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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第八章 南国のハイエルフ
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ダンジョン会議



「では、一階は今のままにして、二階から二十階までは深くても腰までの深さにするという事で、十階には冷めた体を温める温泉を用意すると……」


≪まさか、体温調節の場が必要になるとは思わなかった……クロ殿の助言がなければ気が付くことはなかったな……≫


 キョルシーを連れたダンジョン農法神が一階層へと向かい、クロとダンジョン神は海のダンジョンを改装すべく意見を交わしていた。


「海などは直接水に触れるので体温が下がりやすいですね。雪山などはそれに応じた準備もできますが、水に直接触れるのとでは体温の下がり方には差があると思います」


≪確かに氷のダンジョンに来る冒険者たちは暖かな装備をして魔道具や薪などを使い暖を取っているな……はじめから濡れる覚悟をしたところで濡れた装備からは体温が奪われ動きも阻害されては戦うどころではなくなるな……≫


「夜の海は本当に危険なので五十階層以降にするとして、水中でも明かりが確保できるアイテムもあれば便利ですね」


≪夜の海……海中はそれこそ暗闇に閉ざされ、上下左右もわからなくなるな……いっそ、海中で呼吸ができる魔道具でもあれば……≫


「それがあれば確かに攻略が捗りますね……」


≪三十階から四十階は多くの小島と浅瀬を作り海からの魔物や砂に擬態する魔物を配置する≫


「地球の海ではエイなど尻尾の付け根に毒があってそれを踏んで亡くなる人もいましたが……」


≪確かに海のダンジョンに挑むのに重装備は……重い鉄製のブーツを履いて移動はできても海中では沈むだろうからな……やはり難易度を下げるべきか……≫


「ダンジョンは慎重に進む事を心がけますが、罠などはどうするのですか?」


≪現状では矢や落とし穴に転移や魔物を呼ぶ罠などが配置されているな≫


「折角の海ですから水を使った罠でどうですか? ヌルヌルする液体が吹き出したり、滑る足場や雨が降り続いたり……」


≪滑る足場は氷のダンジョンでも使用したがあれは傑作であったな。それにしてもヌルヌルする液体? 意味があるのか?≫


「その液体が掛かると滑って転んだり、手に持つ武器を落としてしまったりですかね……雨が降り続くのは地味にきついですね。体温を奪うのはもちろんですが、視界が悪くなりますし足場も悪くなりますから」


≪ヌルヌルと雨は採用だな……そうだ! 宝箱の中身も意見が聞きたいのだ。何か良い案を期待する≫


「宝箱ですか……ああ、きっとエルファーレさまたちが攻略に来ると思いますから酢やタルタルソースを……酢は日持ちするけどタルタルは日持ちしないか……じゃあ醤油や味噌に……料理のレシピとか? カレーの粉末なら日持ちもするかな」


≪それは天界で振舞われたという料理関係だな……確かに神を魅了する料理ならここへ攻略に来る価値もあろうな……それなら酒もだな……それに寿司といったか、あの料理を宝箱に入れればきっと人が訪れよう!≫


「寿司は生の魚を使っているので日持ちしませんよ?」


≪問題ない。宝箱に入れておくわけではないからな。宝箱の中身を設定しておけばその場で生成されるのだ≫


「それなら料理を入れておくのもアリですね」


≪うむ、宝箱から絶品の料理が出てくるダンジョン……面白くなってきたな!≫


 話し合いは進みダンジョンマップが映るテーブルには調味料や寿司にカレーといった料理が並び、それらをエメラルドのボディーに取り込み分析するダンジョン神。手足となるのは宙に浮かぶ真珠やダイヤといった宝石で、醤油の瓶が真珠に囲まれ浮かび輝くエメラルドボディーに触れるとゆっくりと通過し中へと吸い込まれる。


