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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第八章 南国のハイエルフ
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劣化ソーマとリクエスト



 ビスチェやアイリーンに手伝いをしていた褐色エルフたちが食べ終えると、クロは新たにギガアリゲーターの肉の塊を取り出す。


≪ん? まだ何か作るのですか?≫


 アイリーンの文字が浮かびクロの前で停止するとクロは竹林を指差す。そこには多くの褐色エルフと子供たちにフェンリルがこちらを眺めていた。


「カレーの匂いに誘われたのかしら?」


≪そうかもしれませんね。カレー独特の香りはお腹を空かせますから≫


 ビスチェとアイリーンが立ち上がり、アイリーンは皿を集め浄化魔法を掛け、ビスチェはクロの横で手伝うべく野菜を切り始める。


「カレーは美味しかったのだ!」


「キュプッ!」


 キャロットと白亜も満足したのかお腹を摩り小さなゲップをする姿にエルフェリーンは笑い声を上げ、エルファーレも料理を手伝うように食事を終えた褐色エルフたちに指示を出す。


「ふぅ……米もそろそろ底をつくから魔力創造で作らないとだな。カレールーもか」


「ちょっと、さっきも野菜を多く創造してたのに大丈夫なの?」


 ビスチェから心配の声が届きクロは目をぱちくりさせながら微笑む。


「そういう気の使い方は嬉しいが、どうせなら幽霊船へ吹き飛ばす時にも気を使ってくれよ……」


「あら、私はクロなら大丈夫だと思ったから飛ばしたのよ。クロはアンデットに対してなら負け知らずだもの!」


 玉ねぎを刻みながらドヤ顔をするビスチェにクロは苦笑いを浮かべる。


「僕が水魔法で水球を作るからそこに米を入れたらどうかな? お米が綺麗に研げると思うぜ~」


「確かに水流を制御すればできそうね!」


 エルフェリーンの提案にビスチェが興味を持ったのか、野菜をカットしながら頭上に現れた水球へ視線を向ける。


「師匠……料理は遊びじゃないですからね~米研ぎはアイリーンの浄化魔法でやってもらいますよ。さっきも米の袋ごと浄化してもらいましたし、本当に便利ですよね」


 クロの言葉に口を尖らせるエルフェリーン。エルファーレはそのやり取りを嬉しそうに眺め笑い、アイリーンはクロが魔力創造で作り出した米袋に浄化魔法を施す。


「って、いくつ創造してるのよ!」


 十キロ入りの米袋が八袋積み上がる状況に驚きの声を上げるビスチェ。更にカレールーは段ボール箱ごと創造され、慣れた手つきで段ボールを開けるアイリーン。


≪業者さんから直送されたのですね~って、クロ先輩の顔色がやばいですよ!?≫


「ちょっと、魔力を使い過ぎたな……アイテムボックスからこれを飲めば……」


 アイテムボックスから取り出した瓶をカップに入れ少量を口にするクロ。飲んだ途端に体が光に覆われ輝き顔色も元へと戻ると、更に魔力創造で野菜を創造するクロ。


「ニンジンに玉ねぎにジャガイモもこれだけあれば大丈夫かな……あとは隠し味のオイスターソースを創造して」


 ドザドザと積み上がる野菜に目を見開く第二王女ルスティールと船長のニャロンブースたち。エルファーレも魔力創造というスキルに目を輝かせる。


「本当に羨ましいスキルだね~クロが一人いれば食糧難は起こらないし、まだ見ぬ料理が食べられるのは羨ましいよ~」


「あははは、そうだろう! クロは凄いぜ~って、さっき飲んだのはソーマだよね?」


 魔力切れ間近にクロがカップに入れ口にしたソーマの瓶に顔を近づけまじまじと見るエルフェリーン。エルファーレも同様に並び神の気配が残るそれを見つめ続ける。


「魔力回復に良いと言っていましたので、回復効果はポーションと大して変わらないとか、本来よりも性能が落ちる劣化版だとかも言っていたので試しに少しだけ飲んでみましたが………………効果は凄いですね。久々に精霊たちが見えますよ」


 ビスチェの肩に留まる鳥型をした風の精霊や、竈に集まるトカゲ型の火の精霊に、エルファーレの頭の上でエビ反りをするイルカ。他にも多くの精霊たちがこの場に入るのか空を見上げれば宙を泳ぐカラフルな魚や亀、地面から顔を出すモグラやクリスタル。椅子代わりに使っていた丸太には花々が咲き乱れ、キャロットや白亜の頭の上にも花飾りのように花が咲き乱れている。


「まったく、ソーマは貴重なのに……」


「錬金素材としても必要な物なのよ! 魔力回復だったらポーションを飲みなさい! 上級ポーションだって持たせてあるでしょ!」


「いや、そうだが、味に興味があって………………味は水だったな」


≪それよりも、魔力過多になっている可能性がありますよ! 精霊が見えるほど魔力があるのなら適当に魔力創造をして魔力を使った方が体への負担がなくなると思いますよ≫


「確かに……前の時よりも体が楽な気がするが、魔力を使った方がいいよな」


 アイリーンに心配されクロは鳥料理担当の褐色エルフや商船の料理長と代わり魔力創造でウイスキーやカレールーに米を作り出す。


「私は甘いものが食べたいわ!」


(仲間、不思議肉、頼む、嬉しい)


≪はいはい! 薄い本を! ゴリゴリのBL雑誌を!≫


「僕はまたプリンが食べたいです……」


「肉がいいのだ! でも、食べられないのだ!」


「キュウキュウ!」


 ビスチェには一キロの砂糖を創造し、父親フェンリルには多くの缶入りドックフードを創造し、シャロンとメルフェルンにはプリンを創造し、お腹を摩って寛ぐキャロットと白亜には苦笑いを送る。


「ちょっと、砂糖単体で食べろっていうの!?」


≪私のリクエストも受け付けて下さいよ!≫


 ニンジンを向け怒るビスチェと何も送られなかったアイリーンはクロへ抗議し、プリンを創造してビスチェに渡し、アイリーンには月間のジャ〇プを創造する。


「これは後で食べるわ~」


 ご機嫌で自身のアイテムボックスへと入れるビスチェ。アイリーンは手に取りページを捲り≪ママが間違えて買って来るタイプのジャ〇プ!≫と文字でツッコミを入れながらもアイテムバックに入れ微笑む。


「後は子供たちに飴を配って、エルファーレさまにもウイスキーを送って、サキュバニア帝国へ行くのならウイスキーとブランデーもかな……」


 次々に創造して行くクロを見つめ顎が外れんばかりに驚く騎士アーレイと第二王女ルスティール。


「あ、あのっ! 対価を支払うので今日の料理に使っていたカレールー? を購入させて頂けないでしょうか?」


 唖然とした表情をしながらもこんなチャンスは二度と来ないと思い、思い切って口にする第二王女ルスティール。


「ええ、構いませんよ。十個もあればいいですか?」


 クロの返しにパッと表情を明るくする第二王女ルスティールは、商船の料理長から深い頷きに軽い達成感を覚える。


「獣王国の金貨で御いくらになりますか?」


 第二王女ルスティールは自身が普段使いしている小さなポシェットタイプのアイテムバックから金貨を数枚取り出す。


「えっと、銅貨二十枚? だと、貰い過ぎか?」


≪良心的な価格ですね~異世界へ運んだと考えれば銀貨一枚ぐらいするのでは?≫


「いやいや、ドラックストアなら二百円を切るだろ……う~ん、銅貨二十枚ですね」


 その言葉に口をあんぐりと開け第二王女ルスティールと商人たちは固まるのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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