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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第九章 年末と新年へ
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痛風と正月料理



「へぇ~尿酸値を下げれば痛風の発症が防げるんだね! これは凄い事だよ! 貴族の中には痛風で死ぬほど痛い思いをしている者が多いからね~」


「パパも側近に肩を貸してもらって移動してたわ。風が吹くだけで痛いとか言っていたけど……お酒が原因なのね……」


「お酒以外にもプリン体を多く含む食品をあまり摂取しないとか、野菜を多く摂取するとか、アルカリ性の物を多く食べると結晶化したプリン体が溶けやすいとかありますね」


 クロの説明を聞きながら尿酸値を下げるサプリを見つめるエルフェリーンとビスチェ。医薬部外品なので効果は劇的ではないが確実に尿酸値を下げることができるサプリの説明文やら主成分をクロに翻訳させ話を聞いている。


 痛風とは食事や体内で作られるプリン体が体の一部(特に足の親指の付け根が多い)で結晶化し、炎症を起こし、何らかの衝撃などでその結晶が剥がれ体内の抗体が攻撃をして起こるのが痛風発作である。

 プリン体は筋トレなどでも多く作られ痩せているマッチョでも痛風になる危険性が高く、日ごろからアルカリ性食品や飲料を飲む習慣があればある程度は防ぐことも可能である。


≪牛乳が効くとか聞いたことがありますね≫


「牛乳はアルカリ性だからな。朝と夜に飲むだけでも尿酸値は下がり痛風発作が起こりにくいとか聞くな。ただ、やっぱりお酒を飲み過ぎが一番危険なんだよ。肝臓を悪くするとそれだけでも危険だし、痛風から糖尿病に発展したり、肝臓病に発展したりな。適度な飲酒は体に良いとされているが連日の飲み会を見ていると心配にもなりますよ」


 クロが師であるエルフェリーンへと視線を向けると、あからさまに目を逸らす姿に大きなため息を吐く。


「エクスヒール!」


 急な回復魔法に呆気に取られるエルフェリーンだったがアイリーンからの気遣いに笑い出し、回復魔法を掛けたアイリーンも一緒に笑い始める。


「あはははは、別に僕は元気だよ~それなのに高位な回復魔法を掛けるなんて教会の回復魔導士が聞いたら笑われちゃうぜ~」


≪ふふふ、クロ先輩が心配していましたからね~これで今晩も飲み会ですね!≫


「飲み会ですねって……はぁ……痛風対策とはいいませんが、コンニャクにヒジキや海藻を使った料理を考えるか……」


 痛風に効果があると言われるアルカリ性食品を考え始めたクロにエルフェリーンとアイリーンは笑いながら「宴会、宴会」と楽しそうに連呼し、その発言をオーガの子供たちが真似して叫ぶと皮を鞣していたオーガの大人たちまでもが嬉しそうに連呼し始め、オーガの村は朝から宴会コールが響き渡り今夜は確実に宴会が開催されることだろう。


「宴会といえばもうすぐ新年よね!」


≪こっちの世界でも新年はやっぱり盛り上がるのですか?≫


「ん? いや、こっちの新年は地味だな。大晦日の日は何もやらないし、年が明けてもみんなで一才年を取るだけだしな。この辺りは雪が積もるから外には出ないし、王都もお祭りムードというよりかは寒くて人が出歩かないからな。屋台に食事に行くぐらいじゃないか?」


「サキュバニア帝国も同じですね。雪が積もるような事はありませんが、寒いので人々の足は重くなりますからあまりお金が動かないと聞きますよ」


「うちも同じだったのだ! みんなで白亜さまに新年の挨拶をして少しだけ豪華な食事が出るぐらいなのだ! 白亜さまをご尊顔できる貴重な日だったのだ!」


「キュウキュウ~」


「みんないっぱいだからその日は怖かったと言っているのだ……怖かったのだ!? 来年からは白亜さまを怖がらせるイベントは中止なのだ!」


≪正月料理もない感じですか?≫


「ないな。干し肉や乾燥野菜を戻してから似て食べて、酒を軽く飲むぐらいじゃないか?」


≪おせちやオードブル……おもち……お雑煮……お年玉……≫


 肩を落として文字を浮かべるアイリーンに日本のお正月を思い出すクロ。自身でバイトをしている事もあり、年の離れた妹へお年玉をあげたりお宮参りへいったりとそれなりに兄として行動していたのだ。


