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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第八章 南国のハイエルフ
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朝食の準備と転がるクロ



「これが主食なのか……白くつぶつぶで独特の香りだな……」


「米と呼ばれるものですね。洗い水を入れて炊き上げます」


「俺たちの主食はこの芋だな。芋を煮て柔らかくしたら皮を剥き潰して丸く成形してから鉄板で焼き上げる。茹でたてに塩をして食べる事もあるが鉄板で焼くと香ばしさが加わり美味しいぞ。炒って乾燥させて保存食にしたり、酒にしたりすることもあるな」


 鳥料理担当の褐色エルフが炊きあがった米を覗き込み主食について語る。地球でも芋を主食にしている所は多くトウモロコシ、小麦、米についで多く食されている。


≪前はトウモロコシを買いましたよね~≫


「爆裂種のトウモロコシだな。あれも粉にして水で伸ばし焼いたものはトルティーヤとかの主食になるものだな」


 雑談をしながら炊きあがった米に市販のワカメご飯の素を入れ撹拌して蓋をする。


≪ワカメご飯ですね~シンプルながら美味しいですよね~≫


「師匠たちは白米よりも味が付いている方が好きだからな。ワカメご飯にしておにぎりにするよ。後は玉子焼きと漬物だな」


 アイテムボックスから市販の玉子を取り出すとそのパックに視線を集めるがアイリーンが素早く開封すると大きなボウルに割り入れ、クロは砂糖と塩に市販の出汁を入れて少量の水で溶かすとアイリーンが混ぜ始めたボウルへと入れる。


「今の透明な入れ物も毒なのか?」


 どうやら昨日渡した飴の袋の説明を耳にしたようで聞いてくる鳥料理担当の褐色エルフ。


「プラスチックと呼ばれる入れ物ですね。石油から作られているそうですが詳しくは解りません。自分の故郷ではありふれたものだったのですが……」


 熱したフライパンに薄く油を敷くと撹拌した玉子を入れ、素早く混ぜ固まり始めた所で手を止め適当に巻いて行く。厚焼き玉子ほど手が込んでいないが玉子焼きが完成すると同じ作業を繰り返す。


「適当な大きさに切ってくれ。味見しますか?」


「いいのか?」


「はい、少し甘めな味付けにしています。この方が師匠やビスチェがよく食べてくれるので」


 アイリーンがカットした玉子焼きを口にする鳥料理担当の褐色エルフ。近くで調理をする他の褐色エルフも加わり味見をして感想を口にする。


「甘さの中に魚の風味を感じるな。玉子は茹でて食べるものだと思っていたが焼いても美味いのだな」


「我らが作った料理も味を見てくれ」


「クロの料理は昨日色々と食べたがどれも美味いな!」


 褐色エルフたちから褒められ昨晩は多くの甘酢料理を作ったなと思い出し、今隣で作っている料理も油淋鶏に似たもので酸味と甘みのある香りが鼻腔をくすぐり、しばらく甘酢料理が続くのだろうと思うクロ。


「そろそろ握りますか?」


「そうだな。ラップを出すよ」


 市販のラップにワカメご飯を盛り軽く握るアイリーンは熱さに耐えながら素早くおにぎりを量産して行く。


「これもプラ何とかか……薄く柔らかく透明で使い勝手が良さそうだな……」


「確かにそうなのですが、土に還りづらいので処分に気を付けないとですね。燃やしても有毒な物質がでるとかで……」


「ああ、そうだったな……便利かもしれないが自然に還りづらいのなら使えないな……」


「これも味見してみますか? ワカメという海藻を使ったおにぎりという料理です」


「おお、頂くぞ!」


「私たちもいいのか?」


「クロの料理はどれも美味いが米が気になっていたんだ!」


褐色エルフたちがワカメのおにぎりを食べ始めると、まだ熱かったのかハフハフとしながら口に入れ「美味い」と声にする。


≪昆布があるのならワカメもこの近くの海にあるかもしれませんね~≫


「そうだな~おっ、師匠たちが来たな」


 神殿から広場へと続く道を歩き向かって来るエルフェリーンとエルファーレの姿が視界に入り、クロが手を振ると二人も大きく手を振りながら声を上げ走り出す。


「師匠、何も走らなくても……って、エルファーレさまが飛んだ!?」


「お前ら! すぐに料理を避難させろ!」


 鳥料理担当の褐色エルフが叫び素早く動き出す褐色エルフたち。クロも急ぎアイテムボックスへと完成した料理を収納すると、目の前には競争をしているのか地面すれすれを飛ぶように向かって来る二人の姿が……


