表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第八章 南国のハイエルフ
235/669

異世界海水浴



 エルファーレとエルフェリーンが先に進み、その数秒後にビスチェとアイリーンが続き、バブリーンと褐色エルフにカリフェルが足を進め、微笑みながらメリリとルビーが続き、シャロンとメルフェルンが足を進め、数匹のフェンリルとキャロットが暗い闇に消える。


「キュウキュウ!」


「手を離しちゃダメですよ」


 背中の白亜と左手を強く握る第三皇女キョルシーからの言葉を受け「任せて下さい」と応えたクロも、ゆっくりと足を進め目の前の真っ暗なダンジョンへ足を踏み入れる。


「キュウッ!?」


「ま、眩しいです……」


「確かに急な日差しが眩しいですが、ゆっくりと数回瞬きをしてから目を慣らして下さい。すごく綺麗な海岸ですよ」


 海のダンジョンと呼ばれる第一階層は美しい海岸と波の音が心地よく、どこまでも続くエメラルドグリーンの海が見え雲一つない青空が広がっている。白い砂浜に目が行きがちだが、砂浜の前には草花が広がり見た事のない花やヤシの木に似た植物も生えており大ぶりな実をたわわに実らせている。


≪クロ先輩! これはもう海水浴ですよ!≫


「第一階層なら魔物は出ないからね~安全に海を泳ぐことも可能だよ~」


「泳ぐのですか!? それはそれで危険だと思いますが……」


「ぼ、僕も泳いだことはないからこ、怖いです……」


「泳いだことがある人は少ないかもしれませんが、木などに掴まり身を漂わせるだけでも気持ちがいいですよ~私は泳げますが必要なら教えますよ~」


 魔物が多く住むこの世界では泳いだことのある者は少なく、海に限らず水辺には様々な魔物が多く危険地帯のひとつである。もちろん例外的に魔物が現れない池などもあるのだが、それは人魚やマーマンといった海洋人類が魔物の討伐を常に行い管理している場所限定だろう。

 そんな事もあり泳ぎという文化があまり浸透しておらず、ルビーやシャロンといった内陸に住む者たちは泳ぎ方がわからないのである。


「メリリは泳ぎが得意なのかしら?」


「人魚ほどではありませんが、これでもラミアとして泳ぎは得意です! 魔化さえすれば海竜のバブリーンさまといい勝負ができるかもしれません!」


「ほほう……それは楽しみだね。私が海竜だと知っても勝負を挑もうとは……楽しみだよ」


 ニヤリと口角を上げる海竜のバブリーン。その後ろでフェンリルたちが砂浜を走り出しキャロットは海へと飛び込む。大きな音と水柱を上げ猛烈な勢いでクロールを披露するキャロットは水上オートバイ顔負けの速度で泳ぎあっという間に遠ざかって行く。


「は、早いですね……」


「ドラゴニュートって泳げるのね……」


「あはははは、足と尻尾を器用に使ってあんなにも速く泳ぐ事ができるとは驚きだよ~」


≪地球だったら世界記録の連発ですね……流石異世界……≫


「私も泳ぎたいです!」


 キラキラした瞳を向けるキョルシーに母親であるカリフェルは微笑みを向けながら「クロにお願いするといいわ」と口にする。


「クロ! クロは泳げるのですね!」


 尊敬する瞳を向けるキョルシーに、米粒ほどまで遠くに泳ぎ着いたキャロットがこちらへと向かって来る様を見ながら「あれほど泳げないけど、簡単な泳ぎ方なら教えられますよ」と口にすると満面の笑みを浮かべる。


「ぼ、僕もお願いします!」


「わ、私もクロ先輩! 泳げないけど泳ぎ方は知りたいです!」


 シャロンにルビーが手を上げ、メルフェルンが困った顔をしながらも小さく手を上げる。


「ビスチェは泳げるのか?」


「当たり前じゃない! 私の里には世界樹があって魔物が近づかないからよく池で泳いだわ。ママからは村で一番潜水が得意だと褒められたし、パパからは人魚のように美しいと何度も褒められたわ!」