「おせちは去年も作ったから作るけど、代表的なおせち料理はコンビニの商品を重箱に入れ替えるだけだからあまり期待するなよ」


≪いえいえ、それでも十分ですよ~黒豆の煮物とか手作りは大変だと聞いた事がありますし、昆布巻きや数の子とか素人が作れるとは思いませんよ~自分的には洋風のおせちがいいですし、おもちですよ、おもち! きな粉もちに磯部に砂糖醤油に辛味もち! おもちこそ正月じゃないですか!≫


「主様! 創造神ベステルさまからの神託です! おせちとおもちを新年に奉納しろとの事です! 主様!」


 アイリーンが浮かべた文字に引っ掛かりながらも神託を伝えるヴァルの行動に、読んでいた途中の文字を見つめながらおもち各種は用意しようと思うクロ。


「おもちは去年も食べたぜ~気を付けないと喉に引っ掛かるから注意だぜ~」


「四角いお餅が膨らむ様子は見ていて面白かったわ! はじめは固いのに柔らかくなると膨らむのよ!」


 エルフェリーンとビスチェの言葉におもちを食べた事のないシャロンとメルフェルンにキャロットが頭を傾げ、白亜は甘えた鳴き声を上げクロの足にしがみ付く。


「キュウ~キュウ~」


「白亜さまはオモチが食べたいと言っているのだ! クロは用意するべきなのだ!」


 キャロットが白亜の思いを言葉にするとクロは魔力創造で袋入りのお餅を創造するとアイリーンがテンションを上げ手にすると開封して見せる。


「お餅です! これがお餅です!」


 テンションが上がり声で叫ぶアイリーンに昼食は餅を焼きナナイたちに提供しようと思うクロ。頭の隅にあったアルカリ性の海藻料理の事はどこへやら魔力創造でお餅を量産する。


「クロさん、あまり無理してはまた倒れますよ!」


「そうです! この前もそれで酷い目にあったじゃないですか!」


 シャロンとメルフェルンから魔力創造で量産していると注意するよう声が飛びその手を止めるがビスチェが口を開く。


「それもあるけど自分の魔力量を常に把握するのは大事なことよ! クロは少しでも疲労を感じたら魔力創造を一度止める事! 魔力消耗による疲労は解りやすいはずだから無理して魔力を使わない!」


「そうだぜ~みんなが喜ぶとわかっていても手を止めて自分が倒れたら悲しむ人もいるからね~僕を悲しませたらダメだぜ~」


 ビスチェとエルフェリーンからも心配の声が掛かり返事をすると一度落ち着き、自身の魔力量を考えながらゆっくりと魔力創造してお餅を量産するクロ。


「まだまだいけますね……やっぱり総合的な魔力量が増えた気がします……」


「主様、それは自分を召喚したことによる弊害だと思われます。自分はホーリーナイトとして生まれ変わり創造神ベステルさまから多くの魔力が入る器へと進化して頂きました。自分の魔力は主様と繋がっていますので主様の魔力が少なくなると自分の魔力が送られます! 大船に乗った心算で魔力創造をして頂ければと」


 新たな事実にクロは魔力創造の手を止め、目の前に浮くゆるキャラホーリーナイトに両手を添えると口を開く。


「魔力を使い過ぎてヴァルが消えるような事はないよな?」


「そ、それは……」


「はぁ……ヴァルの魔力は多いと思うけど半分を切る前に言ってくれ。これは主としての命令だからな!」


「はっ!? 確実に伝えさせていただきます!」


 手に収まるゆるキャラの目が薄っすらと輝き頬を伝う涙。初めて受けた真面な命令が自信を守る為と知り、心中で歓喜し瞳からは涙が流れたのだ。


≪これってアレですよね。スマホと予備モバイルバッテリー的なことですよね≫


 浮かぶ文字がいい感じだった空気を壊し、クロはアイリーンにはずんだ餅風のワサビ餅を用意しようと心に決めるのだった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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