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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第九章 年末と新年へ
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炬燵石と宝珠



「ふぅ~料理も素晴らしかったのですが、この炬燵という物は本当に素晴らしいですね」


 すき焼きの〆まで食べ終えたメリリは足が延ばせる掘り炬燵の温かさに喜んでいた。他にも冷え性なシャロンやメルフェルンはもちろんのこと、エルフェリーンやビスチェも足元が温かい炬燵に入り席から動こうとはせず晩酌を続けている。


≪それにしても床の上に床を作る事で掘り炬燵にするとは面白い事を考えましたね~≫


「ここは吹き抜けだから座る分だけ高くしても圧迫感が出ないだろ。日本の家屋じゃ無理な発想だよな」


≪アパートやマンション住じゃ無理ですね~≫


「暖炉で温めた石を入れるという発想も素晴らしいと思います! これなら火災の心配はありませんし、中に潜って窒息する事もありませんね!」


 ルビーの言葉に暖炉へと視線を移すクロは暖炉の内壁に積み上げられた赤く丸い石を見つめ口を開く。


「あの不思議石のお陰だな」


「ああ、まだ名前がなかったね~あれは魔力を使い終わった火属性の魔石と少量のミスリルに大理石の粉末を混ぜて固めたものだぜ~ああやって暖炉で熱すれば熱を集めてゆっくりと放熱するからね~名前を付けるとしたら……炬燵石かな~」


「炬燵石は温かいのだ!」


「キュウキュウ~」


 顔だけ出して炬燵に入るキャロットと白亜は既に炬燵上級者なのだろう。


≪それにしても面白い形にしましたよね~コの字型の炬燵とか初めて見ますよ。炬燵カウンターですか?≫


「ここは人数もいるし広い方がいいだろ。それにこう寒いと動きたくないからな」


≪動きたくないのとコの字型が関係ありますか?≫


「あるわね! クロ、冷たいお水が飲みたいわ!」


 ビスチェの言葉にコの字型の開いた部分に座っていたが立ち上がりキッチンへと足を運ぶ。


≪なるほど、クロ先輩が自ら動くためにコの字型にしたのか……≫


「うふふ、お鍋を作り様子を見るのもクロさまがして頂きましたね。このテーブルは料理をしながら皆さま方に食べさせるには丁度いいのかもしれませんね~」


 微笑みながら手元の食べ終えた食器を集めるメリリは初めて食べたすき焼きの余韻と炬燵の温かさに尾を引かれ、アイリーンやビスチェも同じように近くの食器を集めながら温かい炬燵を堪能する。


「ほい、冷たい水な。食器を持って行きますね」


 トレーに食器を積み上げるクロに罪悪感を覚えたメリリとメルフェルンが立ち上がろうとするが「今日は食器が少ないから大丈夫ですよ」とクロが口にして浮かせた腰を下ろす。


「アイリーンは食器浄化をお願いな」


≪浄化の光よ~ふぅ……お腹がいっぱいで魔法を使うと苦しいです……≫


「大丈夫か?」


≪はい……大丈夫ですよ~食べ過ぎただけですから……それに小雪もうとうとして、このままじゃ寝てしまいそうですね~≫


「炬燵で寝ると風邪を引くからな~眠たくなったら自室に戻れよな。ああ、それにお風呂も入ってないだろ」


 トレーに乗せた食器を見ながら振り向くと誰もがクロから視線を外し明後日の方へ向く。


「炬燵で寝る前に白亜とキャロットは先にお風呂だな」


 その言葉に眠ったふりをするキャロットと白亜。


「もう寝てるのだ!」


「キュウキュウ!」


≪ビックリするぐらい嘘が下手ですね……≫


 アイリーンに指摘されパッと目を開き体を起こすキャロット。


「そんな事を言うからウソがばれるのだ! アイリーンが先に入るといいのだ!」


≪私は食休みをしますね~今日は本当に食べ過ぎました……反省です……≫


 口元を抑えながら文字を浮かせるアイリーンに、シャロンとメルフェルンも口を開く。


「すき焼きは次々とクロさんが入れてくれるから食べ過ぎてしまいますね……」


「お肉が柔らかく生卵につけるというのも斬新でした……私も今日は食べ過ぎです……」


 シャロンとメルフェルンは普段から自己管理ができており食べ過ぎると言うことはあまりないのだが、すき焼きという料理は肉に火を入れ過ぎないようにするためクロから火が入った肉を入れられ食べ過ぎたのだろう。特にシャロンはクロから入れられるたびに嬉しそうな表情を浮かべるのでクロも嬉しくなり普段よりも多く食べてしまったのだろう。


