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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第八章 南国のハイエルフ
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ダンジョン神と性別



 光が治まるとクロの視界には白い壁と大きなテーブルに乱雑に置かれた資料と、大きなエメラルドを思わせる緑色した宝石が浮いていた。他にも拳大のパールやダイヤなどの宝石が浮かびあまりにもファンタジーな光景に口を開け呆けるが、背中から聞こえる「キュウキュウ」という鳴き声と手の中にある重みに慌ててシールドを展開させる。


≪クロ殿、危害は加えないと誓うので協力して欲しい≫


 エメラルドに文字化浮かび上がりクロが不審に思いながらも口を開く。


「それはこの子や白亜もか?」


≪肯定、二人と一匹には危害を加えない。それにクロ殿には死者のダンジョンの褒美を受け取って欲しい≫


「死者のダンジョン……もしかして俺を下層へ転移させたのもお前が原因なのか?」


 目を細めいつでも動ける態勢を取るクロ。


≪肯定と否定。私はダンジョン神。すべてのダンジョンを管理する神である………………クロ殿が死者のダンジョンで八十階層へと転移したのは既に設置してあった罠。私が特別に手を加えた訳ではない。ここへと連れて来たのは私だ≫


 エメラルドに浮かぶ文字を読みどうしたものかと思っていると、クロの横に魔法陣が現れて宝箱が出現する。


≪これが死者のダンジョンを攻略した褒美。金貨とエリクサーに宝珠と証明の指輪≫


 文字が浮かび上がると同時に宝箱が開き、多くの金貨の上にはエリクサーの瓶に黒い指とソフトボールほどの黒い玉が姿を現す。


「キュウキュウ~」


「こら、白亜! 危ないかもしれないだろ!」


≪大丈夫。罠はない……それよりも、これでやっと本題に入れるな……≫


 宝箱に着地した白亜は金貨を手で掴むと尻尾を振りながら喜び、クロはエリクサーや宝珠に指輪をアイテムボックスへと入れ、白亜が金貨を積み木のようにして遊び始めたので金貨はそのままにダンジョン神へと向き直る。


「本題ですか?」


≪肯定、この海のダンジョンの改装を考えて欲しい。私なりに工夫して作った心算なのだが、ここを訪れる海エルフたちは四階へ入ろうとしないのだ。四階が海底から始まるからだとは思うが、人魚やマーマンなどもここへ来ることはなく……どうしたらこのダンジョンの攻略が始まると思うか意見を聞きたい≫


「えっと、それは……やっぱり基本的には息ができない海の中を冒険するのは危険だからではないですか? どんなに財宝や魔道具などが眠っているとしても命には代えられませんし、マーマンさんたちとは少し知り合いがいますが、戦闘能力はそれほど高くないですから危険を冒してまでダンジョンに潜る事はないと思いますよ。人魚の知り合いもいますけど、池に住んでいるので……」


 クロの言葉に沈黙するダンジョン神。するとこちらへ駆けてくる足音が聞こえ、ひとりの青年が顔を出す。


「クロ殿! やっぱりクロ殿の声であったか!」


「おお、ダンジョン農法神さま!」


 以前、ダンジョンでアンデットとなりながらもダンジョン農法を開発した宮廷魔導士であり、新たな神になったダンジョン農法神のケイルが現れ慌てて頭を下げる。


「この度は我が上司であるダンジョン神が申し訳ない事を……」


「いえいえ、死者のダンジョンでの褒美を頂きましたし、それにこのダンジョンが攻略されない理由を聞かれていただけですから……ああ、でも、みんながキョルシーさまを心配しているかも……」


「それでしたら私がキョルシーちゃんを一階へ届けましょう。もし可能であればクロ殿はダンジョン神さまの相談を聞いていただけませんか?」


「それは構いませんが、俺はそれほどダンジョンに潜って冒険はしていませんけど……」


「それでもクロ殿は我ら神たちが求める酒や料理を作り出す才能をお持ちです。ダンジョン神さまが思いつかないようなアイディアや助言ができると思うのでお願い致します」


 礼儀正しく頭を下げるダンジョン農法神にクロは「それならできる限りは……」と声に出すと顔を上げ「感謝いたします」と礼を述べ、ダンジョン神も輝きが増し≪頼む≫と文字を浮かべる。