「何だかこの世界に来て一番のファンタジーな光景だな……」


 目を見開き漏らしたクロの言葉に帰還したダンジョン農法神が口を開く。


「私も初めて見た時は驚きましたよ。みな様には確りと伝えて、ワカメしゃぶしゃぶもご馳走になって申し訳ない限りです……」


 丁寧に頭を下げ報告するダンジョン農法神にクロも頭を下げる。


「味はどうでしたか?」


「はい、ワカメを湯につけると一瞬でエメラルドのような輝きに変わる姿はとても美しく、ポン酢やゴマダレとも相性が良くて最高でした。白身魚の薄切りも一瞬で色が変わりホロリと崩れる身が淡白でありながら脂がのり……はあ……あの味を思い出すだけで幸せな気持ちになりますね……〆の玉子雑炊もふわりとした玉子とワカメや魚から出汁が何とも言えず、さらりと口に入る米も出汁を吸い……ああ、美味しかったなぁ……」


 雑炊の味を思い出しながら余韻に浸るダンジョン農法神。


≪では、ワカメしゃぶしゃぶも宝箱の中身とするとしよう。そうだな、宝箱から具材を取り出すと湯が沸き、そこでワカメしゃぶしゃぶができるようにすれば……≫


「それは素晴らしいですね! 加熱する手間も減りますし、上蓋に料理法を記載すれば迷わず食べる事ができるでしょう!」


「だったら料理しやすいように中は円形にして、トングやお玉を付けた方がいいですね。後は取り皿に椅子もかな」


 互いに意見を交わし合い時間も忘れ過ごしていると、いつのまにか寝ている白亜が視界に入りアイテムボックスから毛布を一枚取り出して席を立つクロ。


「おや、白亜ちゃんが寝てしまいましたか……古龍の子が金貨で遊ぶのには驚きましたが立派な城が完成しましたね」


≪足らなそうだったので金貨を追加したが、ここまで立派な城を作るとは手先が器用なのだな……≫


 金貨で下地を作りそこに金貨を積み上げ柱にして壁を作り段差を付けて屋根を設置する。金貨の門や金貨を敷き作った道などもあり金貨の家といったところだろうか。その横で寝息を漏らす白亜に毛布を掛けるクロ。


「あまりに楽しくて熱中してしまいましたが、もう外は朝ですね」


≪長いこと付き合ってもらい申し訳ないな……大体の構想は練れたからな、クロ殿はそろそろ帰るがいい。素晴らしい提案を感謝する≫


「いえ、自分も楽しかったので……こうやってダンジョンを管理していたのですね」


≪管理か……ダンジョンはこの星の過剰に湧き出るマナを利用した施設でマナを循環させるために作っているのだ……もっと効率の良い方法があれば危険なダンジョンなど作らないのだがな……ダンジョンで命を落とす者も多く危険な場所だが、この星には必要な施設なのだよ……≫


「過剰に溢れるマナを管理しなければ多くの魔物が産まれ、時に強大な力を持つ魔物や農作物を根こそぎ食べてしまうイナゴのような魔物を産み出してしまうのです」


 ダンジョン神とダンジョン農法神からの文字と言葉に以前にあったイナゴ討伐を思い出すクロ。


「その手伝いができた事を光栄に思います。前にイナゴ退治に参加しましたが、あれはもうこりごりですね……」


≪そうならない為にもダンジョン内の魔物を倒しマナを消費して欲しいのだよ……死者のダンジョンで活躍したようにね≫


「クロ殿が死者のダンジョンで大活躍してくれたのは資料で見ましたが、あの様な形で聖属性を付与するシールドを作ったのは素晴らしいですね。デュラハンやリッチを素早く浄化した手腕……やはり『草原の若葉』の一員だけありますね」


 アンデットに対してはチート染みた力を持つ女神シールドを褒める二人に、クロは頭を掻きながら口を開く。


「あれはあれで怖かったですよ……すぐに倒せると分かっていてもアンデットはどれも見た目が怖いですから……ああ、今日の事はエルファーレさまたちに伝えても構いませんか?」


≪ああ、しばらくは第一階層しか入れないが完成したら攻略して欲しい。海のダンジョンというよりは料理のダンジョンになってしまうかもしれないがな≫


 浮かぶ文字に肩を揺らすダンジョン農法神とクロ。宝箱から料理や調味料が登場すれば、料理のダンジョンと呼ばれるだろうと思うクロなのであった。







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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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