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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第九章 年末と新年へ
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今後の予定とクリスマス



 オーガの村での宴会を終えた翌日、案の定エルフェリーンは二日酔いになりオーガをまとめるナナイやシャロンとメルフェルンまでもが頭痛を訴え、アイリーンから状態回復魔法を受けたのだ。


「年が明けても僕はお酒を控えます……」


「私も昨日は調子に乗り過ぎました……深く反省しています……」


「ああ、昨日はクロが調子に乗って美味しいツマミを作り過ぎたからね。私まで飲み過ぎたよ……」


「あははは、たまには飲み過ぎる事もあるよ~そのためのアイリーンじゃないか~」


 と、反省するサキュバスとインキュバスや、人に責任を押し付けるオーガや、まったく反しせず人を当てにするハイエルフの言動に頭痛を覚えるクロやビスチェ。朝食は二日酔いでも食べられる温かい味噌味のうどんを用意していたクロに、別れが近い事を察してかラライがクロの後ろにピタリとくっ付きながら料理を手伝い、片付けも笑いながら笑顔で手を貸したのだ。


「ダリル王子には確りと届けますね。オーガの味噌も完成しましたし、来年はもっと多くの味噌を作りましょう」


「ああ、味噌汁や豚汁も美味かったが味噌煮込みうどんは気に入ったよ。寒い日にはピッタリの料理だったね」


≪私的にはうどんは醤油味派ですが、味噌味は体が温まりますね。七味多めがお勧めす!≫


「つるんとしながらも弾力のある麺がとても美味しかったです」


「熱々を頂くのは本当に嬉しい限りですね」


「クロ! またすぐ来てくれるよね? 年明けとかも来てくれるよね?」


 朝食で食べた味噌煮込みうどんの話をしているとクロの横にぴったりとくっ付き見上げながら話すラライ。クロはその頭を優しく撫でながら口を開く。


「行けたらな。これから家に帰ったらダリル王子に毛皮を献上して教会にも顔を出す予定だし、年が明けてからも色々とやる事はあるな。ユキノシタの処理やポーション作りにどぶろくもまた作らないとだしな。行ける時は行くから風邪引かずにいろよ」


「うん! 約束だからね!」


「約束だな。あっ、年末といえばクリスマス……」


 ラライとの会話でクリスマスを思い出すクロ。


≪いいですね! クリスマス会しましょうよ! 互いにプレゼントを持ち寄って交換してケーキを食べましょう!≫


 「ケーキ!」とビスチェとエルフェリーンにシャロンの声が重なり、オーガの子供たちからもケーキコールが起こるとラライがキラキラした瞳をクロへ向ける。


「そうなると多くのケーキを用意しないとだな。他にも鳥の丸焼きやオードブルなんかも……ああ、でも……」


「ん? 何か問題でもあるのかな?」


 言い淀むクロにエルフェリーンが頭を傾げる。


「いえ、また飲み会になると思うと………………」


「あはははは、クロは心配し過ぎだよ~ほら、僕はこんなにもピンピンしているぜ~」


 その場で軽くジャンプして見せるエルフェリーンに一時間前はゾンビのようなうめき声を上げていたのにと思うクロ。


「た、確かに僕も飲み過ぎてしまいました……」


「私は暫く禁酒致します……」


 シャロンやメルフェルンからは反省の言葉を受け、この二人なら次からは飲み過ぎるという事もないとホッとするのだが、一番の心配のタネであるエルフェリーンが反省しない事に危機感を覚えるクロ。


≪クリスマス会はお酒なしでもできますよ~適当なジュースやコンビニで売ってるノンアルコールのシャンパンとかあるじゃないですか~≫


 アイリーンからの助言に頭を縦に振るクロは絶望した表情を浮かべるエルフェリーンとビスチェには触れず「それならクリスマス会をするか!」と口にするとオーガの子供たちは盛り上がり口々に「クリスマス!」と叫びながら走り出す。