「それでは私はキョルシーちゃんをお送り致しますね。白亜ちゃんはどうしますか?」


「キュウキュウ!」


「白亜は金貨でお城を作るそうなのでこのままで大丈夫です。ああ、みんなにはワカメしゃぶしゃぶを食べて待っているように伝言して頂いてもいいですか? 具材はビスチェのアイテムボックスに送りますし、アイリーンなら食べ方もわかると思いますので」


「ワカメしゃぶしゃぶですか、わかりました。確実に伝えます」


 キョルシーを丁寧に受け取るとダンジョン農法神は光に包まれ転移し、ホッと胸を撫で下ろすクロ。


「では、これを見てくれ。これがダンジョンの大まかな階層である」


 テーブルに映し出された3Dマップには一階層から八十階層までの詳細が描かれ、十階層ごとに分かれた説明書きが目に入る。


≪この第四階層を地上スタートに換える事は確定として、他にアイディアはあるかね≫


「そうですね……このマップだとほぼ海なので、泳ぎながら戦うのは無理だと……そうですね、浅い海にしたり、岩礁地帯にしたり、少し泳げば次島に行けるような……先に進むにつれ泳ぎが上手になる様な、少しずつ泳がないと勧めない様な使用にしてはどうですか?」


≪なるほど、泳ぎが必須なのではなく少しずつ覚えさせるようにすればいいのか……そうなると、二十階層以降は全て見直さなければならないな……≫


 ダンジョン神の体であるエメラルドに浮かぶ文字に、これは長くなりそうだなと思うクロであった。











「キョルシー! あなたは何者かしら……」


 魔法陣の光が消え現れたダンジョン農法神に殺気を全開にする女帝カリフェル。他にもエルファーレや海竜のバブリーンが殺気を向け構え足をガクガクと震わせるダンジョン農法神。


「あれ? ケロロンじゃないか!」


「いえ、ケイルです……あの、キョルシーちゃんを御連れ致しました。クロ殿はダンジョン神さまと今後のダンジョンについて語り合っており戻るのはもう少し後になります」


「ケイル? ああ、ダンジョン農法の神さまね! 天界でも何度か一緒にお酒を飲んだわ」


 ビスチェが思い出したのか口を開き説明をすると殺気は収まり、女帝カリフェルはゆっくりと歩を進めキョルシーを受け取る大事に抱える。


「あの、クロさんは大丈夫なのですね! 本当に大丈夫なのですね!」


「はい、身の安全は女神ベステルの名に誓います。ですが、少々お時間が掛かるとの事なのでワカメしゃぶしゃぶを先に食べて欲しいと伝言を預かりました。具材はビスチェさまのアイテムボックスに送ったとの事です。作り方はアイリーンさまが知っているとの事ですが」


「ん? ええ、あるわね。ワカメに出汁につけダレと野菜や豆腐……あとは魚の薄切りに〆のごはんね」


≪作り方は出汁にしゃぶしゃぶしてタレにつけて食べるだけです。ネギや豆腐は先に入れて火を入れてもいいし、タイミングを見て入れればいいと思いますよ≫


「クロ先輩が無事で良かったですね」


「はい……急に消えた時は驚きましたが……はぁ……何だか安心したら力が……抜けて……」


「シャロンさま!? って、私も……力が入ら……ない……」


 隣にいたルビーとアイリーンがシャロンとメルフェルンを支え光に包まれ、数秒後には性別を取り戻した二人の姿が浮かび上がる。


「これは……元に戻った……」


「はい、いつもの凛々しいシャロンさまです……」


 自分の体を見つめ元に戻った事を確認する二人。ただ、二人は異性の水着を着ておりビキニを付け顔を赤らめるシャロンは慌てて近くにあった上着を体に巻き、メルフェルンも大慌てで上着を使って胸を隠すのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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