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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第六章 大規模討伐と秋の足音
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シャロンとの別れと帰ってきた我が家



「クロさん! また僕も行きますから、クロさんもこちらへ遊びに来て下さいね!」


 そう叫ぶシャロンは目を潤ながら転移するゲートへと叫びを上げ、クロは手を上げながら「またな!」と声を返して足を進める。


 魔鉄を放出し終えたシャロンたちサキュバス組とはここで別れ一行はオークの国へと向かった。イナゴ騒動の終息を伝える為である。


 クロが最後にオークの国の城の中庭へと到着すると耳が割れんばかりの大歓声に思わず耳を塞ぎ、まわりのエルフやオーガたちも同じでクロと目を合わせたビスチェやアイリーンは苦笑いを浮かべる。


「どうやら待ち構えていたみたいよ」


 ビスチェがクロへ向け話すが大歓声にかき消されアイリーンが文字を浮かべる。


≪ここを見張っていた兵士が報告に走り、王城内の人たちが一気に押し寄せました≫


「だろうな……」


 中庭は予め転移して現れるので場所を開けておいて欲しいとエルフェリーンに言われ、ロープで進入禁止と書かれエリアを確保されており城の中庭という事もあってか窓から顔を出し拍手や歓声を上げる多くのオークや聖騎士たち。

 女王や宰相たちも現れるとその歓声は次第に小さくなり頭を下げるオークの国のトップと聖騎士たち。


「この度はイナゴ退治をありがとうございます」


「いいよ、いいよ~僕たちはイナゴを燃やした灰が欲しかっただけだからね~一応報告をしようと思い寄っただけだからさ。そうだ! クロは灰の袋を出してくれるかい? 十袋もあればこの国中の農地に撒けるだろうからね~」 


 オークの国の農地はあまり広くない事と、灰の効果が高くスプーン一杯程度を薄く振りかけ耕せば豊作が約束されるイナゴの灰。下手に多く撒くと雑草などが巨大化する危険もあるのだがそれは前もって説明してあるので問題がないだろう。

 ちなみに、イナゴを焼いた荒野は緑が少なく土や岩が剥き出しの所が多いが、来年には草が生い茂る草原に変わっているだろう。


「えっと、灰は……」


 中庭の端に灰を入れた麻袋を放出するクロ。ナナイも横で手伝い灰の袋が積み上がる。


「ありがとうございます。宜しければお食事の用意とパレードの準備について、」


「ああ、そういうのはいいや。僕も忙しい身だからね~早く帰って薬草や蔓芋に果樹園や蔓芋に灰を入れてやりたいからね~」


≪蔓芋を二回言うほどお芋が好きなのですね~≫


「師匠は干芋とかも好物だったよ。日本製の干芋はしっとりしているからか、一人で三袋も食べていたな」


 こそこそとアイリーンと話すクロ。王女は呆気に取られた表情をしながらも宰相に肘で突かれ再起動する。


「そうですか……それは残念です……」


「あはははは、今度はゆっくりと遊びに来るからその時にでも一緒に食事をしようぜ~じゃあ、僕らはこれで帰るからね~灰の撒き過ぎには注意だぜ~」


 天魔の杖を掲げると転移のゲートを開くとあっさりと足を向けそれに続くオーガやエルフたち。アイリーンはライナーに手を振りクロも友であるヨシムナに手を振りゲートへと向かう。


≪今度はゆっくりと遊びに来たいですね~≫


「そうだな……日本の美味い酒を渡したかったな……」


 そう言いながら到着したのは錬金工房『草原の若葉』の中庭で、家に帰ってきた事に懐かしさを覚えるクロ。


「何だか久しぶりに帰ってきた気がするな」


「そうですね~実際は四日ほどでしょうけど、オークの国やサキュバニア帝国にその果ての町まで行ったと思うと凄い旅行でしたね」


「転移魔法の凄さが解る旅だったな……」


 旅の感想をルビーと軽く言い合いアイテムボックスからオーガやエルフたちが持ち帰る灰の麻袋を取り出すクロ。


「あら? クロが届けてくれると思っていたのに」


「ん……村に一度来ると良い……」


「クロが村に来ればみんな喜ぶよ!」


 キュロットとフランにクランが笑顔を向け、エルフの戦士たちも同じように笑顔を向けるなか、ビスチェだけは口を尖らせクロの前に立つ。


「それはダメよ! クロはゴリゴリ係なの! エルフの里に何か行ったらいいように使われるだけなんだからね! それよりも、薬草畑に灰を撒くわよ! 手伝って!」


 クロの腕を取り強引にその場を離れるビスチェに、クロは必要とされているのが嬉しいのか後頭部を掻きながら足を進める。


≪ビスチェさんがデレましたなぁ~≫


「デレ? それは何ですか?」


≪デレとは好意の塊ですよ~これからあの二人が進展するか楽しみですねぇ~≫


「それは私も楽しみだわ! クロがビスチェとくっ付けば白ワイン飲み放題よ!」


 そう叫ぶキュロットに呆れた顔をするナナイ。ラライはビスチェに引きずられるクロを追いかけ楽しそうに笑い声を上げている。


「これが長とかエルフが心配になるねぇ」


「ああん? やるのか筋肉馬鹿!」


「素手で硬いイナゴを殴る方がよっぽど筋肉馬鹿だと思うけどねぇ」


 互いにゼロ距離で額を付けるナナイとキュロット。


「うむ、勢いで我らもこちらへきてしまったが、」


「たまにはゆっくりするのも悪くない。新しい師匠の家に泊めてもらいましょう」


 ロザリアとラルフの二人もオークの国から一緒に転移しこちらへ来ており新築の屋敷を見上げる。


「ここが新しい私の就職先ですねぇ~思っていたよりも大きなお屋敷で掃除のし甲斐がありそうですねぇ~」


 メリリもロザリアの横で屋敷を見上げ、メイド魂に火が付いたのか気合を入れる。


「我らは先に蔓芋や果樹園に灰を撒きましょう」


 妖精たちが集団で飛び去るとエルフェリーンは屋敷のカギを開け中へ入り、それに慌てて追い掛けるメリリ。


「我らはゴブリンの村で酒ができるまで手伝うつもりだが、キャロットよ。白亜さまを頼むぞ」


「白亜さまの巫女として頑張りなさいね」


「任せるのだ!」


「キュウキュウ~」


 白亜を肩車しているキャロットはドランとキャロライナの言葉を受け元気に叫び白亜も嬉しそうな叫び声を上げると、キャロットの肩から飛び上がり翼を羽ばたかせクロの元へと向かいそれを追いかけるキャロット。


「私は鍛冶場に火を入れて皆さんの武具の手入れを頑張らないと!」


≪私も白薔薇の庭園の手入れをしないとですねぇ~≫


 ルビーとアイリーンも屋敷へと向かい武具の手入れをしに鍛冶場へと向かう。


 こうしてイナゴ騒動は終息し、いつもの錬金工房『草原の若葉』へと戻るのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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