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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第七章 収穫祭
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女神ベステルからの褒美と大きな焼酎



「それにしても今回は何で呼ばれたのですか?」


 クロは女神ベステルへと視線を向けるとキョトンとした顔をしながらスプーンを止め、数秒考えているのか頭を傾け、「あっ! そうそう、思い出したわ!」と口にしてミカンゼリーを食べている神託を受けた聖女はホッと胸を撫で下ろす。


「イナゴ退治した時はすぐに帰っちゃったじゃない。その褒美と、前々から渡そうと思っていた物よ」


「前々から渡そうと? それって大きな鎌を持った神さまが勝手に飲んだというアレですか?」


「ふふふ、じゃーん! ソーマと呼ばれる神々が作った酒です!」


 何もない空間に手を突っ込んで一升瓶を出現させる女神ベステル。透明な瓶にはソーマと書かれたラベルが張り付けてある。


「この酒は伝説に出てくるような不老長寿や永遠に魔力が湧き出るような効果はないからね~味もそこそこで、ちょっと病気が治ったり寿命が延びたり健康になるだけね。お酒の飲み過ぎで悪くなった肝臓とかも治るからね~」


「酒の飲み過ぎを酒で治すとか……そこまで酒を飲むことはないが……」


 クロはソーマを受け取りながら酒を飲み過ぎるエルフェリーンやルビーの顔を思い浮かべ、最近はどぶろくや日本酒にウイスキーを飲み過ぎているのではと思案する。


「なに難しい顔しているのよ。中級のポーションでも肝臓の異変を食い止めたり、毎日飲めば完治するわよ」


 心配事が顔に出ていたようで女神ベステルから指摘されたクロは頭を下げてアイテムボックスへと収納し、そのやり取りを見ていた聖女と巻き込まれシスターは二人で目を合わせ頷く。


≪ちなみにどんなお味がするのですか?≫


「スッキリとした喉ごしで風味はほぼないわね。酔うだけのお酒かしら……」


≪それって蒸留したてのお酒では……≫


「ええそうね。味はそれに近いわよ。ほら、馬鹿でかいペットボトルの焼酎に似ているわね」


 クロのバイト先にもあった四リットルの焼酎のペットボトルを思い出し、試しに魔力創造で作り出すと「それそれ!」と言いながら手に取った女神ベステルは封を開けカップに少量注ぎ入れ口にする。


「ぷはぁ~これよりも弱いわね……ねぇクロ、何か炭酸系のジュースを出してよ。割って飲むわ!」


 この女神は自由だなと思いながら記憶にある炭酸入りのジュースを魔力創造で作り出すと、叡智の神ウィキールと愛の女神フウリンも割って飲みたかったのかジュースを手に取りカップに注ぎ入れる。


≪クロ先輩! 私はこの懐かしいジュースを頂きますね! アリル王女さまも飲みますか?≫


「良いのですか!?」


≪はい、半分こしましょうねぇ~≫


 アイリーンがカップに黒い炭酸ジュースを注ぎ入れシュワシュワと炭酸の泡が舞う姿に目を輝かせ、神々も焼酎を入れたカップにジュースを注ぎ入れ口にする。


「あんまり美味しく感じないわね……」


「ジュースの味が薄くなった気がしますぅ」


「どうせ飲むなら梅酒か日本酒だな……」


「私もジントニックとスクリュードライバーがいいですぅ」


 神々は自身で入れた酒だけ飲み干すと玉子焼きを口に入れる。


「ジュースで割っただけだとあまり美味しくないとか聞いたことあったな……確か、このレモン果汁と蜂蜜を入れて焼酎を少し入れて良く混ぜて、最後に炭酸水を入れれば……あの、これを試してみませんか?」


