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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第八章 南国のハイエルフ
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隆起した岩礁探索



「魚がいっぱい取り残されてるわね!」


「こっちには貝や海藻にイカもいるぞ!」


≪タコもいますしウツボやウニまでいますよ~≫


 クロたちが商船の修理に向かった同時刻、ビスチェたちは島と島の間を隆起させた岩礁を訪れていた。孤島群であった場所を隆起させたことにより、島は繋がり大陸への道と島々に囲まれた内海が出来上がった。

 そこを調査すべくエルファーレや褐色エルフたちとフェンリルを連れ魚や貝を獲りながら移動している。足場が凹凸や潮だまりがあり最悪なのだが多くの海産物が獲り放題に加え、心地の良い風と日差しにアイリーンは鼻歌を奏でつつ網に獲物を入れて行く。


≪クロさんがいれば海鮮フルコースでしたね~≫


「魚を潰したのが美味しかったのだ!」


「キュウキュウ~」


 恐らくつみれ汁の事だろうが、キャロットからしたら魚を潰した料理という印象なのだろう。


「私は魚のフライがまた食べたいわね。あれをパンに挟んで食べたいわ!」


「クロの料理は美味しかったけど、島を繋ぎ島の中に海を閉じ込めるとは……エルファーレのババアはやり過ぎだよ……」


 海竜のバブリーンからジト目を向けられたエルファーレは笑顔で口を開く。


「これだけ広ければ危険な生物だけを排除した安全な海を楽しめるかなって思ったの~バブバブからしたらどの海も安全だろうけどさ、毒をもつ生物や魔物がいるのは危険なの~クラゲ系の生物や魔物の毒は厄介だし、安全な海なら子供や幼いフェンリルたちとも海で遊べるだろ」


≪海で遊べるのはいいですね~泳いだり魚を獲ったり貝を集めたりキャッキャウフフですね~≫


 タラバガニに似たカニを糸で拘束するアイリーン。その横で涎を垂らしながら拘束されたカニを見つめるキャロットと白亜。


「カニは美味しいのだ!」


「キュウキュウ~」


「こっちには大きなエビがいるわよ!」


 ビスチェの叫びに視線を向けると大型バイクサイズのエビがハサミを振り上げ威嚇する姿が目に入る。


≪特大伊勢海老ですね!≫


 キラリと目を輝かせたアイリーンが素早く動き糸を飛ばしながら特大伊勢海老を拘束し、後退ろうとするが足が動かず首と胴の間に槍を突き立てる褐色エルフ。


「うおおおおおおおおおお」


 槍を掲げ勝鬨かちどきを上げる褐色エルフと跳ねて喜ぶアイリーン。


≪伊勢海老のお味噌汁にお刺身にクリームコロッケとかもありですね!≫


「それならもっと大きなエビを狩るしかないわね!」


「キュウキュウ~」


「こんなのもいたのだ!」


 キャロットが手掴みにして見せたのは海サソリと呼ばれる魔物で、その名の通りにサソリの様な形と猛毒を有する。サイズ的には成人男性とほぼ変わらないそれの尻尾を掴み持ち上げるキャロットに一同は引いていた。


