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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第七章 収穫祭
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天界で意外な真実を



「収穫祭は飲み放題よ~」


 女神ベステルの叫びに天界に来て数秒で後悔するクロ。アリル王女とアイリーンに専属メイドのアルベルタは笑顔を浮かべ、聖女は苦笑いを浮かべる。そして、巻き込まれたシスターはその光景に目を見開いて口を開けたままフリーズする。


「クロとアイリーンにちっこい王女に聖女とシスターも来たのね。ほらほら、突っ立ってないでこっちに来なさい」


 手招きする女神ベステルに小さなため息を吐いたクロは歩みを進めそれに続く一同。いつもの女神ベステルの私室とは違い、広い空間は洋風のパーティー会場のようでビッフェ形式のように料理が並びそれを各自で採りに行くスタイルである。

 テーブル席には多くの神が酒を飲み食事をしており、何度か見た事のある神たちからは手を振られ頭を下げるクロたちと慌てて頭を下げるシスター。


「あのあのあの、ここは神さまたちが………………」


 聖女の肩を掴み隠れるように錯乱するシスターに聖女は優しい笑みを浮かべる。


「クロさまに感謝するのです。クロさまは使徒様であり神さま方に認められた存在です。限りなく神に近い使徒ですが、クロさまは使徒という事を隠しておられますので注意が必要ですよ」


 後ろから聞こえた聖女の言葉に振り返り「使徒とかじゃないですからね。神さま方からお酒と料理を強請られているだけですからね」と訂正するが、シスターは使徒という噂と天界へと呼ばれた事に聖女の言葉の方が正しいのだろうと誤解する。


「ほらほら、この席に座りなさい。ちびっ子には低そうだからこの椅子に座りなさい」


 女神ベステルが手を払う仕草をすると椅子輝き変化し、高さのあるキッズチェアへと変化する。


「ふわぁ~ありがとうございます!」


 喜びながら椅子に座ると叡智の神ウィキールと愛の女神フウリンが横に座り頭を撫でたりジュースを用意したりと甘やかされ笑顔が加速するアリル王女。


≪アリル王女のマスコット感は癒されますね~≫


 そういいながら席に付いたアイリーン。クロはテーブルに先ほどアイテムボックスに入れた玉子料理を並べ始め女神たちに進め、聖女と巻き込まれシスターも席へと付きクロが魔力創造で作り出したペットボトル飲料を進める。


「クロたちも何か食べないのか?」


「この玉子焼きは甘くて美味しいですぅ~」


 叡智の神ウィキールと愛の女神フウリンがコック長たちが作った玉子焼きを口にして満足気に微笑み手にした酒を口にする。


「先ほどまでこの玉子焼きを教えていまして……アリル王女はまだ食べられますか?」


「玉子焼きをいっぱい食べました! お腹は少しなら入りますが……」


≪試作品を食べましたものね~甘いものなら少しだけは入りますよ~≫


「それならプリンあたりかな」


≪プリンもいいですがコーヒーゼリーが食べたいです! 抹茶プリンやミカンが入ったゼリーとかもたまには食べたいですね~≫


 リクエストに応えるべくクロは魔力創造でコーヒーゼリーとミカンがゴロゴロと入ったゼリーを作りアイリーンとアリル王女の前に置くと、真っ先に手を出したのは女神ベステルであった。


「これ貰うわね~あむあむ、うまっ! コーヒーの香りとほろ苦さが美味しいわね! これだから日本の企業は侮れないのよ。あむあむ……」


 その姿に生唾を飲み込む叡智の神ウィキールと愛の女神フウリン。


「今日はまだまだ魔力がありますから作りますよ」


 クロが魔力創造でプリンにコーヒーゼリーにミカンゼリーを作り出しテーブルに置くと、女神たちが我先にと集まり甘味を強奪して行き呆気に取られるアリル王女と聖女にシスター。


