ!?」


 国王の言葉にメイドが動き出し退出すると積み上がったクリスマスケーキのひとつを開封するクロ。中にはイチゴのケーキが姿を現しサンタとトナカイの砂糖細工が乗り、チョコにはメリークリスマスと書かれた一般的にイメージするクリスマスケーキが顔を出す。他にもブッシュドノエルやデェフォルメされたトナカイの顔のケーキなどが現れテンションを上げるアイリーン。


≪これはどれも懐かしいケーキですね! 某有名店のケーキにコンビニのクリスマス商戦のケーキまでありますよ~クリスマスに向けテンションが上がってきました!≫


 室内に浮かぶ文字にクリスマスの事をアリル王女から聞かれ丁寧に教えるクロ。異世界の神の誕生を祝う祭りに国王や王妃たちは関心を集め色々と聞かれるクロは、嬉しそうにケーキを食べるハミル王女とアリル王女にお茶のおかわりを配るメイド長へと助けての視線を送りトイレへと逃げるのであった。








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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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