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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第八章 南国のハイエルフ
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アジフライには意外と醤油が合う



「エルファーレが海竜と交流があるとは思わなかったな~やっぱり海に囲まれた生活をしていると、そういった出会いがあるのかい?」


「バブバブは気のいい奴だからね~幽霊船だってバブバブが気付いていたら、きっと助けに行ったさ。私が起こした津波も消してくれたようだし、本当にいい奴なんだよ~」


 寝息を立てるバブリーンを見ながらエルフェリーンとエルファーレが話し合う。そして、そんないい奴の鼻に釣り針を引っ掛けた船長のニャロンブースは青い顔をしていた。


「にゃ~悪い事をしたのにゃ~」


「ああ、釣り針の件ですね」


「何かあったのかい?」


 首を傾けるエルファーレに先ほどの釣り針事件を報告するクロ。船長のニャロンブースは借りてきた猫のように身を小さくする。


「あははあははは、釣り針が鼻に入るとは、あはははははは、そんな偶然があるなんて、あははははは」


「僕も見たかったぜ~海流を釣り上げるとは船長の釣りの腕は確かだぜ~」


「にゃにゃにゃ!? 本当に偶然にゃのにゃ! 怖かったのにゃ……」


 海に関わる職業の中でも海竜を信仰する者たちは多く、貿易船を生業とする者たちは特に海竜を神聖視しており、出向の際には海に酒を奉納しながら「海に酒を海竜に感謝を」と口にしながら航海の無事を祈るのである。海には多くの魔物かおりそれらの頂点である海竜を信仰する事で魔物たちから襲われないように祈るのだ。


≪少しだけ話しましたがとても優しそうなでしたから大丈夫ですよ~古傷も治ったと言っていましたから怒ってないですって。ほらほら、ここですか~ここが気持ちいいのですか~≫


 幼いフェンリルを撫でながら文字を浮かべるアイリーン。


「話しているうちに怒りも収まったような表情をしていましたし、シールドの上で横になって寝てしまった時はどうしようかと思いましたよ。海に落とすのも気が引けましたから連れてきましたが……」


「人化した状態で海に落としても溺れる事はないだろうけど連れて来てくれて良かったよ。津波の事は私が謝るからクロたちはサキュバニア帝国へ行くといいよ~」


「それは助かりますわ。国交が結ぶことが出来れば獣王国は更なる発展と強い後ろ盾を得る事になります。人族の国と交流のあるサキュバニア帝国に口添えして頂ければ更に多くの国と国交も開け、多くの輸出入が可能となれば商業が盛り上がります」


 両手を合わせて微笑む第二王女ルスティール。


「お土産にここの酒と魚を持って行くかい? シャロンの故郷なら私が許可するよ~」


「それはありがとうございます。ヤシの実を使った酒は母も気に入ると思いますし、あの甘酢に使った調味料も分けて頂けると嬉しいです」


「ココナッツビネガーだな。まろやかな酸味で、水で割って飲むと体に良いとか聞いたことあるよ」


≪前世の母がリンゴ酢を飲んでいましたね~私には無理でしたけど……≫


「リンゴ酢? 前世?」


「リンゴ酢はリンゴから作った酢ですね。酢は酒に酢酸菌が付着してアルコールを酢へと変化させますね。リンゴを発酵させた酒を更に別の菌で発酵させると酢に変わるといえばいいのかな」


 首を傾げていた第二王女ルスティールに簡単に説明するクロ。クロも酢の作り方は曖昧で適当に応え、互いに首を傾げながら話し合っていると海からは褐色のエルフたちと船乗りたちが話をしながら集まり、その手には多くの樽が握られている。


「少し釣りをしただけで多くの魚が獲れましたよ」


「船長! ここの魚たちは警戒心が薄く釣りやすいですよ」


 釣り上げた魚は大きくても三十センチ未満のもので、どれもアジやカワハギといった見た目でアイリーンが目を輝かせる。


≪これはアジフライにすべきですね!≫

 

 先ほどの釣りでアイリーンが口にしていたアジフライの事を思い出したのか、船長のニャロンブースはクロへと向き直り期待した表情で口を開く。


「お願いしてもいいのにゃ? 頼めるにゃ?」


「ええ、みんなでアジフライを食べましょうか」


「それなら手伝うぞ!」


「クロの料理は美味いからな! 俺にも手伝わせてくれ!」


「魚を捌くのは得意だからね。私らも手伝うよ」


 褐色のエルフに商船の料理長などが手伝いを申し出て、クロは魔力創造で必要な食材と調味料などを創造するとアイリーンとビスチェにメルフェルンが動き出す。


「鱗を取ってから頭を落として三枚に下ろし、塩をしてから少しおいて魚の臭みと余分な水を出して、小麦粉と玉子にパン粉の順につけ揚げます。特に難しい事はありませんが油の取り扱いは十分に注意ですね。ああ、中骨からは魚の出汁が取れますから捨てないで下さいね」