 アイテムボックスから材料を出し、クロが作ったハチミツとレモンに炭酸水を入れた焼酎を訝し気な瞳を向ける女神ベステル。


「見てたけど、ジュースで割った方が早い味とかじゃないわよね?」


「市販の缶入り焼酎とかは原液で割って作っていると思いますよ。だからジュースで割っただけじゃ味が薄く感じると、」


「あら、美味しいわ。これなら薄く感じないし炭酸とレモンの香りに蜂蜜のほんのりとした甘さが良いわね!」


 クロの作った焼酎割を口にして微笑み女神ベステルに玉子焼きを食べていた叡智の神ウィキールと愛の女神フウリンがクロの前に現れ笑顔を浮かべ、クロは二人の分も作り始めると聖女と巻き込まれシスターは目を合わせ無言で頷く。


「聖女さま方も飲みますか?」


 二柱分を作り渡したクロからの言葉に一瞬戸惑う聖女とシスター。ただ、挙手は別の所から上がり玉子焼きに群がっていた他の神たちが手を上げ笑顔を向け、大変な事になったと思いながらも手を動かし焼酎割量産して行く。


「なるほど、風味がなければレモンと蜂蜜で足し、甘さも蜂蜜で……レモンの爽やかさを炭酸水で増幅させているのですか……これは勉強になりますね……私にも手伝わせて下さい」


 感心しながらクロの作る焼酎割を手伝い始めたのは料理の女神ソルティーラであり、クロの作る異世界の料理に関心を持ち何かとこの世界の材料で再現してきた女神である。


「助かります。レモン果汁と蜂蜜は魔力創造で作りますね」


 小さなレモン果汁と蜂蜜の瓶を創造したクロと手を動かし蜂蜜レモンサワーを量産する女神ソルティーラ。長い列を作る神々に酒を作り続け、お礼を言いながら受け取った神々の誰もが表情を綻ばせ酒を口にする。


「神さまたちはみんな嬉しそうですね!」


「神さま方を満足させるクロさまには驚かされます……王妃さま方もそうですが、クロさまがいれば毎日美味しいお酒や食事が堪能できるのですね……」


≪そうですね~クロ先輩は凄いですね~玉子焼きもそうですがコーヒーゼリーやプリンにゼリーを作り出し、神さまが満足するお酒まで提供していますからね~うぷっ……ちょっと食べすぎたかもしれません……≫


 片手で口を押えゲップを我慢するアイリーン。それを見たアリル王女とメイドのアルベルタは笑い声を上げる。


「うふふ、クロさまの料理は美味しいので食べ過ぎてしまいますね」


「はい、プリンも美味しかったです! 今度はクロさまにマヨ料理を作ってほしいです! マヨは美味しくて、強くて、正義です!」


 拳を掲げる「正義です!」と叫ぶアリル王女にメイドのアルベルタは微笑みアイリーンも肩を震わせる。

 

 ≪アリル王女さまも可愛いので正義ですね~≫


「可愛いと正義なのですか?」


≪もちろんです! 可愛いは正義です! 可愛いはこの世の中で最も尊く強く正義なのです!≫


 アイリーンも拳を作り文字を浮かせ、可愛いと正義の文字を大きくし強調する。


「こらこら、アリル王女さまに変な事を教えるなよ~マヨを使った料理なら確か在庫が……あった、鮭っぽい魚にマヨを乗せて焼いたものです。熱々だから注意して食べて下さいね」


 アイテムボックスからこんがりとマヨが焦げた鮭のソテーを取り出すクロ。アリル王女は目を輝かせ、同じように目を輝かせ見つめる料理の女神ソルティーラ。

 他の女神たちもマヨの焦げた香りにワラワラと集まり、クロはアイテムボックスから適当な料理を取り出すと別のテーブルに並べる。


「それはアリル王女さまのものだからな。こっちを食べろ~」


 女神たちを相手に適当に話すクロに聖女は口をあんぐりと開け、巻き込まれたシスターも目を見開き驚きの表情を浮かべる。


「唐揚げ~」


「お寿司もある~」


「こっちはパフェにケーキまでありますよぅ~」


「こら、その塩辛は私が目を付けていたのに~」


 ワラワラと集まった女神たちの争奪戦を呆れた表情で見つめるクロはアリル王女たちのテーブルに戻り、ふうふうしてから鮭マヨ焼きを口に入れる幼女王女の満面の笑みに癒されるのだった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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