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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第八章 南国のハイエルフ
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感謝の食事会の始まり



「エルファーレさま、お客さま方、昼食の準備が整いましたので、下まで足を運んで頂いても宜しいでしょうか?」


 部屋の入り口には褐色のエルフが丁寧に頭を下げておりキャロットは素早く立ち上がる。


「肉なのだ!」


「あははは、やっぱり楽しい子たちだね。みんなの紹介もしたいからね~下へ降りようか」


「果実を沢山食べたからあまりお腹は空いていないけど……」


「師匠、おもてなしは受けるべきですよ。それにどんな料理を作っているのか気になりますし、果実のお礼もしないとですよ」


 ソファーに体を預けていたエルフェリーンを説得するクロは、ツタで編まれたソファーから立ち上がると笑顔で手を差し伸べて来るエルフェリーンの手を掴み立ち上がらせようとするが勢いそのままに抱き着きクロの体を上り始める。


「えへへへ、また襲われたら嫌だからね~さあ、クロに乗って移動するよ~」


「キュウキュウ!」


 エルフェリーンの言葉に嫉妬したのか白亜が羽ばたきクロの肩へと着地して両手で頭をしっかりと抑えながら肩車の位置に乗り嬉しそうな鳴き声を上げる。


≪クロ先輩がモテモテですね~羨ましいですね~≫


 文字を浮かせるアイリーンだがその膝には幼いフェンリルが寝息を立てており起こさないよう慎重に抱き上げ立ち上がる。


「僕たちも行こうか」


「わふっ!」


「本当に知性が高いですね。言葉を理解していそうです」


 シャロンが父親フェンリルに声を掛けると元気に鳴き声を返し、その様子にメルフェルンは知性の高さを感じ取り立ち上がったフェンリルの背を優しく撫でる。


「簡単な言葉は理解しているよ~念話で感情を送っているだろ。あれは感情だけではなく文字として言葉に変換して送っているからね~」


「優秀なのですね」


 シャロンが優しく頭を撫でると尻尾を振りながら目を細める父親フェンリル。


「それじゃあ下へ行こうか。上り下りさせて申し訳ないけど、ここの料理は絶品だからね~楽しみにして欲しいよ~」


 エルファーレが部屋を出ると褐色のエルフが続きその後を追うように階段を下りる一行。来た道を戻り下で幼いフェンリル集団に襲われるもクロに乗っているエルフェリーンと白亜は問題なく進み、代わりに襲われたのはメルフェルンであった。


「ふわぁっぁぁぁぁ、ダメ! 耳は舐めないでぇぇぇぇぇ」


 一行を囲むように現れた幼いフェンリルを撫でようとしゃがみ撫でようとした所で多くのフェンリルに飛びつかれバランスを崩した所をペロペロ攻撃で襲われ悲鳴を上げるメルフェルン。


「何をしているのだか……ほら、気を付けて立ち上がりなさい」


 ビスチェの手を借り立ち上がったメルフェルンは半泣きであった。


「うううう……シャロンさま……あんなに愛らしい姿をしているのに……恐ろしいかもしれません……」


 涎をハンカチで拭うメルフェルンに同情の視線を向けるシャロンだったが、反省しているのか尻尾を縮めてお座りをする幼いフェンリルたちの愛らしさに微笑みを浮かべてしまうのは仕方のない事だろう。


「知らない人が多く来て嬉しかったのかもしれないね~幼いフェンリルは好奇心旺盛だからね~躾けているけどまだまだ幼いからテンションで行動してしまうからね~大丈夫かい?」


 エルファーレに心配されあわあわと取り乱すメルフェルン。いうなれば一国の王に心配されたようなもので畏れ多く思ったのか「だだだ、大丈夫でしゅ!」と嚙みながら大声で応え、その声に驚いた幼いフェンリルたちはお座りの状態から逃げるように走り出す。


「大丈夫なら行こうか。みんなが待っているからね~」


 エルファーレに続き神殿を抜けると立派な竹林があり風に揺られ風情のある空間が広がっている。その竹林を分断する石畳を進む。


「立派な竹林ですね。ソファーや家具にも使われていましたが、ここには多いのですか?」


「そうだね~この辺りでは有り触れたものだね。丈夫でありながら柔軟で、家具はもちろんだけど漁業の道具や薪にしてもいいし、筍は美味しく食べられるし万能な植物だよ~」


「へぇ~筍は僕も食べてみたいなぁ~」


「この季節は出てこないから雨期前に来てくれよ~そうすればご馳走するね~」


 簡単な約束を交わしながら歩を進めると開けた広場に到着する。皇帝ほどの広さの両脇には竈が作られており褐色のエルフたちが料理をしているのか肉や魚が焼ける香りが広がりソワソワとする幼いフェンリル。


≪この子ももうお腹が減っているようですよ~先ほどからグゥグゥとお腹が鳴っています≫


 アイリーンが文字を浮かせ笑いながら中央の席に付くエルファーレ。エルフェリーンもクロから降り、白亜はキャロットが回収すると首を回しながら疲れを取るクロも腰を下ろす。


 竹で作られたテーブルには色鮮やかなテーブルクロスが敷かれており、竹で作られたカップと大きな葉の皿が敷かれ何種類もの果実がカットされ運ばれて来る。


「みんな! 手を動かしながらでもいいから聞いてくれ! 今日は私の妹であるエルフェリーンが来てくれ体調の悪かったフェンリルの子が元気になった! 私はとても嬉しく思う! エルフェリーンは錬金術と薬学に詳しいハイエルフだ。私もそれなりに色々と詳しいけど知識だけならエルフェリーンに劣るだろう。そんなエルフェリーンを私は姉妹として友として尊敬している! そして、その弟子たちにも友として接したい! 皆が仲良く暮らせる今を大切にして新たな仲間へ君たちの心の籠った料理をお願いするよ」


 エルファーレの演説にも似た紹介に拍手が巻き起こり、フェンリルたちも遠吠えをして幼いフェンリルの回復とエルフェリーンの来訪を喜んでいるのか尻尾を揺らす。


「キャンキャン!」


 アイリーンの腕の中で元気に吠えた幼いフェンリルはもう元気だと言わんばかりに鳴き声を上げる。


「それでは料理をお持ち致します」


「お茶と果実水にヤシ酒と選べますが何に致しますか?」


 褐色のエルフたちがエルフェリーンに飲み物を聞き嬉しそうに「ヤシ酒!」と答え、他の者たちもヤシ酒や果実水を選びオーダーを済ませる。


「ウイスキーほどじゃないがヤシ酒も美味しいぜ~少し酸っぱくて甘くて癖にある味だよ~」


 そうドヤ顔で語るエルフェリーン。ここはエルファーレさまがドヤ顔をする場面だろうと心の中でツッコミを入れるクロは、運ばれてきた果実水を口にする。


「おお、南国感のある味ですね。甘すぎない所がいいです」


「ありがとうございます。料理に合わせ甘さは控えめにしております」


 運んできた褐色エルフにお礼と感想を言うクロ。他の者たちも食前酒や果実水を飲み口に合ったのか感想を言い合い感謝の食事会が始まるのだった。





 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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