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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第八章 南国のハイエルフ
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魚料理の下ごしらえ



「お客様、でしたら更に上を行く肉料理を見せては頂けませんか?」


「こちらも宜しくお願い致します」


 能面の様な顔へと変わった肉担当の褐色エルフと血走った瞳を向ける魚担当の褐色エルフに睨まれ、クロはどう言い訳をしようかと思っていると後ろから声が掛かる。


「そんなのクロに掛かれば簡単よ!」


 クロへと詰め寄っていた褐色エルフ二人は発言者へと視線を変え、その先には腕組みをしてドヤ顔をするビスチェの姿があった。


「うんうん、クロなら更に上を行く料理にしてくれるよ~ほっぺたが落ちても知らないぜ~」


「クロさんならできますね」


「確かにクロさまの料理なら同じ食材を使えば美味しくなるかもしれませんが……」


≪鳥料理と魚料理ですね! 私は焼き鳥とお刺身にして欲しいです!≫


 口々に言葉にする『草原の若葉』たちにクロは苦笑いがトップスピードに上がり頭の中では二種類の料理が完成されて行く。


「これはこれで美味しいのだ!」


「キュウキュウ!」


 大きな鳥肉に大口を開け頬張るキャロットと白亜は嬉しそうに食事を続けマイペースを貫いている。


「えっと、本当に作った方がいいのですか?」


 褐色エルフではなくエルファーレへと視線を向けて話すクロ。エルファーレは微笑みながら大きく頷き口を開く。


「お願いできるかい? 難しいとは思うけど昨日食べた料理を考えるとクロの料理は最高だよ。最近は鳥と魚の派閥争いに私はうんざりしているんだ。お願いだからこの二つの派閥にもっと美味しい料理があると教えてやって欲しい」


 席を立って頭を下げるエルファーレの姿にざわめきが起こり給仕をしていた褐色エルフの二人は何とも言えないような気まずい表情へと変わるが、その手は握り締められ、数日間という短い期間にも関わらずエルファーレから信頼されている事が悔しかったのだろう。


「そこまで言うのなら……食材はまだ残っていますか?」


「ギーウィの肉ならまだまだあります」


「カジラも型の良い物がありますが……」


 給仕をしていた褐色エルフが応えクロが立ち上がると「魚料理からにしましょうか」と声を掛けアイリーンを手招きする。


≪助手をご希望ですね~任せて下さい! 今日から私がホームズです!≫


「いやいや、そこはワトソンと名乗れよ……はぁ……面倒くさい事になったな……」




 二人は魚料理担当の褐色エルフに案内され東側の竈へと案内されると多くの褐色エルフが料理を続けており、これらの分はこれから皆が食すのだろう。


「これが今残っているカジラの中でも一番大きなものだ」


 エルフというよりはマッチョというような体系の褐色エルフの男性から1.5メートルはありそうなカジキマグロに似た魚を受け取ったアイリーンは糸を使い空間に固定する。


「ありがとうございます。立派な魚ですね」


「お、おう……こいつは水の精霊にお願いして囲った岩場へ誘い込み捕獲する。滅多に食べられない御馳走なのだが……上手く料理ができるというのなら頼む」


「はい、努力はしてみますが……任せて下さい」


 自信無げな発言に眉を吊り上げたマッチョエルフだったが、「任せて下さい」と付け加えた事で歯を食いしばりながらも頷く。

 ちなみにこのマッチョエルフは魚料理担当の中のトップであり魚派閥のトップでもあるのだ。幼い時から漁師の父を見て育ち獲って来る魚に興味を持った男は様々な魚に合う調理法を考案してきたのだ。


「よし、やるか!」


 クロが気合を入れるとアイテムボックスからBBQ用のコンロと作業台にナイフを取り出しアイリーンに声を掛ける。


「カジラを適当に捌いてくれ。できるだけ骨は取り除いてくれな」


 ≪ウィームッシュ!≫と大きく文字が浮かぶと糸を使いバラバラに解体されて行くガジラ。頭が落とされ三枚になりながらも糸で空間に吊るされたガジラは落ちてくる事はなくそれを顎が外れんばかりに口を開き唖然としながら視線を向けるマッチョエルフ。


「次は氷の用意と火起こしだな」


 クロはエルフェリーンの元へと走り魔術で氷を生成してもらい桶へと入れると走り、魔剣を使って火を起こす。


≪三枚に捌きましたが次はどうしましょう≫


「血合いの部分は取り除いて一口大にカットしてくれ」


≪は~い、任せて下さい!≫


 元気な文字が飛び、ナイフを使い丁寧に血合いの部分を取り除き、魔糸を格子状に飛ばし三枚に下ろした魚の身に掛けると勢いよく引っ張り瞬時に一口大にカットされ用意していたボウルで受け止めるアイリーン。


≪終わりましたよ~≫


「早いな! おお、カットできているな。じゃあ、それを砕いた氷に水に入れてく」


≪それだと魚の旨味が水に逃げませんか?≫


「確かに逃げるが、その為の氷水だな。常温の水よりも身が締まって旨味が逃げないからさ」


 クロに言われた通りに氷水に入れ軽く撹拌して身を冷やすアイリーン。


「冷えたらゴリゴリしてペースト状になるまで潰して、裏ごししたら塩を入れて更にゴリゴリして酒と卵白に片栗粉を少量とみりんを入れて、成形して蒸すのだが……板を作らないとだな」


≪それなら丁度いい板がありますよ。前に家を作る時に使った残りの板を数枚アイテムバックに入れてあります≫


 板を取り出したアイリーンはもう何を作るのか理解しており糸を使って手ごろな長方形にカットし、白薔薇の庭園を抜くと表面に一閃を放ち鉋掛けしたような表面へと変わり、最後に魔力を込めて白薔薇が散るエフェクトを放つとまわりからは割れんばかりの拍手が上がり少し調子に乗ったなと顔を赤くするアイリーン。


「見事な剣捌きだな……なっ!?」


 そう言いながら落ちている削られた木を拾うマッチョエルフは薄さに驚く。拾ったそれは非常に薄く削られており太陽光を透かせるほどであった。


「よし、冷えたしゴリゴリするか!」


 氷水から切り身をザルに開け以前に魔力創造で作り出したキッチンペーパーで水気を切り、すり鉢へと入れた所ですりこ木棒を奪われるクロ。


「ゴリゴリは私がするから肉料理も同時にしなさい。あんまり時間が掛かると師匠たちが酔い潰れるわよ」


 ビスチェの言葉に視線をエルフェリーンへと向けるとエルファーレと一緒にウイスキーをロックで飲む姿が視界に入り、急がなくてはと指示を出して肉料理エリアへと走るクロ。


「こっちは僕たちが手伝いますね!」


「普段からクロさまの料理の手伝いをしておりますから何なりとお任せ下さい!」


 シャロンとメルフェルンが手伝いを申し出てくれ心強く思うクロは、肉料理担当の褐色エルフが差し出してくるギーウィの調理に取り掛かるのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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