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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第九章 年末と新年へ
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女神に聞いてみよう



夕食を終える頃には日も落ちクロたちはナナイの家に案内され、まだ騒ぎ足りないオーガも多く村の中心では酒を飲み続けており、時折オーガに伝わる歌が耳に届く。


「キュウワワワァ~」


「大きな欠伸だな。ほら、ラライと一緒に寝るんだろ」


「キュウキュウ~」


クロの膝の上で甘えた声を上げながらもウトウトし始めた白亜。ラライも成人したてながらもナナイに習い村の長になるべく籠城戦の指揮を間近で見つめ緊張を強いられ疲れ眠い目を擦っている。


「白亜さまもラライも一緒に行くのだ」


白亜を優しく抱き上げたキャロットはラライを連れ布団の敷いてある奥の部屋へと姿を消す。キャロットも夕食の途中から満腹になり欠伸を連発し、魔化して戦い柵を治す作業に疲れていたのだろう。


≪お子様も寝た事ですし、ここからは大人の時間ですね~≫


アイリーンが浮かべた文字を掴んだクロは丸めて囲炉裏に入れると一緒で燃え上がる。


「スノーウルフはこの辺りで見かける魔物じゃないけど何かあったのかしら?」


ビスチェが話を切り出し囲炉裏に腰を下ろすナナイは口を開く。


「何男も前にはぐれの個体が現れた事があったが、あんなにも多くの集団は初めてだね。群れのリーダー格がいた事も考えると集団で巣を追われたか、大進行スタンピートの兆候か……」


眉間に皺を寄せるナナイはクロが提供した缶ビールを口につけ、囲炉裏で炙るあたりめを口に運ぶ。


≪私にもスルメ下さいよ~大人の時間はスルメ下さいよ~≫


「ほれ、大人の時間とかいうな。子供は確かに寝たがこれはおつまみなんだからな」


「炙ると少し柔らかくなって美味しいわね」


「香ばしい匂いは酒とも相性がいいな」


≪何だか大人って感じがしていいですよね~≫


ズレた話題を戻すべくクロは炙ったあたりめの横にマヨを添え七味を振りかけ口を開く。


「本来ならどのあたりに住む魔物なんだ?」


「スノーウルフは北の山三つほど上がった場所に住む魔物だな。あの辺りは山脈があるから人は近づかないし亜人種も暮らしてはいないはずだよ。山を越えれば巨人やイエティーと呼ばれる種族が多くいると聞くけど行った事はないね」


「そうなると明日は師匠と合流して北の山の調査かしら……危険な魔物に追われてきたのならそれを討伐した方がいいわね……」


ビスチェも眉間に皺を寄せながら白ワインを口にして炙ったあたりめにマヨを付け口に運ぶ。


「エルフェリーンさまが来るのなら大丈夫だと思うが、北の山には危険なホワイトシープやツインテールがいるから注意しなよ」


≪ホワイトシープ? ツインテール? 名前は可愛いですね!≫


「ホワイトシープは山羊に似た姿で氷の塊を飛ばしてくる厄介な魔物だね。ツインテールは尻尾が二本ある狐でこいつも魔術を使うからね。幻術を使って崖へ誘導する危険な魔物さ。他にも肉食性の植物の魔物に岩に擬態したリクガメの魔物なんかも多くいるね。夜になれば梟の魔物や野生のグリフォンなんかも……アイリーンは何で嬉しそうな顔をしている?」


話を聞きながら笑みを浮かべるアイリーンに思わず疑問をぶつけるナナイ。


≪グリフォン可愛いじゃないですか! 梟とかも目が可愛いですよ!≫


浮かぶ文字に呆れた顔をするナナイ。アイリーンが喜びながら甘いカクテル系の缶を飲み干すとグリフォンの可愛い仕草を文字として浮かべる。


≪ですから~グリフォンは喉を撫でると喜びますし、鳴き声も可愛いですし、シャロンさんが見えると顔を揺らして近づくのを待つ仕草とか可愛すぎますよ~梟も目がぱっちりで鳴き声も可愛いですし、爪とかも鋭さの中に貴賓があって最高ですよ~≫


新しいカクテル系の缶を手にするアイリーンはやや酔いが回ったのか頬を染める。


「今はグリフォンと梟の可愛らしさじゃなくてだな、スノーウルフを追い出した魔物? についてだろ」


≪いっそ女神シールドを出して聞いてみたらいいじゃないですかぁ~ぷはぁ~≫


缶を傾けながら文字を浮かべるアイリーンに確かにと思うクロは女神シールドを展開する。すると女神シールドに吹き出しが現れ文字が現れる。


(スノーウルフが逃げ出したのは阿呆な古龍が原因ね。ここより北の山脈で古龍が集まって酒を飲み交わしているのよ。数百年に一度集まり情報交換したり殴り合ったり宴会を開いたり、まったく迷惑な話なのよ! 大体、古龍なら長距離念話で情報交換ができるでしょうに態々会ってまで……はぁ……そのせいでスノーウルフが逃げ出したわ。他の魔物たちは巣に引きこもっているから安心ね。大進行スタンピートが起こる様な事はないから安心なさい。

それと原初の炎は鍛冶場で使うと便利だから炉に入れておくといいわよ。って、何でフウリンが……)


女神シールドに描かれていた女神ベステルだったが、愛の女神フウリンに変わり新たな吹き出しに文字が浮き上がる。


(少しだけぇ私にも話させて下さいねぇ。ダンジョン神から伝言がありますぅ。海のダンジョン改めぇ、料理のダンジョンでは多くの海エルフが攻略に乗り込みぃ十九階層まで攻略されましたぁ。パチパチパチパチ。

二十階層のボスモンスターに苦戦していますがぁあの仕様は鬼畜だと思いますぅ。ぬるぬる滑る塔の上に巨大なデビルオクトパスを配置してぇ、階段からはヌルヌルする液体が流れぇ、色の違う階段を踏むと段がなくなりぃ滑り落ちるとかぁ無理ですよぉ。

この案を出したクロさんはぁ本当に性格が歪んでいますねぇ。見ている方は面白いですけどねぇ。今度天界に来た時に面白い場面を集めて鑑賞会をしましょうねぇ。

それとぉ他のダンジョンでも調味料を宝箱に入れてぇ好評だそうですよぉ。多くの貴族が大金を出してぇ買い取っているそうですよぉ。冒険者ギルドにはぁ調味料専門の部署もできてぇ盛り上がっていますぅ。これもクロさんのお陰とダンジョン神は喜んでいましたよぉ)


愛の女神フウリンからの報告にクロはそんな提案もしたなと思いながら手にしているビールを呷る。


「ちょっと、クロ! ヌルヌルの階段って何っ!? そんなの空を飛べないと攻略できないじゃない!」


≪ヌルヌル階段はバラエティー番組で見ましたよ~一度は体験してみたいですね~クロさんのアイディアに感心ですよ~≫


「クロは神さま方に加えてダンジョンにも意見を出すほどに……お人好しで心配していたが、今じゃ違う意味で心配だよ……」


各々に違うリアクションを取られ心配されるクロは、次のビールの缶を開けながら現実逃避気味に貝を網に乗せ焼き始めるのだった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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