「カニやエビと同じハサミなのだ! きっと美味しいのだ!」


 涎を垂らしながら叫ぶキャロット。白亜も尻尾を振りながら鳴き声を上げる。


「あれは食べられるのかしら?」


「もっと大きな物を食べた事があるけど刺激的な味で美味しかったよ。殻がバリバリで少しだけピリピリする感じかな~」


 海竜のバブリーンが味を語りそれは毒だろと思うビスチェや褐色エルフたち。


「尻尾の毒腺を取れば食べられるけど、この辺りでは食べる習慣はないかな……燃やして灰にするか硬い殻を防具にするかかな……」


 エルファーレの説明に顔を歪めるキャロットと白亜。


「クロに任せてみるのだ!」


 止めを刺したそれをアイテムバックに入れると次の獲物を探すキャロット。


≪クロ先輩なら美味しく料理をしそうで怖いのですが……≫


「ありえるわね……クロならゴーレムすらも美味しく料理しそうだし……」


「あはははは、ゴーレムを料理って、それは無理だよ~石や鉄じゃないか~」


 エルフェリーンがビスチェの言葉に笑い声を上げていると、海面から水飛沫が上がり姿を見せる巨大クラゲ。半透明の紫色の胴体には多くの触手があり一斉に襲い掛かる。


「雷クラゲとは珍しいね。毒自体が弱いが力が強く、一度捕まえた物は食べきるまで放さないから注意が必要だよ」


 解説しながらも無詠唱で魔術を発動させ何本もの炎の鞭が触手を迎撃し、更には雷クラゲを持ち上げ包み込み炎に包まれる。


「凄い! 炎の鞭を使って拘束しつつ燃やすなんて……精密な魔力操作も凄いけど水属性を燃やし尽くすほどの火力……師匠の姉妹なだけあるわね……」


 身悶える雷クラゲが逃げようと暴れるが炎の鞭の拘束を解くことができずに燃え、最後には炭になり崩れ落ちるさまを目に焼き付けるビスチェ。アイリーンもその光景を見つめながら尊敬の瞳を向ける。


「あのクラゲもクロに料理してもらいたかったのだ……」


「キュウ……」


 ただ、キャロットと白亜は残念そうに燃え尽きた雷クラゲを見つめ、褐色エルフが魔石を回収すると拳サイズの紫色の魔石が天に掲げる。


「雷属性の魔石は漁で使うと便利なんだ~魔物や魚に麻痺を与えて一時的に動けなくするからね~」


「そのせいで酷い目にあったけどな……」


「あはははは、あれは傑作だったよね~追い込んだガジラを横から掠め取ろうとするからさ~一緒に痺れて浮いて来た時は大爆笑だったよ~」


「我々は恐怖でしたが……」


「あれほどの恐怖はありませんですね……」


 大きな声で笑うエルファーレに、褐色エルフたちは遠い目をしながら思い出したり体を震わせたりとそれなりのトラウマが残ったのだろう。


「それから三日間暴れて戦ったからね~」


「私は口の中に雷撃を受けたのだぞ……はぁ……昔からの知り合いといえど殺し合いになるのは仕方のない事だろう……今は無駄な事をしたと思うがな……はぁ……」


 大きくため息を吐く海竜のバブリーン。


「そりゃ、年期が違うからね~バブバブがあと二千年も生きれば結果は違ってくるかもしれないね~まだまだ私からしたら青二才だね~」


「ぐぐぐぐ、これだからハイエルフは厄介なのだ。古龍種でも若い方だと自覚しているが手に取るようにこちらの魔術やブレスを返され……はぁ……思い出すだけで腹立たしいが……ん? おお、これは美味い奴だ!」


 顔を顰めていた海竜のバブリーンだったが近場にあった岩を持ち上げる。すると岩から手足が生え「グギャー」と叫びを上げ驚くビスチェとアイリーンにキャロット。白亜に至ってはキャロットの尻尾に掴まり身を震わせる。


「こいつの甲羅は固いが中身が美味いからな。これをクロに料理してもらいたい」


 自分よりも大きな岩の様な亀を持ち上げる海竜のバブリーン。エルファーレも微笑みながら口を開く。


「それは魔岩亀だね~プルンとした身には癖がなく美味しいよ~スープに入れると次の日にはお肌がプルンプルンになるんだよ~」


≪すっぽん的な魔物? それなら鍋でしょうか?≫


「亀の魔物はどれも美味しいと聞いた事があるけど……甲羅を岩に擬態させる魔術? 手足が出てないと岩にしか見えないわね……」


「見た目はまずそうなのだ……」


「キュウキュウ……」


 持ち上げていた魔岩亀を裏返すと手足をバタバタさせ暴れるが中々起き上がる事ができず、そこへ飛び上がり拳を振るう海竜のバブリーン。衝撃が駆け抜けひびが入り絶命したのかぐったりとし、エルファーレが指揮を執りみんなで解体作業に入るのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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