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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第六章 大規模討伐と秋の足音
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ルビーの魔道槌



「オーガやエルフさんたちも凄いですが、妖精さんたちが良い仕事していますね」


「ああ、妖精さんたちがオーガの戦士たちの後ろについて回復や攻撃力に防御力を底上げしつつ、風魔法で追い打ちをしているからな」


「異種族でもこんなにも上手く連携できるのですね……」


 ルビーとシャロンが感心しているのは妖精族が戦士たちをフォローして動きまわっている姿であった。接近戦で戦う戦士たちの後ろに付き一撃を入れた後にできた隙を埋めるように飛翔してくるイナゴを風魔法で落とし動きを封じたり、複数で飛翔してきたイナゴを土魔法で迎撃したり、傷ついたオーガを戦いながら傷を癒したりと地味な活躍ではあるがチームとしての底上げをしているのだ。そのお陰か渾身の一撃で確実にイナゴを撃破するオーガの戦士たち。

 エルフたちの弓や魔術も妖精たちの魔法で強化されているのか固い甲殻を持つイナゴの体を易々と貫く弓や風魔法。フランとクランが土魔法で拳大の岩を飛ばすとメジャーリーガーでも目を見開き驚くような変化球を打ち出す。恐らく妖精が打ち出した拳大の岩をコントロールしているのだろう。


「こっちにも二匹来ました!」


「任せて!」


 クロたちの前にイナゴが飛来し羽に傷を負っているのか落下するように現れた二匹へ向かい飛び出すシャロン。ラライもクロの前で大楯を構え、ルビーも槌を構える。


「破っ!」


 素早く距離を詰めたシャロンの正拳突きがイナゴの顔面を捉えると金属同士がぶつかり合うような音が響き後ろへと戻されるイナゴ。もう一匹が飛び立とうと長い後ろ足に力が入った所で横から衝撃を受けサッカーボールのように吹き飛ぶイナゴ。


「私もまだまだ現役でイケるかしら」


 嬉しそうに微笑みながら大きな胸を揺らしたのはカリフェルであり、続々とサキュバスの戦士たちが大地に降り立つ。


「シャロ~お待たせ~」


「殿下! 我々が全線を上げますので、どうかご安心を!」


「ささ、汗をお拭きいたします!」


「素晴らしい正拳突きでした!」


 グリフォンから降り立ち十名ほどのサキュバスの戦士たちが現れその中にはシャロンの姉であるキュアーゼの姿もありキャッキャする巨乳たち。その圧倒的な戦力という名の巨乳に自身の胸を押さえるルビーとラライ。クロは目のやり場に困りながらもシールドを展開させ新たに現れたイナゴへ対応するために動き出そうとするが、


「破っ!」


「やっ!」


「ていっ!」


 と、良い所をシャロンに見せようと素早く動き出すサキュバスの戦士たち。素手や足で一撃を加え大きく弓なりに吹き飛ぶイナゴたちを見つめるクロは、手にした魔剣をそっと鞘に戻す。


「ここは任せるわね。私たちが抜けて来るイナゴをもっと前で押さえるからシャロンをお願いよ。グリフォンたちは空を飛ぶイナゴたちを各個撃破すること」


 妖艶な笑みを浮かべ指示を出すカリフェルにピーと鳴き舞い上がるグリフォンたち。シャロンは逃げるようにクロの後ろへと隠れ、嫉妬に満ちた瞳をキュアから受けるクロ。他のサキュバスたちからもそのような視線を受けつつ苦笑いを浮かべたクロは、「イナゴよりも怖いな」と呟き、シャロンは無言で何度も首を上下させる。


「ちょっと、そこのあんた! シャロンに怪我させたら許さないからね!」


 クロへ嫉妬に満ちた瞳と脅迫を向けるキュアーゼに、今度はシャロンが前に出て両手を広げて口を開く。


「クロさんは僕が守りますから! それよりも姉さんたちは戦闘をっ!」


 シャロンに庇われる何とも言えない表情をするクロ。それを見たシュアは力いっぱい歯を噛み絞めながらも「行くわよ!」とサキュバスの戦地たちに声を掛け、前線を引き上げるべく蝙蝠のような羽を動かし激戦に変わりつつある戦場へ向け飛び去る。


