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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第八章 南国のハイエルフ
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異世界海水浴 3



「水中眼鏡は付けたな~」


「はーい!」


 クロの声に大きく手を上げるキョルシーとルビーにシャロン。その様子を視界に入れながら砂浜で休憩する女帝カリフェルとエルフェリーンにエルファーレ。キャロットとメリリは泳ぎながら魚を捕まえ、アイリーンとビスチェは白亜とフェンリルたちにフリスビーを投げ砂浜で遊んでいる。


「それじゃあ、頭まで海水に使って海の中を見てみような」


「あ、あの、これって泳ぐ練習ですよね? 泳ぎと関係あるのですか?」


 ルビーの質問に確かにと思いながらも、プールの授業で教わった事を思い出しながら口を開くクロ。


「まずは水になれる事だな。それに海の中は普段と違って綺麗で面白い世界だから騙されたと思ってやってみよう」


 その言葉に三名は頭を海水まで沈めて目を開く。水中眼鏡を付けている事もあり視界はくっきりと見え、光が差し込む海中の世界に驚く三名。


「ぷはっ!? すごい! 海の中キレイ!」


「うん、凄く綺麗だった! さっきは浮き輪のお陰で顔を海につけなかったから解らなかったけど、こんなにも綺麗な世界が広がっているんだね!」


「宝石の中に入ったみたいです! クロ先輩! 凄いですよ!」


 海中の世界に驚く三名のリアクションにクロは「だろ! それじゃあもう一回やるぞ~」と数回水に慣れる訓練を行う。


「何だかもう泳げる気がしてきました!」


 前向きな発言をするルビーにそれはないだろうと思いながらも「それなら次の練習だな」とやる気がなくなる前に次のステップに進める。


「キョルシーさま、俺の両手を握って下さい。泳ぐ練習をしますね」


「はい!」


 クロはキョルシーの手を握りバタ足の練習をはじめ、その様子を二人に見せながら説明する。


「こうやってバタ足の練習をすれば怖くないだろ。苦しくなる前に背中から頭を起こして息を吐き吸う。息継ぎだな。これを数回すればバタ足マスターになれる! 二人も同じようにやってみようか」


「ぷはっ!? クロ! 泳げた?」


「はい、バタ足マスターですよ」


 顔を上げ立つキョルシーは笑顔を咲かせ喜びクロに抱き着き、それを見シャロンは妹の笑顔に微笑みルビーと手を繋ぎバタ足の練習を始める。


「クロ! もう一回!」


「はい、無理せず頑張りましょうね。疲れたら休憩にしますからね」


「うん! いくよ~」


 バタ足の練習を気に入ったのか何度も練習を繰り返し息継ぎまで覚えたキョルシー。シャロンとルビーも交互に練習を行い息継ぎを覚え砂浜へと帰還する。


「少し体が冷えましたね。温かいウイスキーでも……」


 チラチラとクロへ視線を飛ばすルビーに呆れた顔をするクロ。シャロンはクロにお姫様抱っこされるキョルシーを見ながら一生懸命練習をして疲れたのだろうと思いながらも羨ましく感じ、ヤキモキとした気持ちを抱えながら歩みを進める。


「母さま! いっぱい泳いだよ~」


「ええ、ここから見ていたけど上手だったわね。シャロンとルビーもとても上手に泳げていたわよ」


 微笑みながらキョルシーを受け取った女帝カリフェルは冷えた体を包み込むように抱き締め、シャロンは母親に褒められ嬉しかったのか笑顔を浮かべる。


「次に練習をするとしたらビート版を使って同じようにバタ足をして、平泳ぎとクロールかな。平泳ぎはカエルの様な泳ぎ方で、クロールは手足をこうやって使う泳ぎ方だな。クロールの方が早く泳げて、平泳ぎは頭を海面から出しても泳げるからまわりが見渡せて便利?」