「最後の卵とじが最高に美味しかったわね」


「玉子が半熟で柔らかいお肉とお豆腐にネギが美味しかったぜ~つるんと口に入って最高だったよ~」


 ビスチェとエルフェリーンも満足したのかお腹を摩り、だらしない顔で〆の卵とじを思い返している。


≪てっきりうどんで〆るかと思いましたが卵とじなのですね~≫


「ああ、うどんも美味いけど卵とじの方が最後まで残さず食べられる気が、ん? 召喚の宝珠が帰って来たな。何々、シャドーナイトは相性が悪いからこっちを授けるか、どれどれ」


 浄化魔法をかけた食器の汚れを確認しながら片付けていたクロはアイテムボックスからのメッセージに気が付き手を止め、女神ベステルからのメッセージを読み上げ新たに加わった宝珠をアイテムボックスから取り出す。


「真白だな……」


 拳大の真珠の様な宝珠を持ち師であるエルフェリーンの元へ向かうクロ。


「これが新たに送られてきた宝珠かぁ、どれどれ鑑定………………へぇ~これはホーリーナイトを召喚できる宝珠だぜ~シャドーナイトは闇属性だったけど、こっちは光属性だね。これならクロと相性がいいし女神シールドで消滅する事もないぜ~」


「ホーリーナイト……神々を守る天使の騎士……」


「神殿とかに彫刻がありますよね! 美しい女性の戦士で人々を守るとおとぎ話で聞いた事があります!」


「うふふ、ホーリーナイトは神さまが遣わす最強の天使……クロさまは神さまから好かれているのですね~」


≪好かれているというよりは貢がされていると言った方が……≫


 アイリーンの文字に顔を引き攣らせるクロ。


「ホーリーナイトなら危険はないだろうし、そっちの広い場所で召喚してみようぜ~」


 興味があるのかワクワクとした表情を浮かべるエルフェリーン。炬燵を設置した事でリビングのキッチン近くにはスペースがなく南側へと移動して白い宝珠に魔力を注ぎ入れるクロ。


「これはシャドーナイトの時よりも魔力を持って行かれ、」


 宝珠から光が溢れあまりの眩しさに目を閉じ、それが治まるとチカチカとした視界の中で声が響く。


「我が主よ! 何卒ご命令を!」


 まだ回復しきれていないクロの目の前には白く美しい鎧と六枚の翼を背にし、手にはランスと呼ばれる三角錐の槍を持つ………………


≪ゆるキャラですね……≫


 三十センチほどの身長とゆるい人形のような質感の肌に鎧。宙に浮きながら片膝を付く不思議生物に唖然とするクロ。


「何これ……ホーリーナイトというよりは精霊かな?」


「まったく強さを感じさせないナイトね」


 エルフェリーンとビスチェの言葉にプルプルと震えるゆるキャラ天使ナイト。


「えっと、これから宜しくな」


 クロの言葉に伏せていた顔を上げクロをキラキラした瞳で見つめる。


「この命尽きるまでっ!」


 大きな声で叫びクロへの忠誠心が高いことをエルフェリーンが安堵していると、白亜が鳴き声を上げる。


「キュキュウ!」


「可愛いと言っているのだ! 私は白亜さまの方が可愛いと思うのだ!」


 宙に浮くゆるキャラ騎士の下で目を輝かせる白亜と、その白亜の左右に動く尻尾を見つめて顔を左右に動かすキャロット。


「君はホーリーナイトなのかな?」


「はっ! 種族的にはホーリーナイトですがクロさまに仕えるべく創造神さまから特別仕様にしていただきました!」

 

 特別仕様という単語にクロはおまけ程度の強さなのかと推測するのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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