「盛り上がっているところ悪いが、クリスマスとは何なんだい? 酒が飲めないのは解ったが何をするのか解らんが……」


≪クリスマスは………………何ですかね? もみの木を装飾してプレゼント交換をしてケーキを食べる日?≫


 浮かぶ文字を見ても意味が解らなかったナナイがクロへと視線を向けると、エルフェリーンが腰に抱き着いており「少しだけ~少しだけ~お酒は少しだけ~」と子供のように駄々を捏ねている。


「クリスマスはキリストの誕生祭ですね。あっちの世界で生まれた凄い人を祭る日で、プレゼントを贈るようになったのは貧しい子供たちの為に偉い人がプレゼントを贈ったのが由来とか聞いた事がありますね。サンタが良い子にしていた子供にプレゼント送る日っていうのもありますね」


「サンタ?」


≪赤い服をした白髭の不審者です!≫


「不審者っていうなよ……まあ、人の家に上がって勝手にプレゼントをするのは不審者かもしれないが……」


「クロ~クロ~無視しないでよ~僕はそんな卑劣な弟子を持った記憶はないぜ~」


「そ、そうよ! お酒禁止は酷いわ! 私は二日酔いするほど飲まないから師匠だけにしてよ!」


「なっ!? ビスチェにまで裏切られるなんてっ!! クロ~クロ~白亜からも言っておくれよ~」


「キュウキュウ~」


「白亜さまはケーキがあればいいと言っているのだ! 肉もあればもっといいのだ!」


 腰に抱き着き「クリスマスには酒を」と強請るエルフェリーン。ビスチェは早々に裏切り二日酔いしない体質だから関係ないと言い張り、白亜とキャロットは酒よりも甘味と肉である。


「で、いつがクリスマス何だい?」


 ナナイからの質問に年末から逆算するクロは指折り日にちを数える。


「えっと、四日後ですね。食材はギガアリゲーターの肉がまだまだ余っていますからそれをから揚げやオードブルに使って、ケーキは魔力創造で作りますのでもみの木……」


≪もみの木かは解りませんが適当な大きさの木を広場の中心に立てて貰えば、私が糸で適当に装飾品を固定しますよ~子供たちには折り紙とかで色々作ってもらえばいいじゃないですか≫


「それならクリスマスらしくなるな! 折り紙とそれっぽい雑誌があったはず……」


 魔力創造で折り紙にハサミとノリに雑誌を作りだすと、雑誌のクリスマス特集『園児と一緒に飾り付け』という特集記事のページを開くクロ。


≪何でクロ先輩が育児雑誌を……まさか! あっちに現地妻が!?≫


「何でそうなるんだよ……妻がいるならこっちに残らずに帰るだろ……」


≪確かに……良かったですねシャロンくん!≫


「えっ!? あ、はい……」


 頬を赤くしながら勢いで返事をするシャロン。それを見てニヤニヤが抑えきれないアイリーン。クロは触れないようにしてナナイに雑誌を見せながら折り紙で作る装飾品について説明する。


「へぇ~面白いもんだね。前に折り紙を見たが色々と作れるもんだね……」


「前はクロに鶴を教わったよ! ヒコーキも!」


「ヒコーキ!」


「よく飛んだよね~」


「クロのは竈に突っ込んだよね~」


 子供たちが思い出したように口を開き笑い合い、オーガの村でのクリスマス会が決まりそれに向けあれこれと思案するクロ。


 ケーキは予め魔力創造で準備し、料理はオーガの主婦たちと共同で作り、飲み物も……エルフェリーンさまはまだ腰にぶら下がって……はぁ……アイリーンのエクスヒールがあれば問題ないにしてもお酒の飲み過ぎはなぁ……プレゼントはどうするか……


 ひとり悩みながら思案しているとヴァルが目の前に現れ口を開く。


「そろそろ戻られないとメリリさまやルビーさまが心配しませんか?」


 スノーウルフ討伐の事もありクロたちはエルフェリーンの転移魔法で錬金工房『草原の若葉』へと帰還するのだった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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