「クロ、シャロンちゃんをお願いね。ごめんなさいね、キュアも只々心配なだけなのよ」


 そうクロへ声を掛けると妖艶に微笑みながら羽を動かし飛び上がったカリフェルはサキュバスたちを追って飛び去る。


「ふぅ……何だかイナゴよりも怖そうなお姉さんたちだな……」


「シャロンさんはサキュバニア帝国の宝なのかもしれませんね……」


 クロとルビーの言葉を耳に入れながらその場にへたり込むシャロン。


「おい、どうした!?」


「怪我ですか!? さっきのイナゴを殴ってどこか痛めましたか!?」


 慌てて駆け寄るクロとルビーに苦笑いをするシャロンは首を横に振り口を開く。


「いえ、大丈夫です……姉と仲間たちがすみません……イナゴを前にした時よりも精神的に疲れて……キュア姉さんの殺意の籠った瞳を久しぶりに見て……すみません……」


「あの目はやばかったな……」


「オオカミ系の魔物が餌となる動物を見つけた時の目をしていました……」


「うんうん、お母さんが私を叱る時の目立ったよ……」


 ぶるりと震えあがるラライに何をすればそんな目で起こられるのかと思う三名。


「キュウ!」


 そこへ白亜がリュックから顔を出し叫び飛来するイナゴ。


「任せて下さい! パワーアップしたこの魔道槌の出番です!」


 そう叫ぶルビーは新たな槌を構えると大地に石突を突き立て狙いを定める。


「おお、何か凄そうだな!」


「うん、カッコイイ!」


 構えたルビーにクロとラライが視線を向けシャロンも期待した瞳を向ける。


「行きますよ~魔道槌、発射!」


 力ある言葉に魔道槌が反応し輝くと魔法陣が展開し、そこからテニスボールほどの鉄の含まれた石が現れ足元に落ちる。


「…………………………え?」


 呆気に取られたのはルビーであり、クロは腰のナイフを手に取り、シャロンは立ち上がろうと足に力を込め、ラライはここからまだ何かあるのかと期待した瞳を向ける。


「俺が行くぞ」


「はい……お願いします……」


 クロが声を掛け一応確認を取ると悲しげな表情で肯定するルビー。クロは走りながら魔剣であるロングナイフに魔力を通し赤く輝くと向かってきたイナゴの額に向け力いっぱい差し入れ、更に魔力量を増やすと赤かった刃は輝きを増し焦げた香りが漂いビクビクと痙攣するイナゴ。


「ふぅ……これで倒したか……」


 痙攣が収まった事を確認し絶命したイナゴから上がる煙の臭いに顔を歪めたクロは、辺りの様子を確認しつつ四つん這いで絶望するルビーの元へと戻る。


「ううう、新しい槌が発掘にしか使えないとは……試し打ちをしてくるべきでした……」


 シャロンは何と声を掛けていいか解らず困った表情で項垂れるルビーを見つめ、ラライは生成されたテニボールほどの石を手に持ち「意外と重~い」と嬉しがっていた。


「発射する風の魔石に問題があるのでしょうか? それともコンセプト自体に無理が? いっそ炎が出る方が良かった気も……」


 項垂れるルビーに、何か思いついたのかクロが声を掛ける。


「出てきた石をその槌で打って当てるとかじゃダメなのか?」


 その言葉に顔を上げるルビーはその手があったかとやる気に満ちた表情へ変わり立ち上がると、再度魔道槌を構えテニスボールほどの石を生成すると足元に落下し、素早く魔道槌を構えるとゴルフのようなスイングで見事な空振りをすると、コロコロと転がる石に何とも言えない表情をするクロとシャロン。

 ラライは目をキラキラと輝かせ「私もやってみたい!」と声を上げ、魔道槌をラライに手渡すと見様見真似でスイングすると見事な放物線を描き飛んで行く石は偶然にも空を飛ぶイナゴに当たり落下して絶命する姿にキャッキャと喜び、ルビーは口をあんぐりと開けるのだった。





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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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