「僕が先だ!」


「いいや、私だね!」


 二人の幼女に高速で抱き着かれたクロはそのまま後方へと吹き飛ばされ、慌てて自身を覆うようにシールドを発生させ広場を転がる。


「死ぬかと思った……」


 転がりながらもどちらが早かったか言い争う二人。ヤシの木のおかげで停止し、衝突したヤシの木からは数個の実が落下してシールドに降り注ぐが、シールドのおかげか無事である。


「クロはどっちが早かったと思う? 僕だよね! 絶対に僕だよね!」


「いいや、絶対に私だ! 私の方が早く抱き着いたからね!」


≪朝から幼女ハーレムとは羨ましいですね~≫


 シールドの中で逆さになりながらも言い争う二人に抱き着かれているクロは飛んできた文字を見つめ、それなら代わってくれと思うのだった。







「いや~米というものは美味しいね~海藻が入っているのも面白いし美味しかったよ~」


 朝食を終えたエルファーレは嬉しそうに口にすると食後のお茶を飲みながら白亜を撫でる。


「やっぱりワカメのおにぎりは美味しいわね! 私としては鮭マヨや焼き肉を入れたおにぎりもお勧めだけど、素朴な味が玉子焼きとも合って好きね!」


「僕は初めて食べましたが美味しかったです。お味噌汁も魚の出汁が出ていてコクがあって美味しかったです」


「フワフワとしたつみれが最高でしたね」


≪おにぎりの具といえば色々ありますがツナマヨこそ至高! どこかのマヨ王女と被りますがツナマヨが最強です!≫


「どれも美味しかったのだ! 今度は魚の味噌汁を肉の味噌汁にして作って欲しいのだ!」


「キュウキュウ~」


 各々が好きに感想を言い合いおにぎりの具からお味噌汁まで好評のようで胸を撫で下ろすクロ。特にひどい事を言われるような事は今までなかったが、誰かに食べさせる料理は毎回それなりに緊張するのである。


「少し休憩したら海のダンジョンへ行くからね~海のダンジョンは三階層以降えら呼吸しないと探索ができないから潜らないけど、ダンジョンだからね。十分に装備を整えてから行くからね!」


 エルフェリーンの言葉にアイリーンが立ち上がりアイテムバックから白薔薇の庭園を取り出し、ビスチェは籠手や胸当てを装備する。クロも籠手や胸当てを装備し、常用している炎の魔剣を抜き刃こぼれがない事を確認する。


「ルビーも来られたら良かったのにな……」


 ロングナイフ型の炎の魔剣を確認しながらぽつりと呟くクロ。


「そうですね……ルビーさんもイナゴ退治の時は頑張っていましたし、バトルハンマーを実践で使ってリベンジしたいと言っていましたね……」


「石を生み出して射出するようにちゃんと改造したからね~十メートルほど石を射出できるぜ~ルビーは攻撃魔法が得意じゃないから使いこなせれば十分に活躍できるようになるぜ~」


 嬉しそうに話すエルフェリーンも天魔の杖をアイテムボックスから取り出す。すると目を輝かせるエルファーレ。


「それは何だい!? 聖属性と闇属性が融合しているのかい!? 凄いね! どうやって作ったのかな? 是非、教えてくれよ!」


「ふっふっふ、これはね、特別な方法で作られた魔石を使って杖の魔核にしているのさ!」


 立ち上がり杖を掲げポーズを取るエルフェリーン。


 ドヤ顔である。渾身のドヤ顔である。


「威力も凄かったわね。竜巻で巨大イナゴにダメージを与えていたわ」


≪私の強化した魔糸を竜巻に入れる合体魔法でしたね~ドランさんたちの炎のブレスと合体した時は火炎旋風でしたし、凄かったです!≫


 イナゴ退治の時にも活躍した天魔の杖を見つめるエルファーレは、羨ましそうな表情で白と黒が混じる魔石に目を奪われ続けるのだった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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