 簡単に説明するクロだったが、地響きのような足音が近づいてくる事に気が付き一斉に振り返ると一同。そこにはオレンジの鱗を濡らしたドラゴンがおり……


「大きな魚を獲ったのだ!」


「キュウキュウ~」


 五メートルはありそうな大型のサメを両手で掲げる魔化したキャロットの姿があり、肩には白亜を乗せご満悦である。


「これもアジフライにするのだ!」


「キュウキュウ~」


≪大きなアジフライが作れそうですね……≫


 アイリーンの呆れたツッコミにそんなサイズの鍋はないだろうと心の中で思いながらも。サメのフライも美味しいかったなと頭の中で料理を思案するのであった。






「サクサクなのだ! 美味いのだ!」


「キュウキュウ~」


 一口大にカットされたサメのフライにタルタルソースたっぷりと掛け頬張るキャロットと白亜。


「あんなに大きな魚なのに繊細な味がしますね」


「蒸すという料理法にも驚かされましたが、ポン酢という調味料は絶対に売れると思います!」


 モヤシの上にサメの肉を薄く切り軽く塩コショウにショウガのみじん切りを乗せ蒸したものに、ポン酢を付けて食べるシャロンとメルフェルン。


≪これですよ、これ! やっぱりアジフライはフライの王様です!≫


「タルタルとソースで味が違うのは当たり前だけど、両方付けても美味しいわね! 私は両方を掛ける事を勧めるわ!」


 アイリーンは念願のアジフライに歓喜し、ビスチェはタルタルとソースの両方を褐色エルフたちに勧める。


「クロの料理はやっぱり凄いね! 昨日の料理も美味しかったけど、このアジフライも最高だよ!」


「うんうん! 甘酢も美味しかったけどタルタルソースも美味しいよ! サクサクの白身魚によく合って最高だね!」


 エルフェリーンとエルファーレもアジフライとサメフライを喜び口に運び、合間にビールを飲み白いヒゲを生やす。


「これは本当に美味しいですわね。この料理も油を使い揚げるという調理法……無限の可能性を感じますわ!」


「油淋鶏とは違いパン粉を付ける事によりサクサク感が増しますな……これは猪や鳥を使ってもきっと美味くなるな……それにタルタルソースといったか、この白いソースは酸味がありながらもまったりと口の中に絡み……美味い……この酒ともよく合う……」


 第二王女ルスティールはアジフライに無限の可能性を見て味に歓喜し、商船の料理長もフライという料理は応用が利くと判断し食べながら色々と脳内で試行錯誤をする。


「フライだけでは胃もたれするのでキャベツの千切りも食べて下さいね。タルタルソースやソースでも合いますし、ドレッシングもありますからね」


「はい、ありがとうございます。それにしてもクロさまは本当に料理上手なのですね。昨日から初めて食べる料理に感動しておりますわ」


「いえいえ、自分は……それよりも、師匠が飲み始めてしまったので……」


「ええ、それにはわたくしも気が付いております。転移魔法という伝説の魔法ですからお酒が抜けてからの方が……実を言うとサキュバニア帝国に今すぐ行くのはもったいないといいますか、クロさまの料理をもっと味わいたいといいますか……クロさまさえ良ければ獣王国で雇われてみてはどうですか? 私個人で雇うなら月に金貨三十枚以上をお支払いする事も……」


 柔らかい笑みを浮かべ交渉する第二王女ルスティールに苦笑いを浮かべるクロ。


「いえ、自分は今の生活が、」


「ダメだぜ~クロは僕のクロだからね~ふふふ、クロは僕にメロメロなんだぜ~」


 背中に飛びつくエルフェリーンに「師匠は飲み過ぎですよ」と口にするクロ。すると背中の重みが更に増し、今度は白亜が頭に乗り左にはシャロンが抱き着く。


「キュウキュウ!」


「クロさんにお願いしている事もありますから、引き抜きはダメ……ですよ……」


 その光景に頭を下げ謝罪する第二王女ルスティール。国交を結ぶ帝国の王家であるシャロンと、転移をお願いしているエルフェリーンから注意されては頭を下げるしかない。


≪ハァハァハァ、合法少女と幼いドラゴンにTSBLとはご馳走様です!≫


 目の前に飛んできたアイリーンの腐った文字を笑顔で握り潰すクロなのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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