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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第六章 大規模討伐と秋の足音
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懐かしい再会



「エルフェリーンさま!」


 こちらへ向かい馬を走らせる聖騎士たちが声を上げ到着すると、馬上から着地し軽い会釈をする三名。


「この方たちが援軍ですか?」


 三名の中でもリーダー的に一歩目に出て口を開くがフルフェイスの兜の影響で籠って聞こえる声は聴き取りづらくエルフェリーンが口を開く。


「よく聞こえないよ~話す時は顔を見せて欲しいなあ~」


 笑いながら話すエルフェリーンの声は確りと聞こえるらしく、三名は顔のガードを上げて顔を出す。


「これは申し訳ありません! 我らは聖王国復興騎士団の第二小隊のケルンです! 皆様方の御助力感謝したします!」


 先頭で声を上げた髭の生えたごつい顔の男はケルンといい聖王国の聖騎士であり、勇者たちと共に魔王討伐に尽力した聖騎士の一人である。その後ろに控えた二名も同じように戦った者たちであり、その一人が声を上げる。


「クロサキ! クロサキなのか! 俺だよ! ヨシムナだよ!」


 後ろに控えていた聖騎士の男がクロを見て声を上げる。一方クロはその顔に見覚えがあるのか軽く手を上げ「よお!」と声を返す。


「ああああ、クロサキ……良かった……ダンジョンで見失った時はもうダメかと思ったが……やっぱり生きていたな……クロという男の噂は耳にしていたが……良かった……良かった……」


 クロにゆっくりと近づきながらひとり口を開くヨシムラ。この男はクロが勇者召喚に巻き込まれた時に面倒を見ていた聖騎士であり、数日間ではあるが一緒に剣の修行やダンジョンに潜った仲でクロもこの男だけには心を開き行動を共にしていた。


「エルフェリーンさまに拾われてな……あの時は色々お世話になった……」


 クロも空気を読んで歩みを進めて互いに再開を喜び抱き合う。


「俺はずっと謝りたくて……ダンジョンを必死に探し回ったが……すまん! 本当に申し訳ない……生きていて良かった……良かったなぁ……」


 ボロボロと涙を流すヨシムナ。クロも薄っすらと涙を流すなか、アイリーンはもう一人の聖騎士を見つめ目を赤くしていた。その聖騎士の名はライナーといい、勇者たちと一緒に旅をして聖騎士でありながら身の回りの世話をしてくれた仲間である。アイリーンが一番お世話になった人物であり、友と呼べるひとりであった。


 ライナーさん……元気そうで良かったです。ケイルさんも元気そうですし、クロさんがお世話になった人とも会えるなんて奇跡ですね! 私は以前と姿も種族も違いますからあれですが……また、仲良くなれるでしょうか……


 そんな思いを胸に秘めながら懐かしい話をしながら歩みを進め、大きな門へと辿り着くクロたち。警備の兵士には大柄なオークが就いており厳つい顔に一瞬驚くも、膝を付きエルフェリーンを前に頭を下げる。


「御助力感謝いたします!」


「うんうん、助け合える時は助け合おうね~ほらほら、そんな所で膝を付いたら通行の邪魔になるから立った立った。感謝はイナゴ討伐が終わってからでいいからね~」


 手をひらひらさせて横を通り過ぎるエルフェリーンに深く頭を下げ続ける門番たち。クロたちもその間を進み町の中へと足を踏み入れると多くの聖騎士やオークたちから瞳を向けられ軽くではあるが頭を下げられる。援軍であるという話が既に広まっているのだろう。


「シャロ! シャロ! シャ~~~~~ロ~~~~~~」


 そんな中、シャロンの名前を愛称で叫びながら舞い降りた一人のサキュバスはシャロンに抱き着き、その豊満な胸で頭を挟み込みジタバタと暴れるシャロン。


「もうっ! 私に勝手で出ていくとか酷過ぎる! 可愛い弟に何かあったらどうするのよっ!」


 強く抱きしめるサキュバスに腕をバタバタするシャロン。恐らくは巨大な胸で息ができないのだろう。


「おいおい、シャロンが窒息するぞ! 早く放せ!」


 クロが慌てて声を掛けると眉を吊り上げながらも拘束を解くサキュバス。


「し、死ぬかと思った……もう、キュア姉さま……は、どうしていつも抱き着くのですか……はぁ……」


 地面に座り息を整えながら話すシャロンに対し、キュア姉さまと呼ばれたサキュバスは胸の下で腕を組みながら口を開く。


「そんなのシャロが可愛いからよ! 戦闘服を着たシャロも凄く可愛いから仕方がないじゃない! それに何日も会えなかったからお姉ちゃんとしての気持ちが暴走したのよ!」


 一方的に自身の気持ちを口にするキュアに大きなため息を吐くシャロン。クロも危険人物が現れたという認識なのか数歩ほど下がると、もう一人のサキュバスがシャロンの前に降り立つ。


「やっと来たわね! あら、シャロンはどうしたのかしら?」


 地面に体を崩して息を整える姿に違和感を持ったのか、降り立ったシャロンは訝しげな視線をキュアと呼ばれたサキュバスに向けると、顔色を青く変える。


「私の師匠の前では礼儀正しくと言ったわよね? あれほど口を酸っぱくして言ったわよね? 私が恥をかくと言ったわよね?」


 ズンズンと一歩ごと足を進めて問い詰めるカリフェルに青い顔をしながら後退して一定の距離を保つが、その光景に笑い声を上げるエルフェリーン。


「あはははは、カリフェルが母親のように怒っているよ~こんな姿は初めて見るけど嬉しいものだね~カリフェルが成長した姿だよ~」


 ケラケラと笑う姿に毒気が抜かれたのか、前のめりになっていた姿勢を戻すカリフェルは何とも言えない表情へ変わり、キュアと呼ばれたサキュバスは蝙蝠のような翼を広げ空へと逃げ出す。


「もうっ! 師匠が茶々を入れるから逃げられたじゃないですか! あの子はキュアーゼ。私の二番目の娘ですわ……」


「君に似て可愛らしい容姿だったぜ~クロが胸に夢中になっていたからね~」


 笑いながら口にした言葉に今度はクロが青い顔をするとリュックから顔を抱いた白亜がキュウキュウと鳴き声を上げ、ビスチェの眉毛吊り上がり、ルビーが自身の胸を鎧越しに確認して絶望し、アイリーンは同じく胸を触る聖騎士のライナーを見つめ肩を揺らす。


「何だか偉そうな人が来た!」


 やや混沌としてきた一同の前にはドレスに身を包んだオーク特有の垂れた耳を持つ女性に気が付いたラライが声を上げクロの横へと走り服を引くと、足を振り被ったビスチェはラライも巻き込む可能性を感じゆっくりと足を戻すが眉は吊り上げたままである。


「エルフェリーン様、こんなにも多くの戦士たちを……感謝致します……」


 深く頭を下げるドレスの女性。その後ろには数名のオークと聖騎士を引き連れており同時に頭を下げ感謝を示すのであった。





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