強力な助っ人とアイリーンの戦い方に日本企業への感謝
「竜巻から逃れるイナゴが増えているかな……」
最前線で大魔法を操るエルフェリーンは巨大竜巻から進路を変えるイナゴを見つめつつ、より多くのイナゴがいる場所へと竜巻を天魔の杖を掲げながら移動させ、その横ではアイリーンが糸を鞭のように使いながらもその先端は網になり、数十匹ほどが網に掛かり身動きが取れなくなるとドランがブレスで焼き払う。
キャロライナとキャロットはブレスを吐きながらより多くのイナゴを中心へと左右から誘導して竜巻に巻き込ませているのだが、その竜巻から逃れる数が多く地面にかぎ爪を食い込ませゆっくりと力を入れて前進するイナゴたちは風の影響が収まった場所まで移動すると逃げるように羽を動かし飛び去って行く。
その先にはエルフとオーガの戦士たち。サキュバスの戦士が待ち受け各個撃破してゆくのだが、その数が増え続けていた。
≪ん? あれは……≫
アイリーンの八つの目が遠くに見える黒い霧を捉え、次第に集まり形成される姿に目を見開く。
「あははは、イナゴの王様かな? あれはちょっと大きすぎるよ……」
エルフェリーンの視界にもその姿が目に入り乾いた笑い声を上げ、ドランは絶句する。ドランが魔化しているドラゴンよりも数倍大きなイナゴの姿を目にすれば誰でも絶句するだろう。事実、ドランに加えキャロライナとキャロットも絶句しブレスが途切れているのだから……
「あの辺りは最初に魔術を使った場所だから……イナゴの死骸は早めに焼き払った方がいいのかもしれないね。他の死骸が集まってあんなのが増えたら対処できないよ~」
≪それならキャロライナさんに焼き払ってもらった方が……≫
「キャロライナ! イナゴの死骸を焼き尽くすのだ!」
ドランの叫びで我に返ったキャロライナは大きく息を吸い込むとイナゴの死骸が広がる地面へと向けブレスを発射する。
「キャロットは右に専念させて、アイリーンは左側をどうにかできるかな?」
≪任せて! とっておきの蒸し対策があります! とう!≫
掛け声まで魔力で生成した文字で浮かべると、空間に糸を発射さながら移動するアイリーン。
「キャロットは右を専念しろ! できるだけ見逃さずに頼むぞ!」
ドランの叫びに「わかったのだ!」と叫びを上げ応えるキャロットは大きな胸を膨らませブレスを吐き続けながらも、近くに逃げてきたイナゴを尻尾で吹き飛ばす。
「あとは竜巻を維持しながら、あのデカブツをどうにかしないとだね~」
天魔の杖を掲げたまま呟くエルフェリーンに声が掛かる。
「それなら任せて頂きましょう」
ドランの頭の上に影が現れ、そこから顔を出すシルクハットの老人の姿にエルフェリーンは希望に満ちた表情で声を上げる。
「ラルフ!」
「はい、イナゴの噂を耳にしまして少しでも手伝おうと来たのですが、エルフェリーンさまがいるとは思いませんでした」
全身を陰から出してシルクハットを取り頭を下げるラルフ・リーリス・ジルコニアであり、エルフェリーンの元弟子である。
「ダンジョンでは大変お世話になりましたからな。少しは手伝わせて頂きます」
「これは頼もしい増援だよ! ドランにカリフェルも戦っているからね! 本当に昔に戻ったみたいで僕は嬉しいよ!」
「その期待に応えられるよう、行って参ります!」
ラルフがドランの頭から飛び降り颯爽とイナゴの群れの中を走り抜け、巨大なイナゴを目指すのだった。
一方、アイリーンは左を任され多くの逃げ出すイナゴに向け糸を飛ばしつつ、地面に多くの糸を撒く。粘着質の糸は足を踏み入れると動きを阻害し、もがけばもがくほど糸が体に撒き付き更なるイナゴをもくっ付けその場にイナゴを留めて行く。
ここで押さえないと後ろが大変ですからね!
八つの瞳が更なるイナゴの群れを捉えると魔化して下半身を蜘蛛に変えるアイリーン。体のサイズが大きくなるデメリットがあるのだがイナゴの群れの中を高速移動で糸を飛ばし、罠を張り、白薔薇の庭園でイナゴの首を落とす。
やっぱりこの刀は素晴らしいです! 私の魔眼と相性がいいのか、複数の相手を細くしながら戦えますし、何よりも首の関節を狙えば一切の抵抗なく振り抜けるのもいいですね! 戦っている感が凄いです!
輝く白薔薇の庭園を振るたびに白いバラの花びらが舞うエフェクトに多少うんざりとしながらも、ほぼパーフェクトにイナゴを屠り続けるアイリーン。
防衛するスマホアプリとかに似ていますね~罠を作って狙撃して斬りつける……それにしても、あの巨大イナゴをどうにかしないとですが……
遠くに見える学校の校舎ほどのサイズのイナゴを一瞬視界に入れながらも、白薔薇の庭園を振って横を通り過ぎたイナゴの首と胴を切り分けるアイリーンであった。
「増えてきたなっ!」
「破っ! 闘っ!」
「ふんっ!」
クロたちのいる最終防衛ラインにもイナゴが現れ始めクロが魔剣のナイフを赤く輝かせ頭部を突き、シャロンは正拳突きと左のショートアッパーで頭を潰し、ルビーは魔道槌を振り回しイナゴの頭を狙い撃つ。ラライが大楯でイナゴを吹き飛ばし小麦畑への侵入を阻止しているが、その数が十を越えるとやや押され気味になるのが現状である。
小麦畑の前にはクロが横長のシールドを張っているのだが、イナゴの突進力が数匹合わされば簡単に崩壊するだろう。
「まずいな……それにあの巨大なイナゴって……」
「破っ! 大きさもそうですが、飛んだりしませんよね?」
「ふんっ! 飛んでこっちに来られたら、どうしようもないですよね……」
「キュウキュウ~」
リュックが小刻みに震えるのを背中に感じたクロはアイテムボックスの機能を立ち上げで奥の手を登場させる。
「これが効けば楽勝なんだが……」
そう言って手にした殺虫スプレーをシールドに阻まれ頭をぶつけ続けているイナゴへと向け噴霧する。すると、がくがくと体を揺らしポテリと体を横たわらせるイナゴ。
「凄い!? 毒ですか!」
「毒っ!?」
驚く二人にコクリと頭を上下したクロはシールドに張り付くイナゴへ向け噴霧すると、パタリパタリと倒れ今までの苦労が何だったのかと思う二人。
「少量でも効きそうだな……そうだ! 白亜はリュックの中に顔を入れておけよ! 妖精さんとかにも危険かもしれないから注意しないとだな……」
ひとり日本の殺虫剤メーカーに感謝しつつ、魔力創造で新たな殺虫剤を作り出した三本をルビーとシャロンにラライの三名に持たせ使い方を説明するクロ。
「火のある所で噴霧するなよ。それと毒みたいなものだから吸い込まないように、あと妖精さんにも注意だぞ。少量を顔に掛けるイメージで上のボタンを押す事!」
クロの説明を聞いた三名は殺虫スプレーを持ち走り出すと、シールドに取り付いたイナゴへ向け噴霧を開始するのだった。
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