天界で本格家庭料理と天罰
「神の名においてぇ無礼講ですぅ~」
天界へ転移したクロたちは女神フウリンの叫びに目を丸くする。それもそうだろう、天界へと転移した先は宴会場の様な部屋であり多くの神々が酒を掲げているのだから。
「ほらほら、あんたたちはこっちの席に適当に座って飲みなさい。子供はジュースだけだからね~」
創造神ベステルの声を受け幼い王子と皇女の二人が席に付き第一王子ルイジアナと第二王女ルスティールが席に付き、クロはアワアワしているシスターを落ち着かせ付いて来たメイド二人も席に付かせる。
「まずは子供たち用のジュースと、他にアルコールが苦手な方はいますか?」
クロがペットボトルのオレンジジュースをアイテムボックスから取り出しお子様二人に開封して渡すと笑顔で受け取り喉を潤す。
「女神フウリンさま以外にもこんなに多くの神々が集うとは……」
「その会に呼ばれるクロさまとは……」
「使徒という生ぬるい存在ではないという事でしょうか……」
「アルコールが弱いものと強いものを簡単に分けておきますから好きに飲んで下さいね。おつまみはあっちのテーブルにもありますけど甘味の方が喜ぶかな?」
テーブルにビールやワインにウイスキーにカクテルなどをアイテムボックスから出し、他にもポテチやチョコにスナック菓子などを魔力創造して広げるクロ。
「うふふ、獣王国の皆さんを招待するとは思いませんでしたがぁこんなにも可愛いお子様が二人も来てくれるのはぁ嬉しいですぅ」
女神フウリンに優しく頭を撫でられた第三王子ルージスと第三皇女キョルシーは目を細めて喜び尻尾を揺らす。
「我らが愛の女神フウリンさまに撫でて頂けるとは、ルージスの一生の宝になりましょう」
第一王子ルイジアナの言葉に笑顔で応える女神フウリン。その横で呆れた顔をする叡智の女神ウィキール。
「今日、クロを呼んだのはソーマの起きた事故の謝罪と、どうしてもクロに味見をして欲しいという者がいてな……」
「味見ですか?」
「はい! どうかこの料理の味を見て欲しいのです!」
叡智の女神ウィキールの後ろから現れた料理の女神ソルティーラがクロの前に料理を並べる。
「以前にクロ殿から頂いた醤油や味噌を使い和食を作って見たのだよ」
「肉じゃがに豆腐の味噌汁に魚の煮物。小鉢にはひじき煮や切り干し大根に里芋の煮物までありますね」
「こちらの世界とは違う料理は複雑で面白いものが多い勉強になったよ。特に内臓を使ったこのもつ煮という料理は苦労したが美味しくできていると思う。味を見て感想を聞かせてくれないか」
多くの料理が並び目を輝かせるルージスとキュアーゼ。
「他の者たちにも是非食して欲しい」
微笑みを浮かべ話す料理の女神ソルティーラの言葉を受け、ルージスとキュアーゼが近くに置かれた里芋の煮物をフォークに刺し口に運ぶ。
「おいしーこれ美味しいです」
「お芋かな? 美味しいです」
「そうかそうか、他の料理も食べて感想を聞かせてくれないか」
二人は揃って「はーい!」と元気な返事をすると肉じゃがやお味噌汁を食べて表情を溶かす。
「この魚は美味い! 脂の乗った身にこの黒いソースがよく合うな」
「こちらのシャキシャキとしたものも美味しいです。食感が癖になりますね」
ルイジアナは日本酒を飲みながら煮魚を口にし、ルスティールはビールを飲みながら切り干し大根を口にする。その姿に恐縮していたシスターやメイドたちも料理を口にして酒を飲みはじめ、クロもお味噌汁を口にする。
「何だか懐かしい味です。アイリーンが来てから和食を作る事はよくあるのですが、師匠やビスチェを見ると和食よりも洋食の方があっている気がしてあまり作らなかったので本当に懐かしく感じますね……もちろん美味しいです」
「そうか、それは良かった。王子と王女の口にも合った様で私は嬉しいよ」
「はい、どの料理も奥深い味わいです。このような料理がクロ殿の故郷の味なのだな」
「クロさまの料理は色々と食べさせて頂きましたが、こちらの料理も本当に美味しいです。油淋鶏やカツなども美味しかったのですが、こちらは油っぽさがなく食べやすいです」
二人の王族の感想に微笑みを浮かべ、シスターやメイドたちも口々に味の感想を口にする。
「そうそう、クロに言いたかったんだけどね。ソーマと錬金術で作り出した魔力を多く含むものは食べ合わせが悪いから注意しなさいね」
急にクロの後ろから声を掛けた創造神ベステルの言葉に、でしょうねと思うクロ。
「ソーマ自体が強力な錬金術で作り出された物で、錬金媒体としては超が付くほど優秀なのだ。その結果、クロの体内でソーマと魔力回復ポーションが錬成され魔力回復ポーション以上の効果を発揮したのだ。次からはソーマを飲んだ後は錬金で作り出された物や魔力を多く含むものを食さないように気を付けてくれ」
今度は叡智の女神ウィキールからの発言にクロは真剣な瞳で頷く。
「シャロンちゃんとぉメルフェルンくんはぁあと二日もすれば戻ると思いますよぉ。強力な魔力を体に受けてぇ一時的にですが性転換したのはぁ、サキュバスという魔力を宿しやすい体質に由来しぃシャロンちゃんは自身の思いで女性へ変わりぃ、メルフェルンくんはシャロンちゃんを守るために男性へ変わりましたぁ。
まぁ、推測ですけどねぇ。神といっても万能ではありませんからねぇ、今回の事は理解できる範囲を超えた現象ですぅ。ただ、魔力を見ればゆっくりと変質していますから戻るまでの時間が解るという……あら、私にくれるのですかぁ?」
「はい、クロのチョコは美味しいです!」
「クロのチョコをどうぞ!」
キョルシーとルージスから棒にチョコを絡めた極細スティックを受け取った愛の女神フウリンは笑顔でポリポリと口にする。
「この食感が堪りませんねぇ」
「チョコにはブランデーがよく合うとか聞いた事がりますよ。あれ? コニャックとかだっけ?」
「コニャックはブランデーの一種よ。白ワインを使ってコニャック地方で作られたものがコニャックね。前に地球の神から教わったわ。あいつは意地が悪くて美味しい物を教えないからムカつくのよね! 文化が進んでいるからと自慢してくる癖に、その品を持ってこないとかどういう事なのよ! クロ! 罰としてタコ焼き出して! まわりがカリカリの奴!」
コニャックの説明から地球の神への愚痴に代わり、更には罰と称してタコ焼きを要求する創造神ベステル。神が罰を口にするとシスターが顔を青くするが、クロは特に気にした様子もなくまわりがカリカリとした揚げ焼きに近い調理法で作られた屋台のタコ焼きを魔力創造で創造し手渡し、テーブルにも数個置くと真っ先に手を出す女神フウリン。
「熱いですからね! 注意して下さいね!」
「熱っ!? 熱いですぅ~」
「ふひゃぁつ!!! 水! 早く水!」
女神二柱の口内を熱で蹂躙するカリカリとしたたこ焼きの威力に幼い二人は恐怖し第二王女ルスティールに抱き着き、メイドたちも目の前にあるタコ焼きを恐れるなか、料理の女神ソルティーラが颯爽と再登場し、できる女性の雰囲気を醸し出しながら口にして悶絶する。
「これをどうぞ……注意したのにどうして一口で食べるかな……」
呆れながらもクロは急ぎ氷水を手渡すのであった。
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