 ドヤ顔をするビスチェ。その後ろで上着を脱ぎ真白な水着を披露するアイリーン。褐色エルフたちも魔物の革で作られた水着(スポーツブラ風)に姿を変える。


「こら、クロ! 私の話の途中でエロい目をするな!」


 いわれのない中傷を受けながらもクロは魔力創造でビート版に水中ゴーグルと浮き輪を作り出す。


「エロい目とか言うなよ……それよりも泳げない人はこれを使うと溺れる心配がないからな。あとこれはこうやって使えば水中もよく見えて便利です」


 クロが使い方を簡単に説明すると褐色エルフたちが我先に手に取り海へと飛び込み、その性能に歓声を上げる。


「クロ! 私も! 私も!」


「水中眼鏡を付ける前に水着に着替えないとですよ。シャロンさんに任せてもいいですか?」


 さん付けするクロにムッとした表情になるが抱き着いて来た妹のキョルシーのために服を脱がす手伝いをし、メルフェルンも同じく手伝いなかに着て来た白い水着姿に変わるキョルシー。真っ白いワンピースタイプの水着にはフリルがありキャッキャと喜ぶ幼女と、その作者。


≪キョルシーちゃん可愛いよ~今一番輝いているよ~≫


 皇族に対してその対応で良いのかと思うクロだったがシャロンとメルフェルンも可愛いと連呼し笑顔を咲かせるキョルシー。カリフェルも服を脱ぎビキニに包まれた大きな胸を躍らせながらキョルシーを抱き上げる。


「もう、本当に可愛いわ~」


「キャハハハハ、母さまくすぐったい」


 親子の触れ合いに気まずくなり視線を外すクロだったが、向けた視線の先には互いに背伸びをしながら睨み合うハイエルフ二人の姿にため息を漏らす。


「僕の方が身長も胸も大きいね! これか確実に僕の方がセクシーだね!」


「いいや、それは間違っているよ! 私の方が大きいのは見てわかるだろ! どう考えても私の方がセクシーだよ!」


 互いに睨み合いどちらがセクシーかというどんぐりの背比べをする二人。お子様体系な二人の姿に海竜のバブリーンが「ふっ」と鼻で笑うが、バブリーンも大して変わらないだろと思うクロ。


「うぅ……これは恥ずかしいですよ……」


「そうですか? とてもお似合いですよ~」


「メリリさんは胸が大きいから恥ずかしくないのかもしれませんが、私は……ん? カチューシャとエプロンをまた付けるのですか?」


「はい、私はメイドですから~うふふ、少し日焼けが気になりますが太陽の下で健康的に泳ぐのもたまにはいいですね~」


 白いワンピースタイプの水着に着替え胸を抑えるルビー。対照的に大きく伸びをするメリリはカリフェルよりは小さいにしても大きな胸を揺らしながら体を解す。


≪背徳的な白いエプロン姿にグッときましたか?≫


 右から飛んできた文字を手で掴み海へと投げ飛ばしたクロは文字が飛んできた方へ視線を向けると、白いスクミズ姿のアイリーンが仁王立ちしており胸にはあいりぃんと書いてあり「お約束が好きなのだな」と言葉を漏らす。


「ふっふっふ、どうよ!」


 仁王立ちするアイリーンの後ろに現れたビスチェは競泳タイプの水着を着ており仁王立ちが二人に増え感想に困るクロ。


「キュウキュウ!」


「白亜さまも水着が着たいと言っているのだ!」


 いつのまにか戻って来たキャロットも海の中で水着に着替えたのか、真白なビキニ姿へ変わりオレンジ色の長い髪が濡れ胸の谷間へと流れ落ちる。


「は、白亜の水着って……それなら……」


 魔力創造を使い創造したのは三歳児が着るような小さな水着であり、ピンクのハートが可愛い地球産の水着である。


「ほら、これなら着れるだろ。上と下で分かれているからな~ほら降りて着ような」


「キュウキュウ~」


 嬉しそうに鳴き声を上げビキニタイプの水着を着せるクロ。上は紐で結ぶタイプな事もありスムーズに着ることができ、下もよく伸びる素材で何とか着替えさせると尻尾を振りながら飛び上がる白亜。


≪空を泳いでいますね……≫


「確かに……」


 青い空を泳ぐように羽ばたく白亜の姿に微笑みを浮かべるのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