「女神さま方が一心不乱に……クロさまはやはり使徒さま……」


「ええ、これがクロさまのお力です。神さま方を魅了する数々の食を生み出せるのです。この事は絶対に口外してはいけませんよ」


「は、はい……」


「口外はしないでほしいのですが、それよりもプリンをどうぞ」


 新たにプリンを魔力増槽したクロは聖女とシスターに手渡し、アリル王女にも渡す。アイリーンは確りとコーヒーゼリーをキープしており口に運び表情を蕩けさせていた。


「アイリーン、白薔薇の庭園を見せて貰ってもいいかしら?」


 コーヒーゼリーを口にするアイリーンの真後ろに立ち声を掛けたのは武具の女神フランベルジュであり、アイリーンが愛用する白薔薇の庭園と呼ばれる日本刀の作者である。


≪フランベルジュさま!? はい、こちらになります≫


 立ち上がり腰に帯刀している白薔薇の庭園を鞘ごと渡したアイリーンは緊張しているのか両手を握り締めながら武具の女神フランベルジュが鞘から抜いた白薔薇の庭園を見つめる。それはまるで師に作品を見せる弟子のようである。


「これは甘いですね! それに透明でキラキラしています!」


 ミカンゼリーを口にしたアリル王女がスプーンですくったゼリーを見つめ目を輝かせ、緊張しながら待っていたアイリーンがホッと息を吐きアリル王女の笑顔を見て緊張が解れたのか文字を浮かせる。


≪ふぅ……緊張していましたがアリル王女の笑顔で緊張が解れました≫


「ん? 緊張などせずとも……ああ、アイリーンは丁寧に使ってくれていますからね。そう緊張せずにそれを食べながら待っていてくれればいいですわ」


 白薔薇の庭園から視線を外し微笑む武具の女神フランベルジュに、アイリーンはコクリと頷きコーヒーゼリーを手に取り口に運ぶ。


「聖女さまとシスターさんもどうぞ食べて下さい。女神さまが狙っていますから早く食べた方がいいですよ」


 クロの言葉に二人のプリンへと視線を向けていた女神たちは図星を突かれたのか顔をほんのりと赤く変え立ち去り、二人は意を決したように封を開けスプーンで口に入れる。


「これは何と甘く……」


「とても美味しいです! このような料理があるのですね!」


「プリンと呼ばれる玉子と砂糖を使った料理ですね。黒い方はコーヒーゼリーで、コーヒーと呼ばれる飲み物を固めたもので、ミカンゼリーはミカンを入れ固めたものです。寒天と呼ばれる海藻の粉末を使って固めています」


 三種の甘味を簡単に説明するクロに感心したような表情で見つめる聖女とシスター。


「ミカンの薄皮をこれほど綺麗に剥く技術は流石ですぅ」


「スプーンですくうとまるで宝石のようだな……」


「テレビで見ましたがミカンの薄皮は薬品を使って溶かしているそうですよ」


≪重曹ですね。炭酸水素ナトリウムが薄皮のペクチンというものを溶かすそうですよ≫


「よく詳しく覚えていたな」


≪ペクチンという響きが可愛くて覚えていました。ペクチンって響きが可愛くないですか?≫


 アイリーンの浮かぶ文字に頭を傾げるクロと女神たち。


「可愛いはともかく、技術として凄い事だな」


「日本酒の時もそうだったが日本の技術は目を見張るものがあるわね!お菓子工場とか見学する番組とか楽しいもの!」


「ん? その言い方だと日本のテレビを見ているのですか?」


 この場にいる者たちからの視線が女神ベステルへと向かいドヤ顔で頷き手を払うと、空間に画像が浮かび上がり民放の放送画面やネット番組などが映し出される。


「どうよ!」


「いやいやいや、どうよ! じゃなくて、異世界にまで電波が……いや電波というよりRANケーブルで繋がっているのかよ!」


「一時的に繋げるだけなら映るわね。あっちの神とは親しいから面白い番組を録画して送ってもらっているのよ~」


 手をひらひらさせながら話す女神ベステルにアイリーンは懐かしむような瞳を向け、クロも画面を見つめ「これって違法なんじゃ……」と呟く。


「違法とかいうなよ~神を裁けるのは神だけなのよ~こっちの技術も向こうの神たちに送っているし、その一環ね。そもそも、あんたたちの世界にはドラゴンと存在しないのに、世界中にドラゴンや龍の伝説があるのはなぜだと思う?」


「それって……」


 ドヤ顔をする女神ベステルの言葉に色々と察するクロとアイリーンなのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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