「キュウキュウ~」


 クロの説明を聞いていたシャロンとルビーたちへ鳴き声が届き、空からフリスビーを加えた白亜が着地する。


「おお、白亜はフリスビーが得意だったな。フェンリルたちと一緒に遊べて偉いな」


 後から追いかけて来たフェンリルたちがグルグルとクロを囲み、幼いフェンリルがクロの胸に飛び込むと抱き締める。


「ふぅ……少し汗をかいたわ……」


≪フリスビーを使って犬と遊ぶという夢が叶いましたよ~≫


「フェンリルだけどな……それにしても白亜は普段から全裸だけど水着を着る意味って……」


「キュウ?」


 クロの言葉に頭を傾げる白亜。


「確かに竜種は普段から服を着用する事はないが、似合っているのだから深く考えなくてもいいだろうに」


 海竜のバブリーンが緑色したココナツを抱え現れ手刀で飲み口を作りビスチェに手渡す。


「あら、ありがとう。これってヤシの実よね?」


「ああ、仄かな甘みがあって美味しいぞ。中の果肉も食べられるからな」


≪カレーに入れても美味しいですよね~南国のカレーって気分になりますよ~≫


「それならカレーにするか? 夜はワカメしゃぶしゃぶの予定だったけど」


≪集めてきますからまた後にでも作って下さい。やっぱり海水浴といえば焼きそばですよね~≫


「いやいや、かき氷に具の少ないカレーとイカ焼き……やば、塩焼きそばが食べたくなってきたな……」


≪塩焼きそばですか? ソースをこれでもかと入れた濃い目の焼きそばがいいですよ~かき氷やアイスもいいですけどお腹が減りましたね~≫


 クロとアイリーンの会話にクルルと可愛い音が鳴り笑い声を上げる女帝カリフェル。


「ああ、もう本当に可愛いわね。私の娘はお腹の音まで可愛いわ」


「あぅ……母さま……恥ずかしいです……」


 頬を染めるキョルシーを抱き締め微笑む女帝カリフェル。シャロンも手を伸ばしキョルシーの撫で、クロは幼いフェンリルを羨ましそうに見つめるルビーに手渡すと少し離れアイテムボックスからBBQ用のコンロを取り出して炭を入れる。


「夕食まではまだ時間もありますし、塩焼きそばと焼きそばを作るか」


 その言葉にキョルシーが喜びまわりの者たちも歓声を上げる。


「手伝いますね~」


 海から直接飛び上がり百点の着地を決めるずぶ濡れメイドメリリ。魔化を瞬時に解き水着に濡れたエプロンというマニアックな装いで登場し顔を引くつかせるクロ。


「僕も手伝いよ」


≪イカを捕まえてきます!≫


「ぷあはぁ、私は火を起こしておくわね!」


 各自で動き出し料理を開始すると褐色エルフたちも加わり、焼きそばの具を切り終え炒め始めるクロ。魔力創造で作り出した焼きそばの麺焼き肉と野菜を炒め少量の溝を入れ蒸らし粉末のソースを入れ手早く完成させる。


「あっというまに完成したわね。食欲をそそる香りね」


「焼きそばの香りがするよ~クロの焼きそばはパンに挟んでも美味しいんだぜ~」


「パスタは前に食べたけど焼きそば……クロは本当に色々な料理を作ってくれて私は嬉しいよ~」


 眠りそうなキョルシーを抱いた女帝カリフェルとエルフェリーンにエルファーレが加わり紙皿に焼きそばを盛るクロ。人数も多く皿に移し次を作り始めると、アイリーンが一メートルほどのイカを糸でグルグル巻きにし帰還する。


≪一番奥の方にこんなに大きなイカがいましたよ~これも食べられますよね?≫


「しめてくれたらアイテムボックスで鑑定するよ」


≪了解です! 私の分の焼きそばも残して下さいね~≫


 イカをぶら下げその場を離れたアイリーンは慣れた手つきで止めを刺し、ぐったりとしたイカを手に戻りクロがアイテムボックスに入れ詳細を確認する。


「えっと、何々、アマイカ。広く世界に分布し大きいものになると十メートルを超えるイカ。甘みが強く大きく成長するまでに捕食される。魔物化する個体はクラーケンと呼ばれ海竜の天敵である。無毒だが墨だけは生臭く食用に向かない。だってさ」


≪イカ墨パスタが食べたくなりますね~≫


 焼きそばを食べるアイリーンの言葉に、それなら美味しいイカ墨を取ってこいと思うクロなのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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